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🕒 最終更新: 2026-09-13 (直近更新)

ユナイテッドヘルス・グループ UnitedHealth Group Incorporated・UNH

NYSEUS-GAAP12月決算 医療保険×薬局×診療所26年4〜6月期決算まで反映

保険(UnitedHealthcare)と医療サービス(Optum=薬局・診療所・データ)を1社で垂直統合する米国最大級の医療関連企業。2025年12月期は医療費トレンドの急悪化で第4四半期の純利益がほぼゼロ(1,000万ドル・EPS0.01ドル)まで沈んだ。2026年は価格改定と費用規律で回復基調にあり、会社は7月に通期ガイダンスを引き上げた。時価総額3,403億ドル。

💡 はじめての方へ:UnitedHealth Groupは「保険を売る会社」と思われがちですが、実態は保険(UnitedHealthcare)と、薬局給付管理・診療所運営(Optum)を同じグループで持つ会社です。保険料として集めたお金の多くが、グループ内の薬局や診療所での支払いとして還流する仕組み——保険会社が病院と薬局まで持っている状態です。2025年はこの仕組みが試練を迎え、高齢者の受診が想定以上に増えたことで医療費が急増し、利益が急減しました。

2026年度第2四半期(4〜6月期)決算=2026年7月16日発表を反映済み(→④ 医療費急騰と回復)。通期ベースの財務3表・収益性・会計基準ビューはFY2025通期(2025年12月期)の確定実績、株価・同業比較は2026年9月11日終値にもとづく。

01企業カルテ

FY2025通期実績(2025年12月期・2026年2月発表10-K)と直近の市場評価(2026年9月11日終値)。

総収益(FY2025)
4,475.7億ドル
保険料35.2兆円級・製品/サービス収益を含む
営業利益
189.6億ドル
営業利益率4.24%・前期比▲41.3%
純利益
120.6億ドル
純利益率2.69%・EPS $13.23
医療費用率(MCR)
89.1%
FY2024の85.5%から3.6pt悪化
自己資本比率
32.3%
総資産3,095.8億ドル・純資産1,000.9億ドル
時価総額
3,403億ドル
株価$379.09(26/9/11終値)
PER(実績TTM)
24.36
予想PER(会社ガイダンス基準)19.2倍・PBR3.26倍・配当利回り2.45%
ROIC(筆者試算)
11.0%
推定WACC6.8%を4.2pt上回る
成長性
FY2025総収益は+11.8%と伸びたが、これは保険料改定によるもの。2026年度上期は総収益+1.2%と足元は鈍化
×
収益性
医療費用率89.1%への悪化で営業利益率が9.7%(FY2023)→8.1%(FY2024)→4.24%(FY2025)へ急落。2026年度上期は7.59%へ回復途上
財務健全性
自己資本比率32.3%は保険会社として標準的。有利子負債783.9億ドルに対しFCFは160.8億ドルで返済余力はある
株主還元
FY2025の自社株買いは上期のみで実質下期ゼロ。配当は79.2億ドルを維持し減配はしていない
バリュエーション
PER24.36倍(実績TTM)は同業のCigna(11.61倍)より高いが、危機前の水準(2023年ROE27.0%時)と比べれば株価は52週レンジの中位圏

※5軸評価は本レポート筆者の見解であり、投資勧誘ではありません。時価総額・PER・PBRは2026年9月11日時点の市場データ(stockanalysis.com・Yahoo Finance)。

💡 読み方:営業利益率4.24%という数字だけを見ると「儲かっていない会社」に見えますが、これは2025年に限った急落です。2023年は営業利益率8.7%・ROE27.0%と、保険業として悪くない水準でした。問題は医療費用率(MCR)が83.2%→89.1%へ急上昇したこと——保険料として受け取った金額のうち、実際の医療費支払いに消える割合が増えたのです。2026年に入り、この比率は改善に向かっています。

