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🕒 最終更新: 2026-09-18 (直近更新)

ウーバー・テクノロジーズ Uber Technologies, Inc.・UBER

NYSEUS GAAP12月決算 配車・デリバリー・フレイト26年Q2決算まで反映

2019年のIPOから2022年まで一度も通期の最終黒字を出せなかった「赤字の代名詞」が、2025年通期は営業利益55.7億ドル(営業利益率10.70%)・純利益100.5億ドルまで到達した。車両も配達員も自社保有しないアグリゲーターモデルのまま、Gross Bookings(取扱高)1,934億ドル(前年比+19%)という規模がネットワーク効果を生んだ結果だ。ただし純利益の急増には税務上の一時要因(繰延税金資産の評価性引当金取り崩し)が大きく寄与しており、実力を測るなら営業利益を見るべき。2026年7月には欧州フードデリバリー大手Delivery Hero買収(株式価値148億ドル)を発表し、次の拡張フェーズに入った。

💡 はじめての方へ:Uberは「タクシーの代わりにスマホで車を呼べる」サービスで有名になりましたが、長年「儲かっているように見えて実は大赤字」の会社でした。運転手に払うお金とほぼ同額を利用者から集めるだけでは、保険や安全対策のコストで利益が残らなかったからです。それが規模の拡大とともに変わり、2025年にはついに本業(営業利益)でしっかり儲かる会社になりました。

2026年第2四半期(4〜6月期)決算=2026年8月5日発表を反映済み。通期ベースの財務3表・収益性・会計基準ビューはFY2025通期(2025年12月期)の確定実績(2026年2月13日発表10-K)。株価・時価総額・PER・PBR・同業比較は2026年9月17日時点のstockanalysis.com記載データ——業績数値と株価の基準日が異なる点に注意。

01企業カルテ

FY2025通期実績(2025年12月期・2026/2/13発表10-K)と直近の市場評価。財務・株価ともにドル建て。

収益(FY2025)
520.2億ドル
+18.3%・Gross Bookings比26.9%
営業利益
55.65億ドル
営業利益率10.70%・FY21は▲21.97%
純利益(親会社帰属)
100.53億ドル
EPS(希薄化)$4.73・一時的な税務ベネフィット含む
Gross Bookings
1,934.5億ドル
前年比+18.9%(会社発表+19%)
MAPC(月間実利用者)
2.02億人
Trips 135.7億回(前年比+20.4%)
時価総額
1,449.8億ドル
株価$71.07相当・2026/9/17時点
PER(実績TTM)
15.48
予想17.23倍・PBR5.30倍
ROIC(市場データ・TTM)
19.18%
推定WACC9.87%を上回る
成長性
Gross Bookings前年比+18.9%、Trips+20.4%。Delivery収益は+25.4%・Adjusted EBITDAは+44.6%と最も勢いがある事業
収益性
営業利益率10.70%はFY2021の▲21.97%から劇的に改善したが、まだDoorDash(5.46%との比較では上回るが)並みの本業効率。純利益率19.33%は一時的な税務ベネフィットで嵩上げされている点に注意
財務健全性
自己資本比率43.75%(FY2025末、親会社株主帰属ベース)。ただしDelivery Hero買収で新規デットを調達予定で、グロスレバレッジ2倍未満を維持する方針
株主還元
FY2025に65.23億ドルの自社株買いを実施(配当なし)。TTM FCFは初めて100億ドルを突破
バリュエーション
PER15.48倍はDoorDash(103.32倍)・Grab(25.22倍)より低く、株価は52週で-27.8%調整済み

※5軸評価は本レポート筆者の見解であり、投資勧誘ではありません。PER・PBR・ROIC・WACC・時価総額はstockanalysis.com記載の市場データ(2026年9月17日取得)。財務数値(収益・営業利益・純利益等)は会社が開示するUS GAAP決算にもとづく。

