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🕒 最終更新: 2026-09-11

マクドナルド MCD

NYSEUS-GAAP12月末決算 世界最大級の外食チェーン・実態は不動産業データ基準日 2026/9/11

世界113市場・45,356店舗を展開する世界最大の外食チェーン。だが本社収益の61.6%はハンバーガーの売上ではなく、フランチャイジーから受け取る賃料+ロイヤリティであり、有形固定資産49,290百万ドルの93.1%を土地・建物が占める。数十年の自社株買いで利益剰余金702.8億ドルを自己株式793.2億ドルが上回り、株主資本は▲17.9億ドル(債務超過)——それでも投資適格格付・51年連続増配という優等生の顔も持つ、矛盾に満ちた企業。

💡 はじめての方へ:「ハンバーガー屋さん」だと思って決算書を開くと面食らいます。店舗の95%は個人オーナー(フランチャイジー)が運営していて、マクドナルド本社はその土地と建物を持ち、オーナーから家賃とロイヤリティを受け取る——いわば「世界最大級の大家さん」です。本ページはこの二層構造を数字で解剖します。

01企業カルテ

FY2025通期実績(2025年12月期・2026-02-11発表、10-Kは2026-02-24提出)と直近四半期(2026年度第2四半期・2026-08-04発表)・市場評価。

システムワイド売上(非GAAP)
1,393.65億ドル
前年比+7%
総収益(FY2025)
268.85億ドル
+4%
営業利益
123.93億ドル
+6%(利益率46.1%)
純利益
85.63億ドル
+4%・EPS $11.95
店舗フランチャイズ比率
95%
45,356店舗中、直営(McOpCo)は約5%のみ
株主資本(欠損)
▲17.91億ドル
前年▲37.97億ドルから欠損幅は縮小
時価総額
1,790.40億ドル
株価$253.03(26/9時点)
PER(実績TTM)
20.6
TTM EPS $12.31・配当利回り2.94%
成長性
既存店売上はFY2025+3.1%と底堅いが、Q2FY26の米国既存店は+0.8%まで減速し「米国を立て直す」ための社長交代が発表された
収益性
営業利益率46.1%はフランチャイズマージン率84.2%が牽引。直営(McOpCo)マージン14.7%の5.7倍という圧倒的な差
×
財務健全性
株主資本は5年連続でマイナス(債務超過)。ただしS&P「BBB+」・Moody's「Baa1」の投資適格格付を維持しており、資産の毀損ではなく自社株買いの累積が原因
株主還元
51年連続増配(年間配当$7.44)+自社株買い。FY2025は配当・自社株買い合計で71.71億ドルを株主に還元
バリュエーション
PER20.6倍はYum!Brands(18.3倍)より高くStarbucks(57.5倍)より割安。52週で株価▲18.95%と軟調

※5軸評価は本レポート筆者の見解であり、投資勧誘ではありません。

💡 読み方:「営業利益率46%・フランチャイズマージン84%」という高収益企業でありながら「株主資本マイナス」という一見矛盾した姿。これは経営不振ではなく、稼いだ現金を配当と自社株買いで株主に還元し続けた結果です。次章のビジネスモデル図解で、その仕組みを分解します。

02ビジネスモデル図解 — 「世界最大級の不動産業」の正体

モノ()・カネ()・情報()の流れで見る、マクドナルドの稼ぎ方。

カネの流れ モノ・サービスの流れ 情報の流れ
起点1955年、レイ・クロックがマクドナルド兄弟からフランチャイズ権を取得。設計段階から「土地・建物は本社が保有し加盟店から賃料を取る」不動産事業の性格を組み込んだ
定説マクドナルドはハンバーガーなどファストフードを売る外食チェーンで、収益は商品の売上で決まる
逆説世界の店舗の95%はフランチャイジーが運営する「看板を借りた個人事業主の店」であり、本社収益の61.6%(165.48億ドル)は商品の売上ではなく、フランチャイジーから受け取る賃料+ロイヤリティ+加盟金というフランチャイズ収益。会社が「Conventional franchise」(全体の約50%)と呼ぶ契約では、本社が土地・建物を保有し20年間の使用権を加盟店に与える代わりに、売上の一定割合+最低保証額の賃料と売上ロイヤリティを徴収する。有形固定資産493億ドルの93.1%(459億ドル)を土地・建物が占めることが、この「不動産業としての顔」の数字的な裏付けである

