電気自動車(EV)のパイオニアでありながら、直近12カ月の営業利益率は5.0%まで低下。2022年のピーク(16.8%)から急速に収益性が悪化する一方、PER370倍という自動車メーカーとして異例の高評価を維持する、評価軸が特殊な会社。
直近12カ月(TTM・2025年4月〜2026年3月)実績と現在の市場評価。
※5軸評価は本レポート筆者の見解であり、投資勧誘ではありません。円換算は1ドル=162.40円概算。
モノ(緑)・カネ(黄)・情報(青)の流れで見る、Teslaの稼ぎ方。
現状の収益の柱は自動車販売とエネルギー貯蔵(蓄電池)事業。規模で見ると、自動車事業がFY2025売上948億ドルの73%(695億ドル)を占め圧倒的な主力。エネルギー貯蔵事業は13%(128億ドル)だが前期比+26.6%で急成長中。残る13%(125億ドル)は中古車販売・保険・充電(スーパーチャージャー)等のサービス等収入。ただし株式市場が評価しているのは、販売した車から集まる膨大な走行データを使って開発する完全自動運転(FSD)ソフトウェアと、それを応用したロボットタクシー・人型ロボット(Optimus)等の将来事業への期待——これらはまだ売上として実現していない。現在の自動車事業の利益率だけでは、現在の株価水準を説明できない。
2022年に営業利益率16.8%のピークをつけて以降、価格競争激化とともに一貫して低下を続けている。
FY2025(2025年12月期)は前年比▲2.9%と、上場来ほぼ初めての減収となった。TTMではわずかに回復(+2.3%)しているが、成長の勢いは明らかに鈍化している。
ROIC52.7%(FY22)→7.3%(TTM)という劇的な低下は、値下げ競争による利益率悪化が資本効率全体を蝕んでいることを示す。中国BYD等の競合台頭による価格競争が背景にあるとみられる。
自動車事業の実力(営業利益率5.0%)だけでは正当化できない株価評価の理由を考える。
一般的な自動車メーカーのPERが10〜20倍程度であるのに対し、TeslaのPER370倍は純利益の370年分の値段が既についていることを意味する。市場はこの数字を「自動車会社としての利益」ではなく、「将来の自動運転・ロボットタクシー・Optimusロボット事業が生み出すであろう利益」を織り込んだ数字として評価していると解釈できる。
Teslaを自動車メーカーではなく「テック企業」として見ても、PER370.4倍は次点のApple(40.5倍)の9倍以上という突出した水準。NVIDIA(31.1倍、AI半導体という実際に急成長中の事業を持つ)と比べても10倍以上高い。つまりTeslaの評価は「割高なテック株」の中でも例外的な位置にあり、市場が織り込む期待の大きさが際立って高いことがわかる。
FY2025通期の売上948億ドルの内訳。自動車が7割超を占めるが、エネルギー貯蔵事業が急拡大中。
収益性は低下しても、財務体力自体は健全さを保っている。
FCF(stockanalysis.com算定)は+70億ドルと依然プラスを維持。収益性は悪化しているが、財務的な危機というわけではない。
ROE4.7%(TTM)をデュポン分解で見る。ピーク時からの劣化ぶりを確認する。
平均残高ベースの筆者概算。純利益率の低下が全体を押し下げる主因で、財務レバレッジ・回転率は大きく変わっていない——つまり問題は「値下げ競争による利益率の劣化」に集約される。
TeslaはUS-GAAP採用。自動車メーカーとしての会計処理の特徴を見る。
自動車メーカーとしてではなく、テクノロジー企業として評価されている点で異色の存在。
時価総額1.43兆ドルは、本サイト掲載のApple・NVIDIA・Microsoft・Amazonと比べると小さいが、それでも一般的な自動車メーカー(PER10〜20倍水準)とは全く異なるテック企業型の評価(PER370倍)を受けている点が特異。
旗印は「持続可能なエネルギーへの移行」から「自動運転・ロボットへの転換」へ。課題は自動車事業の収益性回復と将来事業の実現。
値下げ競争からの脱却、あるいは新モデルによる高付加価値化が、営業利益率5.0%からの回復の鍵。
株価が織り込む将来事業が、実際にいつ・どの規模で収益化するかが最大の投資論点。
FY25の減収から、新モデル投入等でどう成長軌道に戻すか。
「自動車事業としての実力は明確に悪化中。論点はPER370倍が正当化する将来事業(FSD・ロボット)への賭けが実るか」が本レポートの総括。