💡 読み方:営業利益率10.70%は「100ドル売って10.7ドルが本業のもうけ」という意味。まだDoorDash並みの高収益企業ではありませんが、FY2021の▲21.97%(100ドル売って22ドルの持ち出し)から6年で劇的に改善しました。一方で純利益率19.33%は営業利益率よりずっと高く見えますが、これは税務上の一時的なプラスが乗っているためで、「本業の実力」を見るなら営業利益率の方を信頼すべきです。

02ビジネスモデル図解

モノ()・カネ()・情報()の流れで見る、Uberの稼ぎ方。矢印にカーソルを合わせると実額が出ます。

カネの流れ モノ・サービスの流れ 情報の流れ
起点2009年、トラビス・カラニックとギャレット・キャンプがサンフランシスコで着想。2010年にUberCabとしてサービス開始、2019年5月にニューヨーク証券取引所へIPO
定説ライドシェア・デリバリーは、運転手・配達員に支払う金額とほぼ同額を利用者から集める労働集約型の薄利ビジネスで、規模が大きくなるほど保険料・安全対策費がかさみ赤字が積み上がる(実際に2019〜2022年のUberは一度も通期最終黒字を達成できなかった)
逆説Uberは車両も配達員も自社保有しないアグリゲーターモデルのまま、Gross Bookings(取扱高)に対して一定比率の手数料(テイクレート)を抜くことで規模を拡大した。MAPC2.02億人・Trips135.7億回が生むネットワーク効果(利用者が増える→運転手の稼働率が上がる→待ち時間が減る→さらに利用者が増える)だけで、車両資産を持たずに営業利益率10.70%へ到達。2026年7月には自社で強くない市場をDelivery Hero買収で取り込む段階に入った——アグリゲーターの純度を保ったままM&Aで規模を広げる

Uberの収益は3セグメントで構成される。Mobility(配車)296.70億ドル(FY2025・収益構成比57.1%)、Delivery(デリバリー)172.48億ドル(構成比33.2%、広告収益の伸びが寄与)、Freight(貨物仲介)50.99億ドル(構成比9.8%)。各セグメントの伸び率の詳細は次章「Delivery Hero買収とセグメント別採算」で扱う。会社は3セグメントの収益・Adjusted EBITDAを開示している。

💡 やさしく:Uberは車を1台も、ドライバーを1人も「雇って」いません。利用者が支払うお金(Gross Bookings)のうち、ドライバー・配達員への支払いを除いた残り(テイクレート、約27%前後)だけを自分の取り分として受け取ります。「所有せず、つなぐだけ」で規模を拡大するのがUberの本質——利用者と運転手が両方増えるほど、待ち時間が減って両方がさらに増える、というネットワーク効果がエンジンです。

03成長の歩み — 赤字から営業利益率10.7%へ、6年間の軌跡

FY2021〜FY2025の5期間、収益は年平均31.5%で伸び、営業利益はFY2021の▲38.34億ドルからFY2025には+55.65億ドルへ転換した。

収益の推移(FY2021〜FY2025)

単位:億ドル ■濃い棒=直近期。12月決算

営業利益・営業利益率の推移

FY2021の▲21.97%からFY2025の+10.70%へ、5期連続で改善

FY2023に初めて年間ベースで営業損益がプラス(11.10億ドル)に転じ、その後2年で営業利益は5倍に拡大した。「規模の拡大がコストの伸びを上回る」局面にようやく入ったことを示す。

純利益の推移

単位:億ドル。FY2021・FY2022は最終赤字

FY2021の▲4.96億ドル、FY2022の▲91.41億ドルの最終赤字から、FY2023にようやく+18.87億ドルの黒字化。ただしFY2024(+98.56億ドル)・FY2025(+100.53億ドル)の急増は、営業利益の伸びだけでは説明できず、繰延税金資産の評価性引当金取り崩し(FY2024:64億ドル、FY2025:50億ドル)という一時的な税務要因が主因である。