フランチャイズには4形態あり、収益構造がそれぞれ異なる:①Conventional License(店舗の約50%・本社が不動産を保有、賃料+ロイヤリティ)、②Developmental License(約20%・ライセンシーが全資本を負担、ロイヤリティのみ)、③Foreign-Affiliated(約25%・ロイヤリティ+持分法利益)、④McOpCo直営(約5%・本社が全利益を得るが投資負担も全額本社)。この結果、フランチャイズ収益のマージン率は84.2%に達し、直営店マージン14.7%の5.7倍にのぼる。

💡 やさしく:マクドナルドを「大家さん」に例えると分かりやすくなります。加盟店オーナーは店舗を「借りて」商売をし、本社に家賃(賃料)と「儲けの一部(ロイヤリティ)」を払う。本社は掃除も接客もしなくていいのに、家賃収入だけで84%もの利益率が出る——これが世界一のファストフードチェーンが同時に「世界最大級の不動産業」と呼ばれる理由です。

03成長の歩み — 増収増益の裏で深まった(そして今縮み始めた)債務超過

売上はFY2021の232.23億ドルからFY2025の268.85億ドルへ拡大し、営業利益率も44.6%→46.1%へ改善。一方、株主資本は5年間ずっとマイナス(債務超過)だが、直近2年で欠損幅は縮小に転じている。

総収益・営業利益の推移(FY2021〜FY2025)

単位:億ドル ■濃い棒=直近期

営業利益率の推移

単位:%。FY2022はロシア事業売却の一時費用で落ち込み

FY2022の40.4%は5年で最も低い水準。ロシア事業売却に伴う一時費用(Other operating expense, net 9.74億ドル、対売上4.2%)が主因で、事業の実力悪化ではない。FY2023以降は45%台後半まで回復し、FY2025は46.1%と5年で最高を更新した。

株主資本(欠損)の推移 — 5年連続マイナスも欠損幅は縮小

単位:億ドル。マイナス=債務超過

FY2022末の▲60.03億ドルを底に、FY2025末は▲17.91億ドルまで欠損幅が縮小。稼いだ利益剰余金(702.82億ドル)の積み上げが、自社株買いによる自己株式(793.16億ドル)の増加ペースを上回るようになったため。詳しくは次節で扱う。

04今期の焦点 — なぜ「世界最大級の不動産業」なのか

有形固定資産の9割以上が土地・建物、フランチャイズマージンは直営の5.7倍、そして数十年の自社株買いが生んだ株主資本マイナス——3つの数字でマクドナルドの「本業」を解剖する。

有形固定資産の中身(FY2025末・取得原価ベース)

合計492.90億ドルのうち93.1%が土地・建物

土地81.69億ドル+自社所有地上の建物222.02億ドル+借地上の建物155.06億ドルの合計458.77億ドルが、有形固定資産492.90億ドルの93.1%を占める。設備什器はわずか6.0%(29.54億ドル)。フランチャイズ契約では「本社が土地・建物を保有し、加盟店が設備・内装に投資する」という役割分担になっており、このBS構成そのものが不動産業としての性格を裏付けている。

フランチャイズ vs 直営(McOpCo)のマージン格差

単位:%。FY2025実績

フランチャイズ収益165.48億ドルからフランチャイズ occupancy費用(賃料相当の原価)26.18億ドルを引いたマージン率は84.2%。対して直営店は売上96.90億ドルから人件費・食材費・光熱費等の直営費用を引くとマージン率はわずか14.7%——ハンバーガーそのものを焼いて売るより、土地を貸して賃料とロイヤリティを受け取る方が5.7倍儲かるという、フランチャイズモデルの経済性を端的に示す数字。

💡 やさしく:直営店は食材費・人件費・光熱費がかかるので利益率は普通の飲食店並み(14.7%)。一方フランチャイズ店からの収益は、かかる費用が「土地・建物の減価償却+維持費」程度なので利益率が84%まで跳ね上がります。「加盟店を増やすほど本社は儲かる」構造がここにあります。

株主資本マイナスの正体 — 利益剰余金 vs 自己株式

単位:億ドル。FY2025末

FY2025末の利益剰余金は702.82億ドルと過去最高を更新し続けている。しかし数十年にわたる自社株買いの累積で自己株式(取得原価)は793.16億ドルに達し、利益剰余金を上回っている。その他項目(資本金・追加払込資本・その他包括利益累計額等)を合わせても、株主資本合計は▲17.91億ドル(債務超過)となる。これは「稼げていない」からではなく「稼いだ以上に株主に返した」ことの帰結であり、投資適格格付(S&P:BBB+、Moody's:Baa1)は維持されている。

05セグメント別動向 — 米国・IOM・IDLの三本柱と米国の減速

米国、国際直営市場(IOM)、国際ライセンス市場&コーポレート(IDL&Corp)の3セグメントで構成。FY2025はIOMが牽引した一方、直近四半期は米国の既存店売上が急減速している。