02ビジネスモデル図解

モノ()・カネ()・情報()の流れで見る、UnitedHealth Groupの稼ぎ方。矢印にカーソルを合わせると実額が出ます。

カネの流れ モノ・サービスの流れ 情報の流れ
起点保険(UnitedHealthcare)と医療提供・PBM・データ(Optum=OptumHealth/OptumRx/OptumInsight)を同一グループで運営する垂直統合モデル。リスクベース商品からの収益が連結売上のおよそ8割を占める(10-K記載)
定説医療保険会社は、加入者から保険料を集め、医療費を立て替えて支払う「保険」を売る会社である
逆説UnitedHealth Groupは保険を売るだけでなく、保険金の使い道(薬局・診療所)そのものも自社で運営している。OptumRxが約64,000の提携薬局網を通じて処方薬を給付管理し2025年は調整後処方箋1,659百万件(16.59億件)を扱う一方、OptumHealthは95百万人(約9,500万人)の患者に直接医療サービスを提供する。つまり保険料として集めたお金の相当部分が、グループ内の薬局・診療所での支払いとして還流する構造——保険引受と医療提供の両方から利益を得られる反面、医療費が想定以上に増えると両部門の損失が同時に膨らむ

収益の中心は保険料3,522.3億ドル(総収益の78.7%・雇用主向け29.7百万人/メディケア・アドバンテージ8.4百万人/メディケイド7.4百万人などから)。ここに製品収益533.8億ドル(主にOptumRxの薬剤販売)、サービス収益380.4億ドル(OptumInsightのデータ・コンサルティング等)、投資その他収益39.2億ドルが加わり総収益4,475.7億ドルとなる。従業員数は390,000人・39万人(うち臨床専門職員165,000人・16.5万人)——医療従事者を自社で抱えていること自体がOptum Healthの資産でもあり、費用でもある

💡 やさしく:普通の保険会社は、集めた保険料をお医者さんや薬局に「外部への支払い」として渡すだけです。UnitedHealth Groupは、その渡す先(薬局・診療所)を自分のグループ内に持っています。良いときは薬局・診療所からも利益が出て一石二鳥ですが、2025年のように医療費が想定以上に増えると、保険部門の支払いが増えるのと同時に、診療所部門(OptumHealth)も採算が悪化する——同じ原因(医療費トレンドの悪化)が二重に効いてしまう構造的な弱点が、この年に表面化しました。

03成長の歩み — 増収は続くも、医療費用率の悪化で利益だけが急減

総収益は2023年から2025年まで一貫して増加した一方、医療費用率(MCR)の悪化により営業利益・純利益は2025年に急落した。「増収減益」の典型例。

総収益の推移(FY2023〜FY2025)

単位:億ドル ■濃い棒=直近期。12月決算

医療費用率(MCR)の推移

医療費用÷保険料収入。低いほど保険引受の採算が良い

FY2023の83.2%からFY2025の89.1%へ、3.6ポイントの悪化。10-Kは要因として「Medicare Advantage funding reductions(メディケア・アドバンテージの公的補助削減)」「elevated medical cost trend(想定を上回る受診増)」「member profile of newly added patients(新規加入者の構成変化)」を明記している。

純利益の推移

単位:億ドル

FY2023の223.8億ドルからFY2025の120.6億ドルへ、2年で46%減少。同期間に総収益はむしろ20.4%増えており、「増収減益」の教科書的な形になっている。

04医療費急騰と回復 — 第4四半期は純利益わずか1,000万ドルまで沈んだ

2025年10〜12月期(第4四半期)の親会社株主帰属純利益はわずか1,000万ドル・EPS $0.01。約9億株の会社が四半期でほぼゼロ利益まで落ち込んだ理由と、2026年度に入っての回復を見る。

第4四半期2025 純利益
10百万ドル
EPS $0.01(修正後EPSは$2.11)
第2四半期2026 純利益
54.84億ドル
EPS $6.04・4四半期連続で回復
第2四半期2026 医療費用率
86.7%
前年同期89.4%から2.7pt改善
OptumHealth FY2025 営業損益
-278百万ドル
FY2024は黒字77.7億ドルから赤字転落

四半期純利益の推移 — Q4 2025でほぼゼロまで沈み、その後回復

単位:億ドル(第4四半期2025は10百万ドル=0.1億ドル)。■濃い棒=直近

2025年4〜6月期34.06億ドル→7〜9月期23.48億ドル→10〜12月期わずか0.1億ドル(1,000万ドル)→2026年1〜3月期62.80億ドル→4〜6月期54.84億ドルと、V字での落ち込みと回復が見える。第4四半期は修正後(非GAAP)EPSでも$2.11にとどまり、通期の稼ぎの大半を上期で稼いだ後、下期に医療費が想定を超えて膨らんだ構図。