04Delivery Hero買収とセグメント別採算 — 「自前で強くない市場」をどう取り込むか

2026年7月16日、Uberは欧州・中東・アジアで存在感を持つ独立系フードデリバリー大手Delivery Hero(DAX上場)に対し、1株41.50ユーロ・株式価値148億ドルの公開買付けを発表した。すでに約37%の経済的持分を保有し、プロサス(Prosus)の17%は取消不能の応募契約を締結済み。この買収の規模感と、それを支えるセグメント別採算を実数で見る。2026年第2四半期(4〜6月期)の実績は、Gross Bookings580.22億ドル・収益141.91億ドル・GAAP純利益23.94億ドル・GAAP希薄化EPS $1.17(詳細は各セグメントの図表を参照)。

規模の比較 — UberとDelivery Heroの2025年Gross Bookings

単位:十億ドル。Uber側は2026年7月のDelivery Hero買収発表資料(同社IR)記載の2025年通期セグメント別GB規模

Uber Mobility970億ドル・Uber Delivery910億ドル・Freight50億ドル(合計約1,930億ドル、10-K記載のFY2025 Gross Bookings実績1,934.5億ドルとほぼ一致)に対し、Delivery Hero単体は420億ドル。Delivery Hero買収が成立すれば、Uber Deliveryの規模に対して約46%の追加GBを取り込むことになる——欧州・中東・アジアでUberが単独では強くない市場を、買収で一気に埋める狙いだ。DeliveryHeroは2025年にMAPC4,900万人・稼働パートナー90万人・加盟店110万・年間29億件のオーダーを抱える規模の事業である。

💡 やさしく:Uberはアメリカやラテンアメリカなどでは強いですが、ヨーロッパや中東・アジアの一部地域ではDelivery Heroの方が強い場所があります。「自分で頑張って追いつく」のではなく「相手を買ってしまう」ことで、世界地図を一気に塗り替えようとしているのがこの買収です。

Uberの経済的持分の広がり

単位:%。買収発表時点の経済的持分の内訳

Uberは買収発表前から段階的に株式を取得し、既に約37%の経済的持分を保有している。プロサスが保有する約17%は取消不能の応募契約(irrevocable undertaking)を締結済みで、これを加えると合計約54%——最低応募条件(50%+1株)を超える水準に達する見込みだ。買収は既存手元資金と新規デットで賄い、投資適格格付け・グロスレバレッジ2倍未満を維持する方針。クロージングは2027年後半を予定。

セグメント別収益(FY2024→FY2025)

単位:億ドル

Delivery収益は172.48億ドルで前年比+25.4%——Mobility(+18.3%)を上回るペースで成長し、広告収益の伸びが寄与している。Freightは50.99億ドルで前年比▲0.8%と、貨物市況の悪さから唯一の減収セグメント。

セグメント別Adjusted EBITDA(FY2024→FY2025)

単位:億ドル。会社発表の非GAAP指標

Delivery Adjusted EBITDAは35.72億ドルで前年比+44.6%——収益の伸び(+25.4%)を大きく上回るペースで利益が拡大しており、Delivery事業の採算改善が最も勢いのある成長ドライバーになっている。Mobility Adjusted EBITDAも78.99億ドル(+21.6%)と大黒字だが、Freightは▲0.33億ドルの赤字が続く(前年の▲0.74億ドルからは改善)。Corporate G&A・Platform R&Dは▲27.08億ドルの共通費として全社Adjusted EBITDA 87.30億ドル(+34.6%)から差し引かれている。

💡 やさしく:3つの事業のうち、いちばん儲かる力が伸びているのは「ごはんを届ける」Deliveryです。収益の伸び以上に利益が伸びているということは、広告収入など「運びながら追加で稼ぐ」仕組みが効いてきていることを示しています。

05財務3表ビジュアル

営業利益率10.70%のP/L、繰延税金資産109.51億ドルが資産の1/6超を占めるB/S、そしてFCFが初めて100億ドルを超えたC/F——「税務要因で嵩上げされた純利益」と「地の実力」を分けて読む。

