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オリックス 8591・東証プライム

東証プライムUS-GAAP3月決算 総合金融・事業投資26年3月期(FY2026.3)通期まで反映

「リース会社」と呼ぶのはもう正確ではない。リースを祖業としつつ、いまの利益の柱は「金融・事業・投資」の3分類で会社や資産を買い、育てて、売るキャピタルリサイクリング。26.3期はインド再エネ大手Greenkoの株式譲渡(売却益831億円)などが押し上げ、当社株主に帰属する当期純利益4,473億円(+27.2%)と3年連続で過去最高益、ROEは10.4%へ改善した。さらに27.3期には祖業に近い「オリックス銀行」すら売却し、税引前で約1,242億円の売却益を計上する見込み——持ち物を固定しない経営がこの会社の正体である。

💡 はじめての方へ:オリックスは1964年にリース(企業が使う機械やコンピュータを、買う代わりに借りられるようにする金融サービス)の会社として生まれました。いまでは生命保険、不動産、発電所、空港の運営、航空機・船舶、海外の資産運用会社まで持つ「何でもやっている会社」です。ただし手当たり次第ではなく、「買って、育てて、高くなったら売り、次に投資する」というサイクルを回し続けているのが特徴。2026年3月期の純利益4,473億円は3年連続の過去最高でした。

2026年3月期(26.3期)通期の確定実績まで反映済み(2026年5月11日発表)。2027年3月期第1四半期決算は2026年8月6日発表予定でまだ公表されていないため、本ページでは未反映。株価・時価総額・同業比較は2026年7月29日終値にもとづく。

01企業カルテ

2026年3月期(26.3期)通期実績(2026/5/11発表)と2026年7月29日時点の市場評価。

営業収益(26.3期)
33,308億円
+15.9%(米国基準のため保険料収入・有価証券売却益等を含む)
当期純利益
4,473億円
+27.2%・3年連続で過去最高益
ROE
10.4%
前期8.8%から+1.6pt。28.3期目標は11.0%
総資産
18.0兆円
前期比+7%。営業貸付金4.2兆・投資有価証券3.3兆など
株主資本比率
24.9%
借入・預金で運用資産を膨らませる金融業型のBS
年間配当
156.10
+30.1%・配当性向39.0%。27.3期予想は187.36円
時価総額
約7.3兆円
株価6,496円(26/7/29終値・IRBank)
PER(予想)
13.5
PBR1.6倍・配当利回り2.4%
成長性
純利益は3年連続過去最高、27.3期も5,300億円(+18.5%)を予想。ただし伸びの中身は資産の売却益・評価益の寄与が大きく、市況に左右されやすい
収益性
ROE10.4%は国内リース系同業(三菱HCキャピタル8.6%・東京センチュリー10.4%)と同等以上。ただし28.3期目標11.0%には未達
財務健全性
「信用格付A格水準を前提とした財務規律」を明言(S&P・Moody's・Fitch・R&I・JCRの5社から格付取得)。株主資本比率24.9%は金融業として標準的な水準
株主還元
配当は「性向39%か前期額のいずれか高い方」=実質減配しない設計。26.3期は配当1,708億円+自社株買い1,500億円で総還元性向72%、27.3期は自社株買い枠を2,500億円へ拡大
バリュエーション
予想PER13.5倍・PBR1.6倍。リース系同業(PBR1.1〜1.19倍)より高く、「入れ替えで稼ぐ力」へのプレミアムが乗る

※5軸評価は本レポート筆者の見解であり、投資勧誘ではありません。1株当たり当期純利益(EPS)は400.27円(基本的)、1株当たり株主資本(BPS)は4,080.24円。時価総額・PER・PBR・配当利回りはIRBank(2026年7月29日終値6,496円)による。オリックスは米国会計基準(US-GAAP)採用のため、「営業収益」には生命保険料収入・有価証券売却評価益なども含まれ、日本基準の「売上高」とは範囲が異なる。

💡 読み方:「営業収益+15.9%」は日本の会社の「売上が16%伸びた」とは少し意味が違います。オリックスの営業収益には保有資産の売却益・評価益や保険料収入も含まれるため、投資がうまくいった年ほど収益も膨らみます。この会社の実力は、売上よりも「純利益とROEを毎年どれだけ積み上げたか」で見るのが正解です。

