コストコ・ホールセール Costco Wholesale / COST
NASDAQ US-GAAP 8月期決算(52/53週制)
会員制ホールセールクラブ データ基準日 2026/7/24
商品はほぼ原価スレスレで売る「会員制の巨大倉庫店」。世界914店舗・有料会員8,100万人。FY2025の総収益2,752億ドル(約44.9兆円)に対し会員費収入はわずか53億ドル(1.9%)だが、営業利益の51.3%はこの会員費が生み出している。
💡 はじめての方へ: 映画館は「チケット代を安くして、中のポップコーンで儲ける」と言われますが、コストコはその真逆 です。「年会費(入場料)でしっかり儲けて、中の商品(ポップコーン)はほぼ原価で売る」——だから商品はどこよりも安く、それでも会社はきちんと黒字。安売りと儲けが矛盾しない、小売業では珍しい仕組みです。
① 企業カルテ ② ビジネスモデル図解 ③ 成長の歩み ④ 会員制の経済学 ⑤ 地域別展開 ⑥ 財務3表 ⑦ 収益性 ⑧ 会計基準ビュー ⑨ 同業比較 ⑩ 課題と改善点 ⑪ 投資判断
01 企業カルテ
FY2025通期実績(2025年8月31日期・2025/10/8提出10-K確定値)と直近四半期(FY2026 Q3・36週YTD)・市場評価。
総収益 (FY2025)
2,752億ドル
+8.2%・約44.9兆円(163.27円換算)
会員費収入
53億ドル
+10.3%・総収益のわずか1.9%
営業利益
104億ドル
+11.8%(利益率 3.77%)
会員費が営業利益に占める割合
51.3%
商品事業だけなら営業利益率は1.9%
会員更新率 (世界)
89.8%
北米92.3%・有料会員8,100万人
倉庫店舗数
914店
純増24店(米国629・加110・他175)
時価総額 ・PER
4,147億㌦
PER47.0倍(実績TTM)・株価$935.03
◎
成長性
FY26 Q3は既存店+9.8%・増収+11.6%と加速。5期連続の増収増益
○
収益性
総合営業利益率3.77%は薄いが会員費込みROIC22%超(筆者試算)。商品だけなら1.9%と極薄
○
財務健全性
自己資本比率37.8%・有利子負債少。ただし流動比率1.03と在庫回転前提のタイトな運営
△
株主還元
配当利回り0.63%と低め。稼いだ現金の大半(FCF78億ドルの大部分)を出店投資へ再投資
△
バリュエーション
PER47倍(TTM)は同業BJ's(21倍)・ウォルマート(39倍)より高く、成長鈍化時の調整余地が大きい
※5軸評価は本レポート筆者の見解であり、投資勧誘ではありません。円換算は1ドル=163.27円(2026/7/25、Google Finance)。
💡 読み方: コストコの面白さは「営業利益率3.77%」という数字だけを見ると地味なところ。でも中身を割ると、商品を売るだけの事業はほぼ儲かっておらず(1.9%)、儲けの半分超は「会員が毎年払う年会費」から来ています。安さで会員を集め、会員費で儲ける ——この構造を知らないと、コストコの本当の強さは見えません。
02 ビジネスモデル図解
モノ(緑 )・カネ(黄 )・情報(青 )の流れで見る、コストコの稼ぎ方。
カネの流れ
モノ・サービスの流れ
情報の流れ
起点 「これ以上安くはできない」原価スレスレの倉庫型卸売
定説 小売業は商品を右から左に売り、その差額(粗利)で儲ける
逆説 商品はほぼ原価で売って赤字覚悟の集客装置にする。儲けの半分超(51.3%)は、会員が買い物する前に払う『年会費』という購読料(サブスクリプション)
会員は年に一度、買い物をする前 に$65〜$130を払う。この時点でコストコの取り分はほぼ確定し、あとは会員が来店するたびに商品原価スレスレの値付け(粗利率11.1%)で満足度を高め、来年また更新してもらう——「安さ」自体が来年の会員費を生む広告塔 になっている。仕入は自社ブランド「Kirkland Signature」を軸に大量一括購入で調達コストを下げ、店舗数を絞って1店舗あたりの売上を最大化する(倉庫型・限定品目・パレット陳列で人件費も圧縮)。
💡 やさしく: コストコの利益の半分超は、実は「レジを通る前」に決まっています。会員証を作った瞬間に$65(約1万円)が確定収益になり、そのあと店内で何を買われても、コストコはほとんど儲けていません(粗利率はスーパー平均よりかなり低い)。「年会費のサブスクリプション」+「商品はほぼ原価の集客ツール」 という2階建て構造——Amazonプライムが「送料無料」で会員を集めるのと同じ発想を、コストコは実店舗で30年以上前から実践しています。