PL滝グラフ — 収益520.17億ドルはどこへ消えるか(FY2025)

単位:億ドル

最大の費目は売上原価313.38億ドル(収益の60.3%=ドライバー・配達員への支払い等)。営業利益55.65億ドルに対し、受取利息7.43億ドル・支払利息4.40億ドル・その他損失0.68億ドルを経た税引前利益(持分法控除前)は58.00億ドル。ここに法人税が43.46億ドルの税務ベネフィット(オランダの繰延税金資産の評価性引当金50億ドルの取り崩しが主因)として加わり、持分法投資損失0.53億ドル控除後の非支配株主持分込み純利益は100.93億ドル、非支配株主帰属分0.40億ドルを差し引いて親会社株主帰属純利益100.53億ドルとなる。

💡 やさしく:520億ドルの収益に対し、最大の費目はドライバー・配達員への支払い(売上原価)です。本業のもうけである営業利益は55.65億ドルですが、最終的な純利益はそれよりずっと大きい100.53億ドル——この差は「税金が思ったより少なかった(というより一時的にプラスになった)」という会計上の特殊要因によるもので、来年以降も同じペースで純利益が増える保証はありません。

BS比例図 — 総資産618.02億ドルの中身(FY2025末)

箱の高さ=金額。自己資本比率43.75%(親会社株主帰属ベース)

総資産の17.7%(109.51億ドル)が繰延税金資産——FY2024・FY2025と続いた評価性引当金の取り崩しの結果、資産側に大きく積み上がっている。のれん89.31億ドル・無形資産10.48億ドルは合計で総資産の16.1%。有利子負債は105.21億ドル。償還可能非支配株主持分1.65億ドルは負債と資本の中間に位置するメザニン項目として区分される。

CF滝グラフ — 営業CF100.99億ドルの使い道(FY2025)

単位:億ドル

営業CF100.99億ドルから設備投資3.36億ドルを引いたFCFは97.63億ドル。投資CFは35.64億ドルの支出(有価証券への投資が中心)、財務CFは57.13億ドルの支出(自社株買い65.23億ドルが主因)。会社発表のTTM(直近12か月)FCFは101.2億ドルと、単独の四半期・年度を超えて初めて100億ドルの節目を超えた

06収益性 — ROE37.16%は本物か

市場データのROE37.16%は高水準だが、その内訳には税務ベネフィットという一時要因が混じっている。ROICWACCの比較で、資本コストを上回る「地の実力」を確認する。

ROE(市場データ・TTM)
37.16%
17.34%
売上高純利益率
DoorDash5.29%・Grab16.03%より高いが税務要因込み
× 約0.87回
総資産回転率(筆者算出)
TTM売上552.3億ドル÷総資産618.0億ドル前後
× 約2.47倍
財務レバレッジ(筆者算出)
総資産÷株主資本(親会社帰属ベース)

ROE37.16%は、営業効率(純利益率)・資産効率(回転率)・レバレッジの3要素に分解できるが、純利益率17.34%のうち相当部分が税務ベネフィットという一時要因に依存している点が、フェラーリ(ROE43.0%・純利益率22.35%が本業由来)のような「持続的な高ROE」と一線を画す。本サイト掲載の高収益企業(Visa等)と比べても、Uberはまだ「本業の実力で稼ぐROE」への過渡期にある。

ROIC vs WACC — 資本コストを上回っているか

単位:%。いずれもstockanalysis.com記載の市場データ(TTM・2026/9/17時点)

ROIC19.18%はWACC9.87%を9.3ポイント上回っており、Uberは資本コストを上回るリターンを生み出す事業へと変わったことを示す。営業利益率12.13%(TTM・stockanalysis.com基準)はDoorDash(5.46%)より高いが、Uberより高収益なアセットライト企業(本サイト掲載のVisa等)にはまだ及ばない。

