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ウォルト・ディズニー・カンパニー DIS

NYSEUS-GAAP9月決算(9月最終土曜日) 複合エンタメ(映画・配信・スポーツ中継・テーマパーク)データ基準日 2026/7/24

映画・Disney+配信(Entertainment)、ESPN(Sports)、世界のテーマパーク(Experiences)の3セグメントを持つ、売上944億ドル(約15.5兆円)の複合エンタメ企業。長年赤字だった配信事業がFY2024に小幅黒字化した後、FY2025は営業利益13.3億ドルへ急拡大し、直近四半期はSVOD(Disney+/Hulu)が初の2桁営業利益率を記録。ただし実際に稼いでいるのは映画ではなくパークに来た人の消費(Experiencesが全社セグメント利益の57%)という構造。

💡 はじめての方へ:「夢の国」の会社というイメージが強いですが、今のディズニーは①映画・配信、②ESPNのスポーツ中継、③世界のテーマパーク——という3つの事業を持つ複合企業です。長年お荷物だった配信事業(Disney+)がついに黒字になった一方、会社全体の利益の半分以上は実はテーマパーク事業が稼いでいます。「映画会社」というより「パーク運営会社が本業で、映画とスポーツ中継も持っている会社」に近いイメージです。

01企業カルテ

FY2025通期実績(2025年9月27日期・2025/11/13開示、SEC 10-K確定値)と直近四半期(FY2026 Q2・2026/5/6発表)・市場評価。

売上高(FY2025)
944億ドル
+3.4%・約15.5兆円(163.8円換算)
Total Segment営業利益
176億ドル
+12.5%(会社の主要業績指標)
純利益(Disney帰属)
124億ドル
EPS $6.85(Adjusted EPSは$5.93・+19%)
配信事業(DTC)営業利益
13.3億ドル
前期1.4億ドルから急拡大・黒字定着
Experiencesセグメント利益
100億ドル
全社セグメント利益の57%を占める稼ぎ頭
時価総額
1,647億ドル
約27.0兆円・株価$94.85(26/7/24)
PER(実績TTM)
15.2
予想12.8倍・52週高値から▲23%
FY2026自社株買い目標
80億ドル〜
約1.3兆円。従来目標70億ドルから増額
成長性
FY25売上+3.4%からH1 FY26は+6%へ再加速。ストリーミング黒字化が牽引
収益性
GAAP営業利益率13.78%は過去最高。ただしROIC8.7%はWACC7.5%をわずかに上回る水準(後述)
財務健全性
自己資本比率55.6%、有利子負債420億ドルは投資適格級。無理のない財務
株主還元
自社株買い目標を70→80億ドルに増額。配当利回りは1.58%と控えめ
バリュエーション
PER15.2倍・予想12.8倍はNetflix(22.1倍)より大幅に割安。52週高値から▲23%の調整局面

※5軸評価は本レポート筆者の見解であり、投資勧誘ではありません。円換算は1ドル=163.80円(2026/7/24)。

💡 読み方:純利益が前期比+150%と大きく見えますが、これはFY2025に一時的な税務便益(過年度の税務案件解決による約14億ドルの税負担マイナス)が乗った影響が大きく、実力を示すのは会社発表のAdjusted EPS $5.93(+19%)の方です。「配信事業の黒字化」と「パーク事業が利益の主役」という2つの構造変化が今のディズニーの本質です。

02ビジネスモデル図解

モノ()・カネ()・情報()の流れで見る、ディズニーの稼ぎ方。

カネの流れ モノ・サービスの流れ 情報の流れ
起点ミッキーマウス以来のキャラクターIP群(マーベル・スター・ウォーズ・ピクサー等)
定説映画をヒットさせることが稼ぎの本体——興行収入を最大化するのが仕事
逆説映画はもはや「IPの広告塔」。本当の利益はパーク来園者の消費(Experiencesが全社セグメント利益の57%)と、黒字化した配信の継続課金が生む