💡 やさしく:保険会社の利益は「集めた保険料」から「実際に払った医療費」を引いた残りです。2025年後半、特に第4四半期は、高齢者を中心に病院にかかる人が会社の想定より多く、医療費の支払いが保険料の伸びを上回ってしまいました。1年分の利益のほとんどが、たった3か月でほぼ消えた形です。

医療費用率(MCR)の前年対比

単位:%。低いほど保険引受の採算が良い

2025年4〜6月期89.4%→2026年4〜6月期86.7%へ2.7ポイント改善。会社は2026年度第2四半期決算で「cost and pricing discipline(費用と価格設定の規律)」による改善と説明し、2026年7月16日に通期の修正後EPSガイダンスを$19.50〜$20.00へ引き上げた。

事業セグメント別 営業損益の推移(FY2023〜FY2025)

単位:億ドル。OptumHealthがFY2025に赤字転落

UnitedHealthcare(保険引受)はFY2023の164.2億ドルからFY2025の94.2億ドルへ42.6%減少。OptumHealth(診療所運営等)はFY2024の黒字77.7億ドルからFY2025は赤字2.78億ドルへ転落——10-Kは「価値ベースケア契約に関する将来損失引当金の計上」等を理由に挙げている。一方でOptumRx(薬局給付管理)は51.2億ドル→58.4億ドル→71.9億ドルと一貫して増益しており、同じグループ内でも保険引受・医療提供・PBMで明暗が分かれた

05財務3表ビジュアル

医療費用が利益を圧迫したPL、保険会社らしい厚めの負債構成のBS、それでも配当を維持したCF——2025年の財務的な特徴が3枚に表れる。

PL滝グラフ — 総収益4,475.7億ドルはどこへ消えるか(FY2025)

単位:億ドル
💡 やさしく:4,475.7億ドルの収益のうち、実に3,140.0億ドル(70.2%)が医療費の支払いに消えます。ここに事業費用596.0億ドル・製品原価506.6億ドル・償却43.6億ドルが加わり、残った営業利益はわずか189.6億ドル(利益率4.24%)。保険会社の利益は「集めた保険料」と「払った医療費」の差というごくわずかな部分から生まれるため、医療費が少し増えるだけで利益は大きく動きます。

BS比例図 — 総資産3,095.8億ドルの中身(FY2025末)

箱の高さ=金額。自己資本比率32.3%

総資産の中で最大の項目は現金・短期投資281.2億ドルと長期投資542.5億ドルを合わせた投資資産823.7億ドル。有利子負債は783.9億ドル(短期借入・1年内返済分60.7億ドル+長期債務723.2億ドル)で、自己資本比率32.3%は保険引受リスクを抱える業態として標準的な水準。

キャッシュフロー(FY2025)

単位:億ドル。営業CF197.0億ドル

営業CF 197.0億ドルに対し設備投資はわずか36.2億ドルでFCFは160.8億ドル。株主還元は自社株買い55.5億ドル+配当79.2億ドル=134.6億ドルで純利益120.6億ドルの111.7%。ただし自社株買いはFY2025上期の55.5億ドルで打ち止めとなり、下期は実質ゼロ——医療費用率の急悪化を受け、下期に株主還元を一時停止したことがCFの内訳から読み取れる。

06収益性 — ROE12.9%をデュポン分解する

利益率の急低下がROEを押し下げた一年。オイシックス・トヨタのような薄利高回転・厚利低回転とは異なる「保険業の回転率の遅さ」が土台にある。

ROE(FY2025・期中平均ベース・筆者算出)
12.9%
2.69%
売上高純利益率
医療費用率悪化で前々期8%台から急落
× 1.47回
総資産回転率
保険引受資産が重く回転は遅い
× 3.25倍
財務レバレッジ
保険業として標準的な水準

本サイト掲載企業と並べると構造の違いがはっきりする。Visa(ROE52.1%=純利益率50.1%×0.41回×2.52倍)は圧倒的な利益率だけでROEを作る「利益率型」、オイシックスは薄利高回転型。UnitedHealth Groupは保険業らしく総資産回転率が1.47回と低く、レバレッジ3.25倍で補う構造だが、2025年はその土台となる純利益率自体が2.69%まで沈み、ROEを押し下げた。会社発表のROE12.8%(純資産合計ベースの平均残高使用と推定)と、筆者算出12.9%(親会社株主資本ベース)はほぼ一致する。

