1997年のDVD郵送レンタルから2007年に動画配信へ、そして2013年以降は自社スタジオへと3段変身したエンタメ企業。FY2025売上451.8億ドル・営業利益率29.5%、直近のQ2FY2026営業利益率は33.4%まで加速している。総資産の59.0%(327.8億ドル)がコンテンツ資産という、配信プラットフォームというより「コンテンツを資産として運用する製作会社」の構造が本質。
FY2025通期実績(2025年12月31日期・2026-01-23開示、SEC 10-K確定値)と直近四半期(Q2FY2026・2026年6月30日期・2026-07-16発表)・市場評価。
※5軸評価は本レポート筆者の見解であり、投資勧誘ではありません。
モノ(緑)・カネ(黄)・情報(青)の流れで見る、Netflixの稼ぎ方。
Netflixは会員からの月額課金と広告収入を元手に、自社スタジオ・外部製作会社へ製作費を支払い、完成した映像コンテンツを「コンテンツ資産」として資産計上・償却する会計構造を持つ。これは伝統的なメディア企業(放送・映画配給)が製作費を都度費用処理するのに対し、Netflixは「資産を作って何年もかけて回収する」という装置産業的な発想に近い。
FY2022はコロナ特需の反動で成長が鈍化したが、そこから3年で売上は+43%、営業利益率は12ポイント近く改善した。
FY2022はコロナ特需の反動で会員成長が鈍化し営業利益率が一時的に低下(17.8%)。そこから3年で29.5%まで回復した。
四半期営業利益率はQ4FY2025を底に急回復。一方で地域別には「価格改定が一巡したUCAN」と「まだ伸びるLATAM」で成長ステージの差が広がっている。
Q4FY2025の24.5%を底に、Q1FY2026 32.3%→Q2FY2026 33.4%→Q3FY2026予想33.2%と急回復。会社は「コンテンツ償却費の伸びは上半期に偏り、下半期は鈍化する」と説明しており、FY2026の営業利益成長率をFY2025比20%超と見込んでいる(会社ガイダンスの含意値)。なおQ2FY2026のフリーキャッシュフローは15.3億ドル(前年同期比縮小、Warner Bros.契約解消金の一時的な税金支払い増が影響)。会社はFY2026通期の売上高ガイダンスを510〜514億ドル(51,000〜51,400百万ドル)、営業利益率31.5%としている。
UCAN(北米)は価格改定の一巡により売上成長がQ3FY2025の17%からQ2FY2026は10%へ減速する一方、LATAM(中南米)はQ3FY2025の10%からQ2FY2026は21%へ加速。地域ごとの成長ステージの差が広がっている。
総資産に占めるコンテンツ資産の比率はFY2021の69.3%からFY2025は59.0%へ低下している一方、営業利益率はFY2021の20.9%からFY2025は29.5%へ上昇。「コンテンツに投じる金額の伸びを抑えながら収益性を上げる」段階に入ったことを示す一次資料ベースの傾向。
大型の自社株買いを続けながら、フリーキャッシュフローは90億ドル台を確保。
総資産の59.0%(327.8億ドル)がコンテンツ資産。現金及び短期投資は9.1億ドルとやや小さく、有利子負債144.6億ドルとのバランスは自社株買いの原資を営業CFに依存する構造。Q2FY2026末のNet Debt(有利子負債調整後−現金等)は52.4億ドル。
設備投資6.9億ドルを差し引いたFCFは94.6億ドル(営業CF−設備投資、会社の非GAAP定義に準拠)。自社株買い91.3億ドルはFCFとほぼ同水準で、配当がない分、還元原資を丸ごと自社株買いに充てる構造。
ROE41.3%をデュポン分解で見る。装置産業のディズニー・オリエンタルランドとは対照的に、少ない資産で高い回転と高いレバレッジを効かせる構造。
FY2025期末残高ベースの筆者概算。ディズニー(ROE11.3%・回転率0.48回)と比べ、Netflixは純利益率・回転率のどちらも上回っており、装置産業型のパーク・放送資産を持たない「身軽さ」がROEの差に表れている。
ROIC=NOPAT(GAAP営業利益133.27億ドル×(1−実効税率13.69%)≒115.0億ドル)÷投下資本(株主資本266.15億ドル+有利子負債144.63億ドル−現金及び短期投資90.6億ドル=320.2億ドル)≒35.9%。推定WACC(β1.53から筆者概算11.5%)を24ポイント以上上回り、ディズニー(ROIC8.7%前後)と比べても資本効率は明確に高い。有利子負債が小さく資産が身軽な分、投じた資本に対するリターンが厚い。
NetflixはUS-GAAP採用。コンテンツ資産の会計処理が最大の論点。
映画・パーク・ESPNを持つディズニー、ケーブル・映画スタジオを持つComcast、ストリーミング再編中のワーナー・ブラザース・ディスカバリーと比較(2026/9/4終値時点)。
PERはNetflix(24.65倍)がディズニー(21.77倍)・Comcast(8.57倍)より高く、成長期待の高さを織り込んだ株価と言える。純利益率はNetflix(28.2%)がディズニー(8.7%)・Comcast(9.0%)を大きく上回り、WBD(▲8.8%)は赤字。PBRもNetflix(10.81倍)が突出しており、身軽な資産構成と高い資本効率を市場が高く評価している構図が見える。
収益性の変曲点は越えたが、次の焦点は広告事業の実質的な規模拡大とUCAN成長鈍化の下支え。
2026年通期で約30億ドルへの倍増計画を実際に達成できるかが、次の成長ドライバーとして最重要。米国アップフロント商談の着地が焦点。
価格改定効果が一巡する中、北米の売上成長率10%をどこまで維持できるかが全社成長率を左右する。
無配のまま自社株買いに一極集中する現在の方針が、長期保有の配当志向investorの拡大につながるかは論点。
会員数開示の廃止で外部からの成長要因分解が難しくなった分、地域別売上・広告収入の開示粒度を維持できるかが投資家との対話上の課題。
「収益性の変曲点」は越えたが、PERはすでに同業より割高。次の焦点は広告事業の実行力とUCAN成長鈍化の下支え、というのが本レポートの総括。