ディズニーはEntertainment(映画・配信・放送)/Sports(ESPN)/Experiences(パーク・グッズ・クルーズ)の3セグメント制。映画・テレビで生まれたキャラクターIPを、自社パーク・グッズ・配信・ESPNへ横展開して何度も回収する「IPフライホイール」が本質。日本の東京ディズニーリゾートは自社運営ではなく、オリエンタルランド(OLC)へのライセンス供与(入園料収入の10%・物販等収入の5%)という別建ての収益源で、金額は開示されていないが報道値ベースで年間300〜400億円規模(筆者推定)=ディズニー本体の連結売上の約0.2〜0.3%にすぎない——任天堂の映画・USJライセンス収入が売上の3.2%にとどまるのと同様、話題性の高さと金額の大きさは一致しない。

💡 やさしく:ディズニーの稼ぎ方は「映画を当てる」ことではなく「一度作ったキャラクターを何度も売る」ことです。マーベルの映画が公開されれば、パークにアトラクションができ、グッズが売られ、Disney+で配信され、ESPNでもキャラクターとコラボします。1つのIPを何度も現金化する仕組みが、単発映画の興行収入よりもずっと大きな利益を生んでいます。

03成長の歩み — コロナ禍の谷から最高益へ

FY2020はコロナ禍でパーク閉鎖・映画公開延期により売上が急減。そこから5年でストリーミング黒字化を伴う増収増益局面に入った。

売上高の推移(FY2019〜FY2025)

単位:億ドル ■濃い棒=直近期

GAAP営業利益率の推移(FY2021〜FY2025)

売上−費用−リストラ・減損費用ベース

純利益(Disney帰属)の推移(FY2021〜FY2025)

単位:億ドル

FY2025は一時的な税務便益(前年度税務案件の決着)により押し上げられている点に注意。詳細は⑧会計基準ビューで解説。

04今期の焦点 — ストリーミング黒字化と3セグメント構造の転換

「配信は赤字」という何年も続いたディズニーの弱点が、FY2025でついに解消。一方でH1 FY2026の最新データは、稼ぎ頭がパークへさらにシフトしている実態を示す。

ストリーミング事業の損益推移(FY2022〜FY2025・億ドル)

FY22-23は旧区分「combined DTC streaming businesses」(Entertainment DTC+ESPN+)、FY24-25は新区分「Entertainmentセグメント単独DTC」

区分変更(FY2024にESPN+をSports側の指標へ切り出し)のため単純な連続比較ではないが、いずれも会社発表の実額。FY2022の年間40.1億ドルの赤字から、FY2025は13.3億ドルの黒字へ——「配信は儲からない」という業界の定説をディズニーは覆しつつある。さらに直近のQ2 FY2026では、Disney+・Hulu(SVOD)単体の営業利益率が初めて2桁(10.6%)に到達した($582百万÷$5,486百万、前年同期$310百万から+88%)。

💡 やさしく:Netflixが何年もかけて黒字化したのと同じ道を、ディズニーも遅れて歩んでいます。値上げ・広告付きプラン・コンテンツの選別(不採算作品の削減)を組み合わせ、赤字を掘り続ける「シェア争い」から「利益を出す」段階へようやく転換しました。

セグメント別 売上(FY2024→FY2025・億ドル)

3セグメントとも増収だが、伸び率はExperiencesが最も安定

セグメント別 営業利益率(FY2025)

Experiencesの利益率がEntertainmentの2.5倍

Entertainment(映画・配信・放送)は11.0%、Sports(ESPN)は16.3%、Experiences(パーク・グッズ・クルーズ)は27.6%。「エンタメ企業」という名前とは裏腹に、利益率で見ると装置産業のExperiencesが圧倒的に稼ぐ体質。