セグメント別売上・営業利益(FY2025)

単位:億ドル(Other収益6.47億ドルを除く区分売上ベース)

セグメント別店舗数・フランチャイズ比率(FY2025末)

合計45,356店舗

IDL&Corpセグメントは店舗数で全体の45.9%を占めるが、営業利益の1.6%(2.03億ドル)しか生んでいない。ライセンシーが資本を負担する分ロイヤリティ収益は薄く、韓国事業売却・イスラエル事業買収の一時費用も重なった。米国は店舗数30.2%で営業利益の46.9%を稼ぐ、最も収益効率の高いセグメント。

米国既存店売上の四半期推移 — 急減速と社長交代

単位:%。前年同期比

2025年通期は+2.1%だったが、四半期で見るとQ1'26の+3.9%からQ2'26は+0.8%へ急減速。2026年8月4日、会社はSkye Anderson氏を米国事業の新社長に任命し「米国で結果を出す緊急性を高める」とコメントした。同四半期の連結EPSは$3.32(前年$3.14から増加)。IOM(+1.5%)・IDL(+1.9%)は底堅く、減速は米国特有の現象。

💡 やさしく:セグメント別に見ると「稼ぎ頭」が見えてきます。店舗数は少ないのに一番儲けているのが米国、店舗数は一番多いのに儲けが薄いのがIDL(開発ライセンス市場)。そして今、稼ぎ頭の米国で客足が鈍り始めているのが、このページを書いている2026年9月時点で最もホットな論点です。

06財務3表ビジュアル

フランチャイズマージンの厚さが営業利益率46.1%を支える一方、BSは自社株買いの累積で株主資本がマイナスという特殊な形をしている。

PL滝グラフ — 総収益268.85億ドルはどこへ消えるか(FY2025)

単位:億ドル
💡 やさしく:268.85億ドルの収益から、店舗運営費・販管費など計144.92億ドルを引いた本業のもうけ(営業利益)が123.93億ドル(46.1%)。そこから支払利息15.82億ドルなどを引いた最終利益は85.63億ドルです。

BS — 総資産595.15億ドル vs 負債613.07億ドル(FY2025末)

株主資本(欠損)は▲17.91億ドル

総資産595.15億ドルに対し負債合計は613.07億ドルと資産を上回り、差額の▲17.91億ドルが株主資本(欠損)。使用権資産146.06億ドル・純有形固定資産282.41億ドルを合わせた「不動産・リース関連資産」が総資産の72%を占める一方、長期債務399.73億ドル+長期リース負債141.47億ドルが負債の大半を構成する。

キャッシュフロー(FY2025)

単位:億ドル。営業CF105.51億ドル

投資CFのマイナスは主に設備投資33.65億ドル(新規出店中心)。財務CFは自社株買い20.56億ドル・配当51.15億ドルの株主還元が中心。FCFは71.86億ドル(営業CF105.51億−設備投資33.65億)で、前年比8%増。

07収益性 — ROEは「算出不能」、だからこそROICで見る

株主資本がマイナスのためROE(純利益÷自己資本)は分母がマイナスとなり意味をなさない。そこでROIC(投下資本利益率)を軸に収益力を見る。

なぜROEを掲載しないか

FY2025末の株主資本は▲17.91億ドル。仮に純利益85.63億ドルをこの数字で割ると「ROE▲478%」という無意味な数値が出てしまう(マイナスの分母で割ると符号が反転し、あたかも大赤字のように見える)。本サイトは実態と異なる誤解を避けるため、株主資本がマイナスの年度はROEを掲載しない方針を取る。これはApple・Visaのような「自社株買いでROEを意図的に高く見せる」ケースとも異なり、マクドナルドは分母そのものがマイナスに転じている点でさらに極端な例である。

ROIC(筆者試算) vs WACC(筆者試算)

単位:%

ROIC=NOPAT(営業利益123.93億ドル×(1−実効税率21.4%)=97.41億ドル)÷投下資本平均(長期債務+株主資本の期末平均364.05億ドル)=26.76%(筆者試算)。WACCは無リスク金利4.2%+β0.41(stockanalysis.com公表の5年ベータ、防御的な低ベータ銘柄)×株式リスクプレミアム5.0%=株主資本コスト6.25%、税引後負債コスト3.17%を時価ベースの資本構成(株式81.8%・負債18.3%)で加重平均した5.69%(筆者試算)。ROIC26.76%はWACC5.69%を大きく上回るが、β0.41は飲食セクター一般(0.6〜0.9程度)より低めであり、保守的なβを使えばWACCはより高くなる点に留意。なお、stockanalysis.com公表のROIC(17.80%、投下資本にリース負債等を含む異なる定義)も参考値として付記する。