02ビジネスモデル図解

モノ()・カネ()・情報()の流れで見る、オリックスの稼ぎ方。矢印にカーソルを合わせると実額が出ます。

カネの流れ モノ・サービスの流れ 情報の流れ
起点1964年、商社3社(日綿実業・日商・岩井産業)と銀行5行の出資で「オリエント・リース」として大阪に設立。1970年大証二部上場、1989年に現社名へ変更。リース→生保(1991年)→銀行(1998年)→環境エネルギー(2002年)→空港コンセッション(2016年)と事業を増やし続けてきた
定説リース会社は、モノを買って貸し、リース料と調達金利の差(利ざや)で稼ぐ金融業である
逆説オリックスの利益の柱はもはや利ざやではない。「金融・事業・投資」の3分類で資産や会社ごと買い、ハンズオンで価値を高め、高くなったら売る——26.3期はこのサイクル(キャピタルリサイクリング)を回す「投資」のセグメント利益が3,063億円(前期比+82%)と3分類で最大になった。祖業に近いオリックス銀行すら2026年10月を目途に売却を決めており(売却益約1,242億円見込み)、聖域を持たないポートフォリオ入れ替えそのものが収益エンジンになっている

26.3期の営業収益3兆3,308億円の内訳は、サービス収入1兆1,124億円(33.4%=空港・ホテル運営、資産運用フィー、環境エネルギーなど)、オペレーティング・リース収益6,412億円(19.2%=自動車・航空機・不動産賃貸)、生命保険料収入および運用益6,402億円(19.2%)、商品および不動産売上高4,426億円(13.3%)、金融収益3,656億円(11.0%=貸付金・リースの利息)、有価証券売却・評価損益および受取配当金1,289億円(3.9%)。祖業の「金利で稼ぐ」部分(金融収益)は既に約1割にすぎない。稼いだ利益は次の買収・出資に回り(26.3期は子会社買収に1,290億円)、残りが配当1,708億円+自社株買い1,500億円として株主へ還元される。

💡 やさしく:不動産の「転売」と違うのは、買ってから売るまでの間に自分で経営して価値を上げること。たとえば温泉旅館を買って運営を立て直し、収益力が上がったところで売る——これを空港・発電所・ソフトウェア会社・保険と、あらゆる分野でやっているのがオリックスです。「売却益は一回きりでは?」という疑問への答えが、常に複数の「仕込み中」案件を持ち、毎年どれかを収穫するという回転式の経営です。

03成長の歩み — 純利益は3年連続最高益、ROEは10%台へ

コロナ禍の反動と資産入れ替えの加速で、22.3期から26.3期の5年で営業収益は+32%、純利益は+43%。ROEは23.3期の8.3%を底に10.4%まで切り上がった。

営業収益の推移(22.3期〜26.3期)

単位:億円 ■濃い棒=直近期。3月決算・米国基準

26.3期の+15.9%という高い伸びには、米国子会社のファンド評価益やGreenko株式譲渡に伴う評価益など「投資の成果」が営業収益として計上される米国基準特有の要因が含まれる(有価証券売却・評価損益および受取配当金は前期143億円→1,289億円へ急増)。

当期純利益の推移

単位:億円。当社株主に帰属する当期純利益

23.3期は弥生売却(22.3期)の反動などで一時減益となったが、24.3期以降は3年連続で過去最高益を更新。毎年どこかのセグメントで大型の売却益を実現する「回転」が定着している(22.3期=弥生、24.3期=オリックス・クレジット、26.3期=Greenko)。

ROEの推移 — 28.3期目標11.0%へ

単位:%。株主資本ベース(会社開示)

ROEは23.3期の8.3%を底に10.4%まで改善。会社は3か年計画(26.3期〜28.3期)で「28.3期にROE11.0%」、さらに35.3期の長期ビジョンで「純利益1兆円・ROE15.0%」を掲げる。10%を超えたとはいえ、長期目標との差はまだ大きい。

04今期の焦点 — 「売って、買って、また売る」。銀行すら売るポートフォリオ経営

26.3期の増益+956億円の主役は、Greenko株譲渡で急回復した環境エネルギー(セグメント利益△49億円→1,158億円)。一方でORIX USAはのれん減損で利益がほぼ消えた(399億円→10億円)。そして27.3期はオリックス銀行の売却益約1,242億円(税引前)が「金融」の利益を押し上げる——どこかが凹んでも、入れ替えの収穫で全体を伸ばすのがこの会社の型である。

「金融・事業・投資」3分類のセグメント利益(25.3期→26.3期)

単位:億円。会社の管理会計3分類(税引前)。決算説明資料ベース

投資:1,682→3,063億円(+82%)。Greenkoの売却・評価益950億円を中心に、不動産の大型売却益、東芝などPE投資先の収益が貢献。事業:2,002→2,371億円(+18%)。インバウンド関連(ホテル・旅館・空港)やレンテック、自動車、船舶が好調。金融:1,763→1,892億円(+7%)。保険の運用収益と法人営業の手数料収益が拡大。3分類合計のセグメント利益は5,447→7,326億円(+35%)。