直近半期(H1 FY2026 vs H1 FY2025)セグメント別営業利益の前年比

2026年3月28日までの6ヶ月間・前年同期比

全社売上は+6%と好調な一方、Total Segment営業利益は▲3%と減益。原因はEntertainment(▲18%)とSports(▲10%、放映権料の増加)で、Experiences(+6%)だけが増益を維持している。「配信は黒字化したが、Entertainment全体としては映画興行の不振や放送の構造減が重い」という、単純な『ストリーミング黒字化=全社好転』ではない複雑さが直近の実態。

💡 やさしく:配信(Disney+)は黒字化しましたが、Entertainmentセグメント全体で見ると、テレビ放送の衰退や映画興行の波が足を引っ張っています。「ひとつの成功(配信黒字化)が全部を解決するわけではない」という、大企業の複雑さがよく表れている数字です。

053セグメント詳解 — Entertainment・Sports・Experiencesの中身

連結売上944億ドルの内訳と、各セグメント内部の構成を見る。

セグメント別売上構成(FY2025)

連結売上高944億ドルの内訳(セグメント間取引消去前の3セグメント合計)

Entertainmentセグメントの内訳(FY2025・億ドル)

Linear Networks(衰退)/DTC配信(急拡大)/コンテンツ販売・ライセンス

DTC配信は246億ドルとEntertainment売上の58%を占め、Linear Networks(94億ドル・▲12%)を大きく上回った。営業利益でもDTCが13.3億ドルとLinear Networksの29.6億ドルに次ぐ規模へ急拡大している。

Experiencesセグメントの内訳(FY2025・億ドル)

国内パーク/海外パーク/消費財(グッズ等)

国内(米国)パークが売上252億ドル・営業利益64億ドルと圧倒的な柱。海外パーク(パリ・上海・香港等の直営分)は65億ドル、消費財(キャラクターグッズのライセンス含む)は44億ドルだが利益率は49%と全事業中で最も高い。

💡 やさしく:「ディズニー=映画会社」のイメージとは裏腹に、稼ぎの実態は①動画配信(伸びているがまだ利益率は薄い)②スポーツ中継(ESPN、放映権コストが重い)③パーク・グッズ(利益率が最も高い)の3本柱です。中でもグッズ・消費財ビジネスは「作る工場も店舗もディズニーが直接持たなくてもライセンス収入だけで儲かる」高収益事業です。

06財務3表ビジュアル

大型投資(パーク拡張・クルーズ船)を続けながら、フリーキャッシュフローは100億ドル規模を確保。

PL滝グラフ — 売上944億ドルはどこへ消えるか(FY2025)

単位:億ドル
💡 やさしく:944億ドル売って、コンテンツ制作費・パーク運営費・人件費などで806億ドル、リストラ・減損で8億ドルを使い、本業のもうけは130億ドル(利益率13.8%)。日本円で約2.1兆円——オリエンタルランドの営業利益(1,675億円)の12.7倍の規模です。

BS比例図 — 総資産1,975億ドルの中身(FY2025末)

箱の高さ=金額。自己資本比率55.6%(Disney株主帰属ベース)

総資産の37%(733億ドル)が過去の買収(21世紀フォックス・Hulu等)によるのれん。負債は主に有利子負債420億ドルで、投資適格級の範囲内に収まる。

キャッシュフロー(FY2025)

単位:億ドル。営業CF181億ドル

パーク・リゾート投資(80億ドル)を差し引いたFCF101億ドル(会社発表の非GAAP定義そのまま)。自社株買い35億ドル+配当18億ドルで株主還元に充当し、なお手元に余力を残す。

07収益性 — ROE11.3%を分解する

ROE11.3%をデュポン分解で見る。装置産業ゆえ回転率が低く、レバレッジで補う構造。

ROE(FY2025)
11.3%
13.1%
売上高純利益率
一時的な税務便益で押し上げ(実質は8〜9%程度)
× 0.48回
総資産回転率
パーク・のれん等の巨大資産が重石(実力)
× 1.80倍
財務レバレッジ
総資産1,975億ドル÷株主資本1,099億ドル

