世界最大級のECサイトと、企業のITインフラを支えるクラウド事業「AWS」を両輪で持つ複合企業。直近12カ月の売上高は7,428億ドル、営業利益率は薄利のEC事業を含めても11.5%まで改善。ただし直近のFCFは巨額のAI関連設備投資でマイナスに転じた。
直近12カ月(TTM・2025年4月〜2026年3月)実績と現在の市場評価。
※5軸評価は本レポート筆者の見解であり、投資勧誘ではありません。円換算は1ドル=162.40円概算。
モノ(緑)・カネ(黄)・情報(青)の流れで見る、Amazonの稼ぎ方。
「自社のために作った仕組みを、他社にも貸し出す」という発想の転換がAmazonの真骨頂。EC事業(北米+国際、Prime会費・広告収益含む)は薄利だが、AWSは企業のITシステムを支えるインフラとして極めて高い利益率を持つ。規模で見ると、EC事業(北米+国際)が売上の82%(5,882億ドル)を占め依然として本体。AWSは売上ではわずか18%(1,287億ドル)だが、営業利益では全社の57%をこの1事業が生み出す——「売上は小さいのに利益は稼ぎ頭」という二階建て構造が数字で明確に確認できる。
2022年はインフレ・コスト高で異例の赤字。そこから3年連続で増収増益・利益率改善が続く。
純利益は+37.7%増益なのに、なぜ自由に使えるお金(FCF)はマイナスになったのか。
TTM営業CF1,485億ドルに対し、設備投資(Capex)が1,510億ドルと上回ったため、FCFは▲25億ドルとなった。AI・クラウド需要拡大に対応するデータセンター投資と、物流網の強化投資が背景にあるとみられる。営業利益・純利益は伸びているため、事業の実力低下ではなく、将来の成長のための先行投資が現在のキャッシュフローを一時的に圧迫している状態。
FY21-22はコロナ特需後の投資拡大で連続マイナス、FY23-24はコスト効率化で+320億ドル台まで黒字化。しかしFY25に+77億ドルへ急減し、TTMでは再びマイナス▲25億ドルへ転落。設備投資がFY23の527億ドルからFY25には1,318億ドルへ2.5倍に急拡大したことが直接の原因で、「一度改善した後に再び投資局面へ入った」という波形が読み取れる。
FY2025通期の3セグメント(北米・国際・AWS)を見ると、「売上を作るEC」と「利益を作るAWS」の役割分担がはっきり分かる。
北米4,263億ドル・国際1,619億ドル・AWS1,287億ドル(合計7,169億ドルは全社実績のFY2025値と完全一致)。売上規模ではECの北米・国際が圧倒的に大きい。
AWSの営業利益率35.4%(営業利益456億ドル)に対し、北米は6.9%・国際は2.9%と薄利。3セグメント合計の営業利益799.75億ドルのうち、AWS単独で57%(456億ドル)を稼ぎ出している——売上シェアはわずか18%のAWSが、利益の過半を支える構図が数字で裏付けられる。
巨大な設備投資と着実な利益成長のバランスを見る。
財務CFは+625億ドルとプラス(社債発行等による資金調達とみられる)。巨額投資を借入で補いながら、AI・物流インフラの拡張を進めている構図。
ROE21.4%(TTM)をデュポン分解で見る。
平均残高ベースの筆者概算。FY22の赤字転落(ROE▲1.9%)から着実に回復し、TTMでは21.4%まで改善している。
ROIC14.24%(TTM)は推定WACC(7〜8%)を明確に上回り、価値創造の状態。FY22の2.99%から着実に改善しており、EC事業の効率化とAWSの拡大が両輪で寄与している。
AmazonはUS-GAAP採用。EC×クラウドの複合企業特有の会計上の論点を見る。
Microsoft(Azure)・NVIDIA等、本サイト掲載の米テック大手と比較。
時価総額2.66兆ドルはApple(4.90兆ドル)・NVIDIA(4.91兆ドル)・Microsoft(2.93兆ドル)と比べるとやや下回るが、EC×クラウドという事業の多角化度では独自の立ち位置にある。
旗印は「地球上で最もお客様を大切にする企業」。課題はAI投資の回収とEC事業のさらなる効率化。
FCFマイナス化の解消には、AWS・AI関連投資の収益化が計画通り進むかが鍵。
薄利体質のEC事業を、自動化・物流効率化でどこまで改善できるか。
国際セグメントの営業利益率は2.9%と北米(6.9%)・AWS(35.4%)に見劣りする。海外展開の収益化ペースが今後の焦点。
「利益成長は着実。論点はAI投資の急拡大がFCFにどこまで影響し続けるか」が本レポートの総括。