💡 やさしく:オリックスは社内の成績表を「金融(利ざやとフィー)」「事業(モノやサービスの運営)」「投資(買って育てて売る)」の3教科で付けています。26.3期の主役は「投資」——インドの再生可能エネルギー会社Greenkoを約10年かけて育て、持分を売って利益を収穫しました。売った資金は次の投資(AM Greenの転換社債など)にもう回っています。

10セグメント利益の前期比較

単位:億円(税引前・26.3期開示の10セグメント区分)

環境エネルギーは前期の石炭・バイオマス混焼発電所の減損(25.3期)から一転、Greenko売却で△49億円→1,158億円へV字回復。ORIX USAは399億円→10億円(△98%)——のれん・無形資産の減損527億円(全社では574億円)や信用損失費用の増加が直撃した。事業投資・コンセッション(+27%)、保険(+38%)、ORIX Europe(+42%)、アジア・豪州(+49%)と、10セグメント中7つが増益。

27.3期予想 — 銀行売却益で「金融」が主役に

単位:億円。3分類セグメント利益(26.3期実績→27.3期会社予想)

27.3期の会社予想は純利益5,300億円(+18.5%)。3分類では金融が1,892→3,000億円(+59%)と最大の増益要因になるが、その中身はオリックス銀行売却益1,242億円という一回性の利益。投資は2,900億円(△5%)と、Greenko売却益950億円の剥落を国内PE(杉孝)・米国PEの複数Exitや東芝向けLP出資の持分法利益で埋める計画。東芝・キオクシア関連の損益は「確定情報を保有していない」として予想に未反映で、上振れ・下振れ両方の変動要因となる。

オリックス銀行の売却 — 「祖業の隣」まで売る徹底ぶり

2026年4月27日決定・決算短信の重要な後発事象
譲渡先
大和ネクスト銀行
2026年10月までを目途に全持分を譲渡
売却益(税引前・見込み)
約1,242億円
27.3期に計上見込み
売却の理屈
ROE視点の最適化
銀行への配賦資本は約0.25兆円。「金融」分類のROEは8.2%と3分類で最低

1998年に山一信託銀行を買収して参入した銀行業からの撤退。会社は「成長性・資本効率性・信用格付影響」を基準にリサイクリングを判断すると明言しており、ROE8.2%と3分類で最も資本効率が低い「金融」から資本を引き揚げ、「事業」「投資」へ再配分する方針(26.3期は他にもオリックス債権回収、ニッセイ・リース株式も譲渡)。26.3期から始まった3か年計画の2年目として、28.3期ROE11.0%達成への布石である。

💡 やさしく:ふつうの会社にとって銀行を持つことはステータスであり、手放すのは「負け」に見えます。オリックスの発想は逆で、「この資本を銀行に置いておくより、もっと稼げる場所がある」なら売る。持ち物への愛着より資本の効率を優先する——この割り切りこそが、他の金融グループとの最大の違いです。

05財務3表ビジュアル

営業収益3.3兆円の下に持分法利益と売却益が積み上がるPL、借入と預金で18兆円の資産を抱える金融業型のBS、そして「金融業のCFは事業会社と読み方が違う」ことがわかる3枚。

PL滝グラフ — 営業収益3兆3,308億円から純利益4,473億円まで(26.3期)

単位:億円。米国基準のため「経常利益」の段階はなく、持分法投資損益・売却損益が営業利益の下に加算される

営業収益3兆3,308億円から営業費用2兆8,746億円(支払利息1,939億円・生命保険費用4,799億円・販管費7,118億円などを含む)を引いた営業利益は4,562億円(+37.5%)。ここに持分法投資損益1,239億円(前期比+117%、東芝向けLP出資などが寄与)と子会社・持分法投資売却損益1,113億円(Greenko売却益831億円を含む)が乗って税引前利益6,914億円(+43.9%)。法人税等2,331億円と非支配持分帰属分111億円を引いた当社株主帰属の純利益が4,473億円となる。

💡 やさしく:この滝グラフの面白さは、本業のもうけ(営業利益4,562億円)の半分近い2,352億円が「営業利益の外」から来ていること。出資先の利益の取り分(持分法)と、育てた会社を売った利益です。オリックスの決算を読むときは、営業利益だけでなく「その下の2段」まで見ないと実力を見誤ります。

BS比例図 — 総資産18兆円の中身(26.3期末)