FY2025期末残高ベースの筆者概算。オリエンタルランド(ROE11.7%・回転率0.46回)と回転率の水準が近いのは偶然ではなく、両社とも「巨大な固定資産を長期間使い倒す」テーマパーク型ビジネスだから。ただしディズニーは映画・配信・ESPNも抱える分、資産構成はOLCよりずっと複雑。

ROIC vs WACC — 資本コストを上回っているか(筆者試算)

単位:%。概算値

ROIC=NOPAT(Total Segment営業利益176億ドル×(1−実効税率概算25%)≒132億ドル)÷投下資本(株主資本1,099億ドル+有利子負債420億ドル−現金57億ドル=1,509億ドル)≒8.7%。推定WACC(7.5%前後)をわずかに上回るのみで、オリエンタルランド(ROIC14.9%)やApple(ROIC60%超)と比べると資本効率は大きく見劣りする——映画制作費・パーク新設・クルーズ船といった巨額投資を続けなければ成長できない、装置産業+コンテンツ産業のハイブリッドゆえの宿命。

💡 やさしく:ROIC8.7%は「集めたお金で年8.7%稼いでいる」という意味で、資本コスト(7.5%)はギリギリ上回っています。ただしオリエンタルランドの14.9%と比べると見劣りします。理由は単純で、ディズニーは映画・クルーズ船・新パークと「お金を使う場所」がOLCより圧倒的に多いからです。

08会計基準ビュー — US-GAAP / JGAAP / IFRS

ディズニーはUS-GAAP採用。ライセンス先であるオリエンタルランド(JGAAP)と比較する際に押さえるべき違い。

どの「利益」で見るかで印象が変わる(FY2025)

単位:億ドル
  • 「経常利益」区分はなく、営業利益の下は金融損益・持分法損益等のみ。日本株のような多段階の利益区分がないシンプルな構造
詳しく見る:会計基準の技術的差異(US-GAAP)
  • 会社が開示する「Total Segment Operating Income(176億ドル)」はGAAP営業利益(130億ドル)とは別の非GAAP指標。全社共通費・リストラ費用・インドJV持分損失を除外しており、両者の差は46億ドルにのぼる
  • のれん733億ドル(総資産の37%)は非償却・減損テストのみ。21世紀フォックス買収(2019年)由来ののれんが中心で、事業環境が悪化すれば一度に大きな減損が出るリスクがある
  • FY2025は過年度の税務案件の決着により「Income taxes」が費用ではなく14億ドルの便益(マイナスの税負担)として計上され、実効税率が異例のマイナスになっている
  • JGAAP採用のオリエンタルランド(同じ「ディズニー」ブランドのライセンシー)と比べると、経常利益に相当する段階がなく、単純比較には営業利益か税引前利益で揃える必要がある
詳しく見る:会計基準の技術的差異(JGAAP比較)
  • JGAAPののれんは20年以内の規則償却が原則。ディズニーの733億ドルののれんがJGAAP換算だと毎年一定額が費用計上され、営業利益はUS-GAAP開示より小さく出る可能性が高い
  • 研究開発費に相当する「コンテンツ制作費」の会計処理は、US-GAAPでは資産化(Produced and licensed content costs 313億ドル)してから償却する点はJGAAPと大きく変わらないが、償却期間の見積り(初回放映・興行後の減価パターン)に経営判断の余地が大きい
  • OLCがディズニー本体へ支払うロイヤリティ(入園料の10%等)はOLC側ではJGAAPの「販管費」として費用計上される一方、ディズニー側では「Content Sales/Licensing and Other」収益の一部として計上され、両社の決算書は同じ取引を別の科目・別の基準で記録している
  • IFRSとの差異は軽微だが、コンテンツ制作費・リース会計まわりに具体的な差異点がある
詳しく見る:会計基準の技術的差異(IFRS比較)
  • IFRS16のリース会計は使用権資産・リース負債の計上範囲がUS-GAAPのASC842と細部で異なり、劇場チェーンや店舗網を多く抱えるディズニーでは総資産・総負債の見え方が変わり得る
  • 非支配持分(Noncontrolling interests)47億ドルの表示・按分方法はIFRSとUS-GAAPで大枠は共通だが、Star India(JioStar)JVのような持分法適用会社の扱いは細部の判定基準が異なる場合がある
  • のれんの非償却・減損テストという大枠はIFRSもUS-GAAPも共通(日本基準とはここが最大の差)
💡 やさしく:米国株の決算書には日本のような「経常利益」がありません。また、ディズニー自身が最も重視する「Total Segment Operating Income(176億ドル)」は、実はGAAP上の営業利益(130億ドル)そのものではなく、会社が独自に定義した経営管理指標です。決算発表のヘッドラインでどちらの数字が使われているか、注意して読む必要があります。