03 成長の歩み — 5期連続の増収増益
FY2021(コロナ特需後)からFY2025まで、総収益は1,959億ドル→2,752億ドルへ4割増。営業利益・純利益はそれを上回るペースで伸びている。
総収益の推移(FY2021〜FY2025) 単位:億ドル ■濃い棒=直近期
会員費収入の推移 単位:億ドル。総収益の伸び(+41%)より会員費の伸び(+37%)がやや緩やか——2024年9月の値上げ前は据え置きだったため
FY2026は Q3までの36週YTDで純売上高2,034億ドル(+9.6%)・純利益62億ドル(+13.5%)と、FY2025を上回るペースで推移中(Costco IR発表・2026年5月10日期)。
💡 やさしく: コストコの成長は「一気に儲かる」タイプではなく、会員証を配るほど雪だるま式に大きくなる タイプです。新規会員が増える→来店が増える→仕入量が増えて値下げ余地が生まれる→さらに会員満足度が上がる、という好循環が5年間途切れず回り続けています。
04 今期の焦点 — 会員制の経済学:営業利益の半分は「年会費」
開示済みの数字(売上・原価・SG&A・会員費)を積み上げると、コストコの営業利益がどこから来ているかが正確に分解できる。
営業利益の分解(FY2025・億ドル) 商品事業だけの営業利益と、会員費収入を積み上げると開示済みの営業利益104億ドルに一致する
売上高(商品)2,699億ドル−商品原価2,399億ドル=商品粗利300億ドル(粗利率11.1%)。ここから販管費250億ドルを引くと商品事業だけの営業利益はわずか50億ドル(対売上1.9%) 。ここに会員費53億ドルを足して、初めて開示済みの営業利益104億ドルになる——つまり営業利益の51.3%は会員費が生んでいる (10-K開示数値からの筆者算出。Net sales−Merchandise costs−SG&A+Membership feesが総Operating incomeに一致することを検算済み)。
会員更新率の推移 単位:%。「一度会員になった人がどれだけ翌年も残るか」
FY2025末は北米92.3%・世界89.8%と、FY2024末(92.9%/90.5%)からわずかに低下。会社側は「オンライン経由の新規入会が増え、その層はやや更新率が低いため」と説明しており、既存会員の離反ではなく入会チャネルの構成変化 が主因。裏を返せば世界の解約率は約10.2%——サブスクとしてはNetflix並みの粘着力を保っている。
有料会員数の推移 単位:百万人
FY2025末で有料会員8,100万人(世帯カード込みの総カード枚数は1億4,520万枚)。うちExecutive会員(年会費+$65で2%キャッシュバック)は3,870万人と会員の47.8%を占め、世界売上の73.6%を稼ぎ出す最重要顧客層。2024年9月には7年ぶりにGold Star会員費を$60→$65(+8.3%)、Executive追加分を$120→$130に値上げし、約5,200万件の会員が対象となった。
💡 やさしく: 更新率89.8%というのは「Netflixを1年契約したら、90%の人が来年も解約せず契約を続ける」のと同じ状態です。しかもコストコの場合、会員は先に年会費を払ってから 買い物をするので、会社は1年分の「基本料金」を先取りできる——これがスーパーとは違う、コストコだけの財務的な強さです。
05 地域別展開 — 米国が7割、伸びしろはインターナショナル
セグメント は米国・カナダ・その他インターナショナル(日本含む14か国)の3区分。店舗数914のうち285店(31%)が米国外にある。
地域別収益(FY2025) 総収益2,752億ドルの内訳(10-K・セグメント合計と一致検証済み)
地域別営業利益率(FY2025) 意外にもカナダが最も高収益
カナダの営業利益率5.01%は米国3.44%を上回る。店舗当たり商圏人口が大きく競合が少ないためとみられる。その他インターナショナル(日本・韓国・英国等14か国)は4.33%で、店舗数175・売上383億ドルとまだ小さいが既存店売上+5%(為替・ガソリン調整後+8%)と最も勢いがある。
読みどころ