💡 やさしく:ROIC19.18%は「事業に投じたお金1に対して毎年0.19稼ぐ」という意味。資金調達コスト(WACC9.87%)をきちんと上回っているので、「借金してでも事業を拡大する価値がある」段階に入っていることがわかります。ただし裏側にある純利益には税務要因の嵩上げが含まれるため、投資判断では営業利益・ROICの方を重視すべきです。

07会計基準ビュー — US-GAAP / IFRS / JGAAP

UberはUS-GAAP採用。持分投資の公正価値評価と、のれんの非償却という2つの会計処理が、他基準で見たときの利益率・純利益を動かす。

会計基準の違いで営業利益率はどう変わるか(FY2025・筆者試算)

単位:%。US-GAAP実績10.70%を基準に、のれん償却を仮定した場合の影響を試算
詳しく見る:会計基準の技術的差異(US-GAAP/IFRS/JGAAP)
  • Aurora・Lucid・Didi・Grab等への持分投資(負債・持分証券)はASU 2016-01に基づき公正価値の変動を都度損益計上する。Q2 2026にはこれらの評価替えで税引前16億ドルの純益が発生し、GAAP純利益を大きく押し上げた——事業の急改善ではなく評価損益の振れである
  • のれん89.31億ドルは非償却・減損テストのみ(ASC350)
  • 研究開発費(Platform R&D)3,402百万ドルは原則即時費用化(ASC730)。将来の技術投資は資産計上されず、当期の費用として営業利益を圧迫する形で表れる
  • 3セグメント(Mobility・Delivery・Freight)をマネジメント・アプローチで開示(ASC280)
  • 持分投資の公正価値評価はIFRS9でも同様の枠組みがあり、大きな差異は生じない
  • のれんはIFRSもUS-GAAPと同様に非償却・減損テストのみで、この点は差異がない
  • 保険準備金(短期33.87億ドル・長期90.76億ドル、Uberは自家保険プログラムを運営)について、IFRS17(保険契約)は将来キャッシュフローのディスカウント(時間価値の反映)を求める場合があり、US-GAAPの実務よりも負債評価が若干軽く出る可能性がある(Uberは具体的な差異を開示していないため試算は行っていない)
  • JGAAPならのれん89.31億ドルは20年以内の規則償却が必要。均等償却すると年4.47億ドルの追加費用が発生し、営業利益は55.65億ドル→51.18億ドルへ、営業利益率は10.70%→9.84%に低下する
  • 「経常利益」に相当する段階がUS-GAAPにはなく、日本株と比較する際は営業利益か税引前利益で揃える必要がある
  • 日本基準では持分投資の未実現評価益を純利益に取り込む実務は限定的な場合が多く、Q2 2026のような評価益による純利益の急増は生じにくい
💡 やさしく:UberはAurora・Lucidなど自動運転関連企業に投資していますが、US-GAAPではこれらの株価が上下するだけで自社の純利益が動きます。もし日本のルールでのれんを20年で分割して費用にするなら、営業利益率は10.70%から9.84%まで下がって見えます。同じ実態でも会計ルールという「ものさし」次第で数字の見え方が変わることがわかる一例です。

08同業比較 — 配車・デリバリー3社との実力比較

米国配車専業のLyft、米国デリバリー最大手のDoorDash、東南アジア配車・デリバリー大手のGrabと比較する(2026/9/17時点、stockanalysis.com記載データ)。

営業利益率・純利益率の比較

単位:%。直近12か月(TTM)実績

Uberの営業利益率12.13%はDoorDash(5.46%)・Grab(3.70%)を上回るが、Lyftは営業損失(▲1.47%)にもかかわらず純利益率が42.32%と最も高く見える——これは税務ベネフィット(法人税が2.87億ドルの給付)による一時的な押し上げで、Uber自身がFY2024・FY2025に経験した歪みと同じパターンである。「本業の実力」で比較するなら営業利益率を見るべきで、その順位はUber>DoorDash>Grab>Lyftとなる。