💡 やさしく:ROICがWACCを上回っている=「事業に投じたお金が生み出す利益」が「そのお金を調達するコスト」を上回っている状態で、価値を生み出せていることを意味します。マクドナルドは自己資本という「モノサシ」が壊れていても、投下資本ベースで見れば依然として高収益企業であることが分かります。

08会計基準ビュー — US-GAAP / JGAAP / IFRS

マクドナルドはUS-GAAP採用。「株主資本がマイナスでも投資適格」という米国流の資本政策と、フランチャイズ収益の認識方法が日本基準の感覚との大きな相違点。

GAAP vs 調整後(Non-GAAP)営業利益 — 一時費用の扱い(FY2025)

単位:億ドル
  • 「経常利益」区分はなく、営業利益の下は支払利息・営業外損益の純額のみ。営業利益率46.1%と税引前利益率40.5%(10,897÷26,885)の差は主に支払利息15.82億ドルの負担
  • Accelerating the Organization(組織再編)に伴う再編費用2.29億ドルを除いた「調整後EPS」を非GAAP指標として開示。EPS $11.95(GAAP)→$12.20(調整後)
  • フランチャイズ収益(賃料+ロイヤリティ)は「売上の一定割合+最低保証額」を按分計上するASC606(収益認識基準)に基づき、賃料は定額法、ロイヤリティは売上発生時点で認識される
  • JGAAP感覚で最も驚くのは株主資本比率がマイナス(債務超過)という状態が5年以上続いていること。日本では上場廃止基準に抵触しうる水準だが、米国では自社株買いによる株主還元の結果として市場から問題視されない
  • 「経常利益」に相当する段階はないため、日本の外食チェーン(すかいらーく等)と比べる際は営業利益か税引前利益で揃える必要がある
  • フランチャイズ契約が20年更新制で、本社が土地・建物を保有し続ける点は、日本のフランチャイズ(多くは加盟店が物件を用意)と収益構造が根本的に異なる
  • リース会計(ASC842とIFRS16)は資産計上の考え方が近く、使用権資産146.06億ドルの扱いに大きな読み替えは不要
  • 収益認識(ASC606)もIFRS15と収斂済みで、フランチャイズ収益(賃料+ロイヤリティ)の計上時点に大きな差は生じない
  • のれんの非償却・減損テストという点はIFRSもUS-GAAPと同じ。マクドナルドはのれんの規模自体が小さく、この差異の影響は限定的
💡 やさしく:日本の感覚では「株主資本マイナス」は経営危機のサインですが、米国では「稼いだお金を全部株主に返した結果」として市場から評価されることもあります。マクドナルドは資産(土地・建物)を潤沢に持ちながら株主資本がマイナスという、日本の会計常識では説明しづらい姿の代表例です。

09同業比較 — フランチャイズ比率と収益性の関係

同じく高フランチャイズ比率のYum!Brands(KFC・タコベル等)・Restaurant Brands International(バーガーキング等)、対照的に直営中心のStarbucksと比較(2026年9月時点)。

直営中心のStarbucksの営業利益率は10.4%と、マクドナルドの46.1%の4分の1以下——フランチャイズ比率の違いがそのまま収益性の差に表れている。Yum!Brands・マクドナルドはともに自己資本がマイナス圏でROE算出不能(表では「非開示」扱い)な一方、Restaurant Brands Internationalのみ正の自己資本を維持しROE34.79%を開示。PERはStarbucks(57.5倍、業績低迷による一時的高PER)が突出して高く、マクドナルド(20.6倍)とYum!Brands(18.3倍)は近い水準。

💡 やさしく:Yum!Brandsは「フランチャイズの兄弟分」、Restaurant Brands Internationalも同じ仲間、Starbucksだけ「直営中心」という毛色の違う存在。フランチャイズ比率が高い会社ほど営業利益率が高くなる傾向が、この4社の比較から見えてきます。

10戦略・課題と改善ポイント

高収益なフランチャイズモデルは健在だが、米国既存店の急減速と債務超過という「見た目のリスク」への対応が当面の論点。

強み Strengths

  • フランチャイズマージン84.2%(直営の5.7倍)を生む、土地・建物保有型のビジネスモデル
  • 113市場・45,356店舗という圧倒的な規模と、Loyaltyプログラム90日アクティブ会員約2.2億人という顧客基盤
  • 51年連続増配、投資適格格付(S&P BBB+・Moody's Baa1)を維持する財務規律
  • ROIC26.76%(筆者試算)はWACC5.69%(筆者試算)を大きく上回り、資本効率は極めて高水準