米国629店(68.8%): 売上2,000億ドル・既存店+6%。成熟市場だが依然として2桁近い伸び
カナダ110店: 店舗当たり効率が最も高く「稼ぎ頭」
その他インターナショナル175店: 日本37店・韓国20店・英国29店等。FY2025は純増7店と最も出店ペースが速い
FY2026は米国外を含め最大35店(うち5店は移転)の新規出店を計画
💡 やさしく: 米国は「よく手入れされた広い畑」、インターナショナルは「開拓中の新しい畑」。畑(店舗)を増やせば増やすほど、会員費という「毎年の収穫」も自動的に積み上がっていくのがコストコの拡大戦略です。
06 財務3表ビジュアル
「商品はほぼ原価」の裏側にある、堅実だが極端ではないバランスシート。
PL滝グラフ — 総収益2,752億ドルはどこへ消えるか(FY2025) 単位:億ドル
💡 やさしく: 2,752億ドル稼いで、商品原価と販管費でほぼ全部使い切り、最後に残る営業利益は104億ドル(3.8%)。日本円で約1.7兆円——セブン&アイの営業利益(4,230億円)の約4倍です。それでも「利益率」だけ見るとスーパー並みに薄いのがコストコの特徴。
BS比例図 — 総資産771億ドルの中身(FY2025末) 箱の高さ=金額。自己資本比率 37.8%
現金・有価証券は合計153億ドルと総資産の約2割。有利子負債は58億ドルと小さく、財務は保守的。負債側で目立つのは「Deferred membership fees(未経過の会員費)」29億ドルで、これはすでに受け取った現金だが、まだ収益化していない会員費 という、コストコならではの負債項目。
キャッシュフロー(FY2025) 単位:億ドル。営業CF 133億ドル
設備投資55億ドルを差し引いたFCF は78億ドル。株主還元(配当22億ドル+自社株買い9億ドル=計31億ドル)はFCFの4割程度にとどまり、残りの多くを新規出店・物流投資に再投資 している。Appleのようにフリーキャッシュフローのほぼ全額を株主に返す会社とは対照的な資本政策。
07 収益性 — 「薄利多売」の中身をデュポン分解する
ROE は筆者算式で27.7%(stockanalysis.com掲載値30.69%は平均資本ベースとみられ算式が異なる)。デュポン分解 で正体を見る。
ROE(FY2025・期末BSベース筆者算式)
27.7%
=
2.94%
売上高純利益率
薄利。セブン&アイ(3382・2.8%)とほぼ同水準
× 3.57回
総資産回転率
在庫を高速回転させる倉庫型モデルの真骨頂
× 2.64倍
財務レバレッジ
有利子負債は小さく、レバレッジは控えめ
総資産回転率3.57回はセブン&アイ(3382・1.0回)の3倍以上——「利益率は薄いが、それを何倍もの速さで回転させて稼ぐ」という、Apple(利益率26.9%×レバレッジ5.54倍で稼ぐ高付加価値モデル)とは対極の資本政策。コストコのROE27.7%はAppleの171%より遥かに低いが、その分「無理な資本圧縮」に頼らない持続可能な数字とも言える。
ROIC vs WACC — 資本コストを上回っているか(筆者試算)単位:%。概算値
ROIC=NOPAT(営業利益104億ドル×(1−実効税率25.1%)≒78億ドル)÷投下資本(株主資本292億ドル+有利子負債58億ドル=350億ドル、期末BSベース)≒22.2% 。推定WACC(7〜8%)の3倍前後で、資本コストを大きく上回る価値創造を続けている。stockanalysis.com掲載のROIC36.41%は現金控除後の投下資本ベースとみられ算式が異なるため、本ページでは算式を明記した筆者試算値を主に用いる。
💡 やさしく: コストコの商売は「1回転あたりの儲けは薄いが、年に3.57回も棚をひっくり返す」回転寿司のような商売です。1皿の利益が小さくても、皿数(回転率)で稼ぐ——利益率の低さだけを見て「儲かっていない」と判断すると、コストコの実力を見誤ります。
08 会計基準ビュー — US-GAAP / JGAAP / IFRS
コストコはUS-GAAP 採用。会員費という「コストコ固有の収益」の会計処理が最大の論点。
どの「利益」で見るかで印象が変わる(FY2025) 単位:億ドル
US-GAAP(採用中) JGAAPならこう見える IFRSならこう見える
会員費は受領時に一括計上せず、1年間の会員期間にわたって按分 して収益認識する(ASC606)。「経常利益」区分はなく、営業利益の下は金融損益等のみとシンプルな構造。