💡 やさしく:Lyftは営業利益がマイナスなのに、純利益はプラスで大きく見えます。これは「税金が予想より少なかった」という一時的な会計上の効果で、来年も同じようにプラスになるとは限りません。見かけの純利益だけで会社の実力を判断すると誤解する典型例です。

バリュエーション・資本効率の比較

単位:倍・%。2026/9/17時点、stockanalysis.com記載の市場データ

時価総額の比較

単位:億ドル。2026/9/17時点

Uber(1,449.8億ドル)はDoorDash(846.7億ドル)の約1.7倍、Grab(117.7億ドル)の約12倍、Lyft(58.1億ドル)の約25倍——配車・デリバリー業界の中でUberが依然として頭一つ抜けた規模を持つことがわかる。

09戦略・課題と改善ポイント

ネットワーク効果による黒字化は実現したが、純利益の中身と、Delivery Hero買収の実行力という2つの論点が今後の評価を左右する。

強み Strengths

  • Gross Bookings1,934億ドル(前年比+19%)、MAPC2.08億人という圧倒的な規模がネットワーク効果を生み、営業利益率10.70%まで到達
  • TTMフリーキャッシュフローが初めて100億ドルを突破。ROIC19.18%はWACC9.87%を明確に上回る
  • Mobility・Delivery・Freightの3セグメント経営で単一市場依存を回避。Deliveryは前年比+44.6%のAdjusted EBITDA成長
  • 自動運転は自社開発せず複数パートナーを束ねるアグリゲーター戦略で、技術投資リスクを負わない

弱み Weaknesses

  • FY2024・FY2025とも純利益急増の主因は一時的な繰延税金資産の評価性引当金取り崩しで、営業利益(実力)と純利益(見た目)のギャップが大きい
  • Q2 2026のGAAP純利益+77%成長も、持分投資の評価替えによる16億ドルの評価益が押し上げており、事業の急改善ではない
  • Freightセグメントは複数年赤字が続く(FY2025:▲0.33億ドル)
  • テイクレート(Revenue Margin)はFY2024の27.02%からFY2025は26.88%へわずかに低下

機会 Opportunities

  • Delivery Hero買収が成立すれば、Uber Deliveryの規模(910億ドル)に対して約46%の追加GB(420億ドル)を取り込める
  • 広告事業(Delivery収益に含まれる)が高成長・高粗利率の収益源として拡大余地
  • 自動運転アグリゲーター戦略が奏功すれば、将来的に人件費の一部を資本コストに置き換えられる可能性
  • 会社は2026年第3四半期の非GAAP EPSガイダンス($0.84〜$0.88、前年比+28〜35%)を提示し、増益トレンドの継続を見込む

脅威 Threats

  • Delivery Hero買収は規制当局の承認が必要で、クロージングは2027年後半予定と1年以上先。承認プロセスの遅延・条件付与リスクが残る
  • Waymo・Zoox(Amazon)・Tesla等、自社で自動運転車両を保有する競合が、Uberのアグリゲーターモデルを迂回する可能性
  • ギグワーカー(運転手・配達員)の雇用分類を巡る規制・訴訟リスクは米国・欧州で継続中
  • 税務ベネフィットが一巡した後、純利益成長率は営業利益の実力伸び率に収斂し、市場の期待とのギャップが生まれるリスク

改善ポイント(優先度つき)

最優先

Delivery Hero買収の規制承認進捗

2027年後半クロージング予定の大型買収。EU・各国競争当局の審査結果次第で、統合効果(一桁台後半%のEPSアクレション目標)の実現可否が左右される。

最優先

税務ベネフィット一巡後の「地の実力」純利益の検証

FY2024・FY2025とも純利益急増の主因は一時的な繰延税金資産の評価性引当金取り崩し。今後は営業利益(FY2025:55.65億ドル、営業利益率10.70%)の伸びそのものが問われる局面に入る。