09同業比較 — ストリーミング王者・複合メディア・IPライセンシーとの3社比較

配信の先輩格Netflix、ケーブル・映画スタジオ(NBCUniversal/Universal Parks)を持つComcast、そしてディズニーIPのライセンシーであるオリエンタルランドと比較(2026/7時点)。

DisneyNetflixComcastオリエンタルランド

PERで見るとディズニー(15.16倍)はNetflix(22.08倍)より割安だが、Comcast(7.22倍)よりは高い。ROEはNetflixが49.54%と突出(身軽なプラットフォーム型ビジネス)、Comcastは11.49%、オリエンタルランドは11.7%とディズニー(11.3%)に近い水準——同じ「ディズニーIP」で稼ぐOLCと、本家ディズニーの資本効率がほぼ並ぶのは興味深い一致。Comcastは配当利回り5.92%と高いが、これはケーブルテレビ事業の構造的縮小を織り込んだ株価(PBR0.88倍と解散価値割れ)の裏返しでもある。

💡 やさしく:Netflixは「配信専業で身軽、利益率も株価評価も高い」優等生。Comcastは「ケーブルテレビが縮む中、映画・パーク(Universal)はあるが株価は割安放置」の苦戦組。ディズニーはその中間で、Netflixほどの資本効率はないもののパーク・ESPNという独自資産で稼ぐ、という3社3様のポジションが見えます。

10戦略・課題と改善ポイント

配信黒字化という宿題は片付いた。次の焦点はESPN直販化・パーク新規投資(アブダビ等)・Entertainment全体の底上げ。

強み Strengths

  • ミッキー以来100年蓄積したIPポートフォリオ(マーベル・スター・ウォーズ・ピクサー等)
  • 配信事業がFY2025に黒字化、SVOD単体は直近四半期で2桁営業利益率を達成
  • Experiencesセグメントの高い営業利益率(27.6%)と安定成長
  • ESPN×NFL提携等、スポーツ中継の独占的コンテンツ力

弱み Weaknesses

  • Linear Networks(地上波・ケーブル)売上が▲12%と構造的に縮小継続
  • ROIC8.7%はWACCをわずかに上回るのみで、Apple・OLC等と比べ資本効率が低い
  • H1 FY2026はEntertainment・Sports両セグメントとも営業利益が前年割れ
  • FY2025純利益は一時的な税務便益で嵩上げされており、実力値はAdjusted EPSで見る必要がある

機会 Opportunities

  • ESPN Unlimited(2025年8月開始のDTC版ESPN)とNFL提携によるスポーツ配信の直販拡大
  • アブダビでの新テーマパーク・日本発の新クルーズ船など、資本負担の軽い提携型拡張モデル
  • 広告付きプラン・値上げによるSVOD ARPU向上余地
  • 消費財(グッズライセンス)の利益率49%を活かしたIP収益化の深掘り