詳しく見る:会計基準の技術的差異
会員費は「Deferred membership fees(前受会員費)」29億ドルとしてBS負債側に計上され、月割りで収益に振り替えられる。入金時に売上計上する日本の年会費ビジネスとは異なる
リースはASC842に準拠し、オペレーティングリースも使用権資産27億ドル・リース負債としてオンバランス化済み
自社株買いは取得原価法で資本を直接減額。研究開発費もほぼ発生しない業態のため、利益の質を歪める会計論点自体が少ない
日本の小売業と比べると、まず「経常利益」区分が存在しない点、そして年会費を売上高とは別建て(Total revenueの内訳)で開示する点が異色。
詳しく見る:会計基準の技術的差異
JGAAPでは受取利息配当金や為替差損益などの営業外損益を通じて「経常利益」を出す段階があるが、USGAAPのコストコにはこの区分がなく、営業利益からほぼ直接、税引前利益に進む
のれん:コストコはM&Aに消極的でのれんはほぼ計上がなく、JGAAP企業(セブン&アイ等)の「のれん20年以内規則償却」に相当する論点自体が存在しない
リース:JGAAP(旧基準)はオペレーティングリースを注記のみとする実務も残るが、USGAAP(ASC842)は資産化を義務付けており、この差は縮小傾向にある
IFRSとの差異は軽微。会員費の収益認識のタイミングとリースの取り扱いは、すでにほぼ同一の考え方に収斂している。
詳しく見る:会計基準の技術的差異
収益認識(IFRS15)はASC606とほぼ同じ考え方で、会員費の期間按分処理に実質的な差はない
リースもIFRS16でUSGAAP(ASC842)とほぼ同一の資産化処理に統一済みで、この論点でも差異はほぼ解消している
自己株式取得の会計処理も大きな差はなく、コストコのようなシンプルな小売業では、AAPLやセブン&アイのケースほど基準間の差異が大きく出ない——それ自体が学びになる会社
💡 やさしく: 「年会費をもらった瞬間に全部利益にする」か「1年かけて少しずつ利益にする」かで、決算書の見え方は変わります。コストコは後者(USGAAP)を選んでおり、これは「まだサービスを提供していない分のお金は、まだ自分のものではない」という保守的な考え方です。
09 同業比較 — 会員費依存度で見る「サブスク小売」の濃淡
総合小売のウォルマート(Sam's Club含む)、直接競合のBJ'sホールセールクラブ、フランチャイズ型のセブン&アイ(3382・本サイト掲載済み)と比較(2026/7時点)。
バリュエーション比較 PER・PBR・ROE(実績)
コストコのPER47.03倍は4社中で突出して高い。ウォルマート38.54倍、BJ's 21.37倍、セブン&アイ16.38倍。PBRもコストコ12.38倍・ウォルマート9.53倍・BJ's 5.45倍・セブン&アイ1.3倍と、市場は「会員制モデルの安定性」に明確なプレミアムを払っている。
会員費が営業利益に占める割合 「会員制」を名乗る事業ほど、この比率が本業の実態を映す
BJ'sは会員費499.77百万ドルが営業利益816.6百万ドルの61.2% を占め、コストコ(51.3%)以上に会員費依存度が高い。ウォルマートのSam's Club事業も、開示区分「Membership and other income」(会員費+賃貸収入等の合算値、Sam's Club単体の会員費のみの金額はWalmart 10-Kで開示されていないため代替指標として使用)が営業利益2,442百万ドルを上回る2,525百万ドルにのぼり、商品事業だけならセグメント営業損益はほぼゼロかマイナス という計算になる。一方セブン&アイはフランチャイズ・ロイヤリティ型で会員費という収益区分自体が存在せず、この指標は算出不可(ビジネスモデルの構造そのものが異なるため対象外)。
💡 やさしく: 同じ「倉庫型クラブ」でもBJ'sやSam's Clubは、コストコよりさらに会員費頼みの経営です。ある意味コストコは、会員費依存の業態の中では商品販売だけでもわずかに黒字(1.9%)を出せている、一番バランスの取れた優等生 と言えます。
10 戦略・課題と改善ポイント
会員制モデルは盤石。焦点は「高いPERに見合う成長を、店舗網の薄い海外でどこまで続けられるか」。
強み Strengths