弱み Weaknesses

  • 株主資本が5年連続でマイナス(債務超過)。財務レバレッジが極めて高く、金利上昇局面での利払い負担増に敏感
  • IDL&Corpセグメントは店舗数で45.9%を占めながら営業利益寄与はわずか1.6%と、収益効率にセグメント間で大きな差
  • フランチャイズ収益の「賃料」と「ロイヤリティ」の金額別内訳を会社が開示しておらず、収益構造の透明性は限定的

機会 Opportunities

  • ロイヤリティ会員基盤(90日アクティブ約2.2億人)を活用したデジタル・デリバリー収益の拡大余地
  • 2027年末までに世界50,000店舗を目指す出店加速(2026年は約2,600店の新規出店を計画)
  • IOM・IDLセグメントの既存店売上(それぞれ+1.5%・+1.9%、Q2FY26)は底堅く、米国以外での成長余地

脅威 Threats

  • 米国既存店売上がQ1FY26の+3.9%からQ2FY26は+0.8%へ急減速し、客数の弱さが顕在化
  • China・韓国など一部国際市場での競争激化・地政学リスク(過去には韓国事業を売却)
  • 金利上昇が続けば、長期債務399.73億ドル+長期リース負債141.47億ドルの利払い負担がさらに増加
  • バリューメニュー競争の激化による客単価・利益率への下押し圧力

改善ポイント(優先度つき)

最優先

米国既存店売上の立て直し

Skye Anderson新社長の下、客数減少(既存店伸びの鈍化)にどう対処するかが最大の論点。2026年後半の四半期決算で回復の兆しが出るかを注視。

最優先

IDLセグメントの収益効率改善

店舗数の46%を占めながら営業利益寄与が1.6%にとどまる構造をどう改善するか。中国・日本など主要市場のロイヤリティ収益拡大が鍵。

中期

財務レバレッジの管理

債務超過自体は資本政策の結果で緊急性は低いが、金利上昇局面での利払い負担増を注視し、自社株買いペースとのバランスを取る必要がある

中期

フランチャイズ収益の開示充実

賃料とロイヤリティの内訳非開示は投資家の分析を難しくしている。開示充実は競合優位性を損なわない範囲で検討の余地がある。

11投資メリット・デメリット

「フランチャイズモデルの収益性は健在、財務体質の見た目の弱さは資本政策の結果、焦点は米国既存店の回復ペース」というのが本レポートの総括。

▲ 強気材料(メリット)

  • フランチャイズマージン84.2%を生む不動産型ビジネスモデルは依然強固で、営業利益率は46.1%と5年で最高
  • ROIC26.76%(筆者試算)はWACC5.69%(筆者試算)を大幅に上回り、資本効率は極めて高い
  • 51年連続増配、投資適格格付を維持する財務規律。IOM・IDLの既存店売上は底堅い
  • PER20.6倍はYum!Brands(18.3倍)に近く、Starbucks(57.5倍)よりは割安
  • 2027年末までに世界50,000店舗を目指す出店加速計画

▼ 弱気材料(デメリット)

  • 米国既存店売上がQ2FY26に+0.8%まで急減速し、社長交代に至るほどの課題認識
  • 株主資本が5年連続でマイナス(債務超過)。財務レバレッジは極めて高い
  • IDL&Corpセグメントの収益効率が低く、店舗数の伸びが利益に直結しにくい構造
  • 52週で株価は▲18.95%と軟調で、市場は既存店減速を織り込みつつある
  • フランチャイズ収益の賃料・ロイヤリティ内訳が非開示で、収益構造の透明性に限界

3つのシナリオ(筆者試算)

強気シナリオ米国既存店が回復しIOM/IDLも堅調継続でEPS $13.50×PER24倍=$324水準
中立シナリオ会社ガイダンス(営業利益率mid-to-high 40%台・実効税率21〜23%)に沿った緩やかな増益でEPS $12.60×PER20倍=$252前後(現値近辺)
弱気シナリオ米国既存店の減速が長期化しIDLも伸び悩みEPS $11.80×PER17倍=$201前後
💡 はじめての方への総括:チェックポイントは3つ。①米国既存店売上(Skye Anderson新体制で+0.8%からの反転があるか)、②フランチャイズマージンの持続性(84.2%という高収益率が維持できるか)、③財務レバレッジ(債務超過は資本政策の結果だが、金利上昇局面での耐性)。「ハンバーガー屋の皮を被った不動産業」という本質を理解した上で数字を追うことが、このページの主題です。