ROIC vs WACC — 資本コストを上回っているか(筆者試算)

単位:%。FY2025末時点

ROIC=NOPAT(営業利益189.64億ドル×(1-実効税率12.86%)=165.25億ドル)÷投下資本(純資産合計1,000.90億ドル+有利子負債783.89億ドル−現金及び短期投資281.21億ドル=1,503.58億ドル)=11.0%。推定WACC約6.8%(株主資本コスト7.4%=無リスク金利4.3%+β0.62×リスクプレミアム5.0%、負債コスト税引後4.45%を時価ベースの資本構成で加重)を4.2ポイント上回る。Visa(ROIC46.2%)のような突出した資本効率ではないが、資本コストは上回っている状態。

💡 やさしく:ROIC11.0%は「商売に使うお金1に対して毎年0.11稼ぐ」ということ。決済ネットワークのVisaのような桁違いの効率ではありませんが、保険・医療という装置産業的な業態としては資本コストをきちんと上回っています。ただし2023年のROIC(当時のROE27.0%から見てより高水準だったと推定される)と比べると、2025年の落ち込みは明らかです。

07会計基準ビュー — US-GAAP / JGAAP / IFRS

UnitedHealth GroupはUS-GAAP採用。GAAP EPSと修正後(非GAAP)EPSの差が2025年は特に大きく開いた。

GAAP EPSと修正後EPSの差 — 第4四半期は$0.01対$2.11

単位:ドル
詳しく見る:会計基準の技術的差異(US-GAAP/JGAAP/IFRS)
  • 医療費用率(Medical Care Ratio)という業界固有の指標を用いる。医療費用÷保険料収入で算出され、日本の損害保険会社が使う「損害率」に近い概念だが、対象が生命保険的な医療保険である点が異なる
  • 「経常利益」区分はなく、営業利益の下に支払利息・子会社売却損益が並ぶだけの構造。FY2025は支払利息40.0億ドル・子会社売却損2.65億ドルを合わせた40.3億ドルの営業外費用
  • 非支配株主持分(NCI)に加え「Redeemable noncontrolling interests(償還可能非支配株主持分)」という区分が貸借対照表の負債と純資産の間(メザニン)に存在し、日本の会計にはあまり馴染みのない表示
  • 会社発表の「Adjusted earnings per share(修正後EPS)」は無形資産償却等を調整した非GAAP指標で、第4四半期はGAAP EPS $0.01に対し修正後EPS $2.11と大きく乖離した
  • 日本の医療保険・損害保険会社であれば「損害率」「事業費率」という指標名で近い概念を開示するが、米国のメディケア・メディケイドのような公的保険制度との接続が無いため、指標の意味合いが単純比較しにくい
  • のれん非償却はUS-GAAPと同じくJGAAPでは規則償却が必要。UnitedHealth Groupはのれんの明細を絶対額で開示していないため、償却費インパクトの試算は本ページでは行っていない(会社未開示)
  • 「経常利益」に相当する段階がないため、日本株と比較する際は営業利益か税引前利益で揃える必要がある
  • IFRSでものれんは非償却・減損テストのみで、US-GAAPと同じ思想
  • IFRS採用の欧州保険会社(IFRS17)は保険契約を将来キャッシュフローの現在価値で測定する独自基準を採用しており、UnitedHealthcareのような米国の医療保険とは会計処理の枠組み自体が大きく異なる。単純な利益率比較は本ページでは避けている
  • IFRSは「営業利益」の定義に幅があり、UnitedHealth Groupが子会社売却損益を営業費用に含めている点は、IFRS採用企業と比べる際の注意点
💡 やさしく:GAAP EPS(会社法上の正式な1株益)と修正後EPS(非GAAP・会社が「本業の実力」として強調する数字)の差が、2025年第4四半期は$0.01対$2.11と極端に開きました。修正後の数字だけを見ると実力を過大評価しがちなので、決算を読むときはGAAP側の実額もあわせて確認することが大切です。