会員更新率89.8%(世界)・92.3%(北米)という高いロイヤルティ
Kirkland Signature(自社ブランド)を軸にした購買力とオペレーション効率
自己資本比率37.8%・有利子負債58億ドルと財務は保守的で安定
Executive会員(会員の47.8%)が売上の73.6%を稼ぐ、質の高い顧客基盤
弱み Weaknesses
総合営業利益率3.77%・商品事業だけなら1.9%と、利益の絶対的な薄さ
店舗数914店はウォルマート(10,955店)に比べ小さくスケールに上限
売上の72.7%(2,000億ドル/2,752億ドル)が米国に集中する地理的偏り
e-commerce比率は総売上の約7%と低く、オンライン対応は途上
機会 Opportunities
インターナショナル事業(175店・売上383億ドル)はまだ伸び代が大きい
2024年の会員費値上げ($60→$65)の増収効果が今後複数年継続
Executive会員比率のさらなる上昇(47.8%→更なる浸透余地)
デジタル対応強化(既存店ベースのe-commerce comp+16〜21%と高成長)
脅威 Threats
PER47倍の高バリュエーションは、成長鈍化時の株価調整余地が大きい
関税・地政学リスク(輸入商品比率の高さ)
Amazon・Sam's Club等とのオンライン/価格競争の激化
人件費上昇圧力(コストコは業界高水準の賃金で先行投資中、利益率をさらに圧迫しうる)
改善ポイント(優先度つき)
最優先 インターナショナル出店の加速 店舗の31%しか米国外にないが、既存店伸び率は米国を上回る(為替・ガソリン調整後+8%)。FY2026計画35店のうち海外比率をどこまで高められるかが中期成長を左右する。
最優先 デジタル/e-commerce強化 digitally-enabled comp+21.5%と伸びは速いが、絶対水準(総売上の約7%)はまだ小さい。実店舗の強みを損なわずにオンラインを伸ばせるかが課題。
中期 更新率の下げ止まり確認 92.9%→92.3%(北米)とわずかに低下。オンライン入会層の定着施策が今後の焦点。
中期 薄利構造への耐性強化 商品事業の利益率1.9%は景気後退・関税ショックへの耐性が薄いことを意味する。会員費という安定収益がバッファーになっているかを継続的に検証すべき。
11 投資メリット・デメリット
「会員費という安定した半分の利益」に、市場は高いPERで応えている。論点は「その安定にいくら払うか」に尽きる。
▲ 強気材料(メリット)
FY26 Q3は既存店+9.8%・増収+11.6%と成長が加速中(36週YTDの純売上高でも+9.6%)
会員更新率89.8%・Executive会員47.8%という高いロイヤルティが収益の土台を支える
営業利益の51.3%を占める会員費収入は景気変動に強く、業績の下振れリスクを緩和する
2026年4月に四半期配当を13%増配。財務は保守的で減配リスクは小さい
インターナショナル事業(店舗数175)の伸び代がまだ大きい
▼ 弱気材料(デメリット)
PER47.03倍(TTM)は同業(BJ's 21倍・ウォルマート39倍)比でも突出して高い
商品事業だけの営業利益率は1.9%と極薄で、コスト上昇(関税・人件費)への耐性が弱い
配当利回り0.63%と株主還元は控えめ。稼いだ現金の多くを再投資に回す方針
店舗網914店はウォルマートの1/10以下。出店ペースが鈍ればPER47倍の正当化が難しくなる
米国売上比率72.7%と地理的集中度が高く、米国消費減速の影響を受けやすい
3つのシナリオ(筆者試算)
強気シナリオ 既存店成長が高止まりしEPS $21.5×PER50倍=$1,075(約17.6万円)
中立シナリオ 現状トレンド継続でEPS $20.5×PER45倍=$923(約15.1万円、現値$935とほぼ同水準)
弱気シナリオ 消費減速・PER正常化でEPS $19.0×PER35倍=$665(約10.9万円)
💡 はじめての方への総括: チェックポイントは3つ。①会員更新率 (89.8%が下げ止まるか、それとも回復するか)、②会員費が営業利益に占める割合 (51.3%からさらに上がれば「サブスク企業」としての質が上がる)、③インターナショナル店舗の増加ペース (米国頼みからの脱却度合い)。「安売りの会社」ではなく「年会費のサブスク会社」として見ると、PER47倍という高い株価の意味が理解しやすくなります。