脅威 Threats

  • ケーブル・地上波(Linear Networks)の構造的縮小が止まらない
  • Netflix・YouTube等との配信競争激化によるコンテンツ投資負担
  • ESPNの放映権料上昇(Q3 FY26 Sports営業利益は前年比▲14%を会社自身が予想)
  • 景気減速時の消費者需要(パーク来園・グッズ消費)への影響

改善ポイント(優先度つき)

最優先

Entertainmentセグメント全体の収益改善

配信は黒字化したが、Linear Networksの縮小と映画興行の波動により、Entertainment全体の営業利益はH1 FY2026で▲18%。DTC単体の成功をセグメント全体の成長に転化できるかが焦点。

最優先

ESPN放映権コストの管理

Sports営業利益はH1 FY2026で▲10%、Q3ガイダンスは▲14%。NFL・MLB等の放映権獲得と収益化(ESPN Unlimited)のバランスが課題。

中期

資本効率(ROIC)の改善

ROIC8.7%はWACCをわずかに上回るのみ。パーク新設・クルーズ船といった大型投資の回収スピードを上げられるかが中期の株価評価を左右する。

中期

株主還元のさらなる拡大

自社株買いを70→80億ドルに増額したが、配当利回り1.58%はNetflixの無配は除きComcastの5.92%と比べ見劣りする。フリーキャッシュフロー101億ドルの範囲でどこまで積み増せるか。

11投資メリット・デメリット

「配信黒字化」という長年の宿題は解けた。論点は「Entertainment全体・ESPNの重荷を、Experiencesの稼ぐ力とストリーミング成長がどこまで相殺できるか」に移った、というのが本レポートの総括。

▲ 強気材料(メリット)

  • 配信事業がFY2024の小幅黒字からFY2025は13.3億ドルへ急拡大、SVOD単体は直近四半期で初の2桁営業利益率(10.6%)を記録
  • Experiencesセグメントが営業利益率27.6%・全社利益の57%を安定的に稼ぐ
  • PER15.2倍・予想12.8倍はNetflix(22.1倍)比で明確に割安、52週高値から▲23%の調整局面
  • FY2026会社ガイダンスはAdjusted EPS成長率+12〜16%、自社株買い80億ドル以上と強気
  • ESPN Unlimited・NFL提携などスポーツ配信の新たな収益源が育ちつつある

▼ 弱気材料(デメリット)

  • H1 FY2026はEntertainment(▲18%)・Sports(▲10%)とも営業利益が減益
  • ROIC8.7%はWACC(7.5%)をわずかに上回るのみで、資本効率の改善余地が大きい
  • Linear Networks(地上波・ケーブル)の構造的縮小が続き、下支えできる期間は限られる
  • FY2025純利益は一時的な税務便益で押し上げられており、GAAP EPSをそのまま将来に外挿できない
  • ESPN放映権コストの上昇(Q3 Sports営業利益ガイダンス▲14%)が短期的な重荷

3つのシナリオ(筆者試算・Adjusted EPSベース)

強気シナリオ配信・パーク双方が計画超過でAdjusted EPS $7.20×PER18倍=$130水準(約2.13万円換算)
中立シナリオ会社ガイダンス中心(+14%)でAdjusted EPS $6.76×PER15倍=$101前後(現値$94.85よりやや上)
弱気シナリオEntertainment・Sportsの減益長期化でAdjusted EPS $6.20×PER11倍=$68前後
💡 はじめての方への総括:チェックポイントは3つ。①配信事業の営業利益率(10%目標を通期で維持・向上できるか)、②Entertainment全体とSportsの反転(H1 FY26の減益が続くか)、③Experiencesの成長持続(全社利益の過半を支える屋台骨の強度)。「配信は黒字化した」というニュースだけで判断せず、Total Segment営業利益全体で見ると足元は減益局面にある——という事実を押さえた上で、PERの割安さに賭けるかどうかが判断の分かれ目です。