08同業比較 — 垂直統合の深さと収益性の関係

保険+PBMのCigna、保険+自社薬局のCVS Health、保険引受専業のElevance Health・Humanaと比較する(2026年9月11日時点)。

純利益率の比較

単位:%。直近12か月(TTM)実績

UnitedHealth Group(3.14%)はCigna(2.27%)・Elevance Health(2.47%)より高いが、垂直統合の度合いが最も深いはずのCVS Health(1.19%)は逆に最も低く、「垂直統合=高収益率」とは単純に言えないことがわかる。保険引受専業のHumana(0.88%)は医療費トレンド悪化の影響を保険引受だけで吸収せざるを得ず、5社中最も低い。

💡 やさしく:保険と医療提供を両方持つ会社ほど利益率が高いわけではありません。CVS Healthのように薬局・保険・PBMを全部持っていても、それぞれの事業が別々に苦戦すれば利益率は上がりません。UnitedHealth Groupが相対的に高い利益率を保てているのは、OptumRx(薬局給付管理)が安定して増益を続けているためです。

バリュエーション・資本効率の比較

2026年9月11日時点

PERで見るとCigna(11.61倍)が最も割安、Humana(38.70倍)が最も割高。UnitedHealth Group(24.36倍)は中位だが、ROIC13.39%のCignaがPER11.61倍にとどまる一方、ROIC11.37%のUnitedHealth GroupがPER24.36倍まで買われている点は、市場がUnitedHealth Groupの規模・Optumの多角化を評価している証左とも、Cignaが同種の危機を一足先に織り込み済みとも解釈できる。配当利回りはCVS Health(2.81%)が最も高く、Humana(0.88%)が最も低い。

09戦略・課題と改善ポイント

垂直統合モデル自体の強さは規模の大きさに支えられているが、2025年に露呈した「医療費トレンド予測の誤り」と「規制・訴訟リスク」の2つが最大の論点。

強み Strengths

  • 保険(29.7百万人の雇用主向け・8.4百万人のメディケア・アドバンテージ・7.4百万人のメディケイド)と医療提供・PBMを併せ持つ業界最大級の規模
  • OptumRxは約64,000の提携薬局網と16.59億件の調整後処方箋を扱い、FY2023〜FY2025で一貫して営業利益が増加
  • 従業員39万人(うち臨床専門職員16.5万人)という医療提供体制を自社で保有
  • 2026年度上期は医療費用率が前年同期比1.8pt改善し、純利益が前年同期比21.3%増と回復基調

弱み Weaknesses

  • FY2025の医療費用率は前期比+3.6ptの悪化で89.1%に達し、営業利益率が4.24%まで急落した。医療費という「他社がコントロールできない外生変数」への感応度が高い
  • OptumHealthがFY2025に営業赤字2.78億ドルへ転落(FY2024は黒字77.7億ドル)。10-Kは価値ベースケア契約の将来損失引当金を理由に挙げており、2026年も損失が続くリスクを会社自身が認めている
  • FY2025下期の自社株買いは実質ゼロ。株主還元の一時停止は財務的な余裕度が低下したシグナル
  • DOJによるFalse Claims Act訴訟(2017年提訴・メディケア・リスク調整の不正請求疑惑)が2025年時点でも係属中で、2025年3月の特別審査官の勧告にDOJが異議を申し立てている

機会 Opportunities

  • 2026年度上期の医療費用率改善(-1.8pt)が続けば、営業利益率の水準訂正(4.24%→7%台)が本格化する
  • OptumRxの処方箋数は前年比+2.2%と底堅く、PBM事業の相対的な安定性が今後の収益の下支えになる
  • 会社は2026年7月に通期修正後EPSガイダンスを$19.50〜$20.00へ引き上げ済みで、市場コンセンサスの上振れ余地
  • ステファン・ヘムズリー氏が2025年5月にCEO・会長へ復帰し、経営体制の立て直しが進行中

脅威 Threats

  • 医療費トレンドの予測精度そのものが競争力の源泉であり、2025年はこれが機能しなかった。同様の誤算が再発するリスクは構造的に残る
  • DOJのメディケア・リスク調整に関する調査・訴訟が継続。CMS・OIGによるRADV監査(コーディング適正性の検証)も進行中で、遡及的な支払い調整リスクがある
  • メディケア・アドバンテージの公的補助(funding)削減が2025年の減益要因の一つであり、政策変更リスクが恒常的に存在する
  • 同業のCVS Health(Aetna+Caremark)・Cigna(Express Scripts)も同じ垂直統合戦略を取っており、規模の優位性だけでは差別化しきれない可能性