中期

テイクレート低下トレンドの継続性

Revenue MarginはFY2024の27.02%からFY2025は26.88%へ低下。規模拡大が続く中でテイクレートがさらに下がるのか、下げ止まるのかは収益性の先行指標になる。

中期

Freightセグメントの黒字化時期

Freight Adjusted EBITDAはFY2025も▲0.33億ドルの赤字(FY2024の▲0.74億ドルからは改善)。貨物市況の回復を待つのか、事業ポートフォリオの見直しが必要かの見極めが必要。

10投資メリット・デメリット

ネットワーク効果による黒字化は実証されたが、純利益の質とDelivery Hero買収の実行力が、株価がどこまで先取りしているかを左右する。

▲ 強気材料(メリット)

  • Gross Bookings前年比+19%、Trips+20%という規模拡大が続き、営業利益率は6年連続で改善(FY2021:▲21.97%→FY2025:+10.70%)
  • ROIC19.18%はWACC9.87%を明確に上回り、TTM FCFは初めて100億ドルを突破
  • PER15.48倍はDoorDash(103.32倍)・Grab(25.22倍)より低く、成長株としては相対的に評価が抑えられている
  • Delivery Hero買収が成立すれば、欧州・中東・アジア市場でのGross Bookingsが最大46%規模で積み上がる可能性
  • Delivery Adjusted EBITDAは前年比+44.6%と、3セグメント中最も勢いのある成長ドライバーになっている

▼ 弱気材料(デメリット)

  • FY2024・FY2025の純利益急増は税務ベネフィットという一時要因が主因で、「地の実力」(営業利益)はまだ発展途上
  • Q2 2026のGAAP純利益+77%成長も持分投資の評価替えによる評価益が押し上げており、事業の急改善ではない
  • Delivery Hero買収のクロージングは2027年後半予定と時間軸が長く、規制承認リスクが残る
  • テイクレート(Revenue Margin)はFY2024の27.02%からFY2025の26.88%へ低下傾向
  • 自動運転を巡るWaymo・Tesla等との競争、ギグワーカーの雇用分類を巡る規制リスクは継続中

3つのシナリオ(筆者試算)

強気シナリオDelivery Hero統合シナジー(会社目標:年間ランレート12億ドル超)とAV戦略が計画を上回り、TTM GAAP EPSが$6.20へ成長。DoorDash的な高成長株としての再評価でPERが20倍に切り上がる。EPS$6.20×PER20倍=$124(現在比+75%)
中立シナリオ現在の増益トレンドが継続し、TTM GAAP EPSが$5.30へ成長。PERは現在の水準(15.5倍)を維持。EPS$5.30×PER15.5倍=$82.2(現在比+16%)
弱気シナリオ税務ベネフィットの一巡でGAAP純利益が伸び悩み、Delivery Hero買収の統合コストも重なってTTM GAAP EPSが$4.00へ低下。買収の不確実性でPERが11倍まで圧縮。EPS$4.00×PER11倍=$44(現在比-38%)

※起点となるTTM実績(GAAP EPS $4.58・PER15.48倍)はstockanalysis.com記載の市場データ(2026/9/17時点)。強気・弱気シナリオのEPS成長率・PER倍率は筆者独自の仮定であり、会社予想でも市場コンセンサスでもない。会社発表のQ3 2026非GAAP EPSガイダンス($0.84〜$0.88)は参考情報として区別して記載している。

💡 はじめての方への総括:見るべきは3つ。①営業利益の伸び(純利益ではなく、税務要因に左右されない本業の実力を見る)、②Delivery Hero買収の進捗(2027年後半クロージング予定の大型買収が計画通り進むか)、③テイクレートの底打ち(FY2024の27.02%からFY2025の26.88%への低下が続くか、止まるか)。Uberの「赤字から黒字へ」という転換自体は実績が証明した強いストーリーですが、純利益の中身に税務要因が混じっていることを理解した上で、営業利益ベースで実力を見極めることが、この銘柄を読む上での最大の注意点です。