改善ポイント(優先度つき)

最優先

医療費トレンド予測モデルの精度向上

2025年の危機の根本原因。価格設定(保険料)と実際の医療費支払いのギャップを事前に埋められなければ、同じパターンの利益急変が再発する。

最優先

OptumHealthの黒字化

価値ベースケア契約の損失引当金が2026年も響く可能性があると10-Kは示唆している。診療所運営事業の採算改善が、垂直統合モデル全体の説得力を左右する。

中期

DOJ訴訟・RADV監査への対応

メディケア・リスク調整をめぐる訴訟・監査が長期化すれば、レピュテーションと遡及的な財務影響の両面でオーバーハングとなる。

中期

株主還元の再開ペース

FY2025下期に停止した自社株買いをいつ・どの規模で再開するかは、経営陣が業績回復にどれだけ自信を持っているかのシグナルになる。

10投資メリット・デメリット

2025年の急落は「モデルの崩壊」ではなく「医療費予測の外れ」であり、2026年度上期の数字はその修正が進んでいることを示す。論点は、この回復がガイダンス通りに続くか。

▲ 強気材料(メリット)

  • 2026年度上期は純利益117.6億ドル(前年同期比+21.3%)・EPS $12.94(+22.0%)と明確な回復基調
  • 医療費用率は前年同期比-1.8ptの改善で上期85.3%、第2四半期単体では前年同期比-2.7ptの改善で86.7%とさらに改善が加速
  • 会社は2026年7月16日に通期修正後EPSガイダンスを$19.50〜$20.00へ引き上げ、業績回復に自信を示した
  • OptumRxは3期連続増益(51.2億→58.4億→71.9億ドル)で、PBM事業の収益基盤は崩れていない
  • ROIC11.0%はWACC6.8%を4.2ポイント上回っており、危機下でも資本コストを上回る収益力は維持している

▼ 弱気材料(デメリット)

  • FY2025の営業利益率4.24%はFY2023の8.7%から半減以下。回復が計画通り進む保証はない
  • OptumHealthはFY2025に営業赤字へ転落し、10-Kは2026年も損失が続くリスクに言及している
  • DOJのFalse Claims Act訴訟・CMS/OIGのRADV監査が係属中で、遡及的な財務影響が読みにくい
  • FY2025下期の自社株買いは実質ゼロで、株主還元の再開時期は不透明
  • PER24.36倍(実績TTM)はCigna(11.61倍)など同業と比べ割安ではなく、回復期待がすでに株価に織り込まれている可能性

3つのシナリオ(筆者試算)

強気シナリオ医療費用率の改善が続き、OptumHealthも黒字転換。FY2026修正後EPS $20.5×PER21倍=$430.5(現値$379.09比+13.6%)
中立シナリオ会社ガイダンス通り。FY2026修正後EPS $19.75(会社ガイダンス中央値)×PER19倍=$375.25(現値比-1.0%)
弱気シナリオ医療費トレンドが再悪化、訴訟・監査も重荷に。FY2026修正後EPS $18.5×PER15倍=$277.5(現値比-26.8%)

※起点となるFY2026(2026年12月期)の修正後EPSは、会社が2026-07-16に引き上げたガイダンスレンジ$19.50〜$20.00にもとづく。上のシナリオはこのガイダンスに対する筆者の解釈・試算であり、会社予想でも市場コンセンサスそのものでもない。

💡 はじめての方への総括:見るべきは3つ。①医療費用率の改善ペース(2026年度上期は前年同期比-1.8pt。この改善が続くかが最大の焦点)、②OptumHealthの黒字転換(FY2025の赤字転落が一時的か構造的かを2026年の決算で確認する必要がある)、③DOJ訴訟・RADV監査の進展(遡及的な財務影響の有無)。保険と医療提供を併せ持つ垂直統合モデル自体は米国医療の複雑さを取り込んだ強力な参入障壁ですが、2025年はその複雑さ(医療費の予測しにくさ)自体が牙をむいた年でした。