箱の高さ=金額。株主資本比率24.9%

資産側は営業貸付金4兆1,736億円・投資有価証券3兆3,088億円(大半が保険の運用資産)・オペレーティング・リース投資2兆1,528億円など、貸す・運用する・貸与する資産がずらりと並ぶ。負債側は長短借入債務6兆5,380億円+預金2兆6,256億円+保険契約債務1兆9,437億円——「借りたお金と預かったお金」で資産を膨らませ、利ざやと運用益とキャピタルゲインを稼ぐ金融業型のバランスシート。株主資本は4兆4,825億円(株主資本比率24.9%)で、これはリース専業の三菱HCキャピタル(自己資本比率15.2%)より厚い。

キャッシュフロー(26.3期)

単位:億円。営業CF1兆3,696億円

営業CF+1兆3,696億円・投資CF△1兆1,147億円・財務CF△1,605億円(為替影響+348億円を加え、現金等は+1,291億円の1兆4,511億円)。ただし金融業のCFは事業会社と読み方が異なる——営業CFには保険契約債務の増加(+3,956億円)が、投資CFには貸付の実行と回収(実行△1兆6,398億円/回収+1兆4,989億円)が含まれる。事業会社流の単純なFCF(営業CF−設備投資〔事業用資産の購入751億円〕=約1兆2,945億円)はオリックスの場合ほとんど意味を持たず、「営業CF+投資CF=2,549億円のプラス」を資金創出力の目安として見る方が実態に近い(この読み替えは筆者の整理)。

06収益性 — ROE10.4%をデュポン分解する

オリックスのROEは「薄利×超低回転×高レバレッジ」——サイト掲載の製造業とは正反対の、金融業の構造をしている。

ROE(26.3期・平均残高ベース)
10.4%
13.43%
売上高純利益率
売却益・持分法利益が押し上げ
× 0.191回
総資産回転率
18兆円の金融資産を抱えるため極めて低い
× 4.07倍
財務レバレッジ
借入6.5兆円+預金2.6兆円で資産を拡大

本サイト掲載の他社と比べると構造の違いが際立つ。東京エレクトロン(ROE29.6%=利益率23.5%×回転率0.89回×レバレッジ1.41倍)は無借金で利益率と回転で稼ぐ型、トヨタ(ROE10.1%=7.6%×0.51回×2.63倍)は金融事業の分だけ回転が落ちる中間型。オリックスはトヨタとほぼ同じROE10%でも、回転率はその4割以下・レバレッジは1.5倍——「他人のお金で運用資産を膨らませて稼ぐ」金融業の教科書的な分解になっている。レバレッジ4.07倍は儲けの増幅装置であると同時に、資産価格の下落や信用コストの増加も増幅する点に注意。

3分類の資本効率 — 会社自身が使う「ROE成績表」

単位:%。26.3期・配賦資本ベースの税引後ROE(決算説明資料)。ROICに代わるオリックス版の資本効率指標

非金融の会社ならROICWACCを比べるのが定番だが、預金・保険契約債務という特殊な負債で運用するオリックスに事業会社流のROICをそのまま当てはめると意味を持ちにくい(銀行の三菱UFJと同じ論点)。会社自身は3分類ごとに株主資本を配賦し、そのROEで資本効率を管理している。26.3期は事業13.9%・投資13.6%に対し、金融は8.2%と最も低い——だからこそ銀行(配賦資本0.25兆円)を売却して「事業」「投資」へ資本を移す、という④の意思決定につながる。数字が戦略をそのまま説明する好例である。

💡 やさしく:3つの財布それぞれに「元手いくらで、いくら稼いだか」を計算したのがこの表。金融の財布は元手1.7兆円で8.2%、投資の財布は1.6兆円で13.6%。同じ1兆円を置くなら投資の財布の方が1.6倍稼ぐ——なら金融から投資へお金を移そう、というのがオリックスの経営判断です。家計で「定期預金を取り崩して利回りの高い投資に回す」のと同じ理屈です。

07会計基準ビュー — US-GAAP / JGAAP / IFRS

オリックスは日本企業では希少な米国会計基準(US-GAAP)採用。「米国会計基準がビジネスを適切に反映する」と自ら明言しており、SECにForm 20-Fも提出している。会計基準の違いはこの会社の決算の読み方を大きく変える。

どの「利益」で見るかで印象が変わる(26.3期)

単位:億円
詳しく見る:会計基準の技術的差異(US-GAAP/JGAAP/IFRS)
  • 「営業収益」に生命保険料収入・有価証券売却評価益・受取配当金まで含まれる。日本基準の「売上高」の感覚で前年比を読むと、投資成果による膨らみを本業の成長と取り違える
  • 「経常利益」の段階はなく、持分法投資損益(1,239億円)と子会社・持分法投資売却損益(1,113億円)は営業利益の下に別掲される。オリックスの実力を見るには営業利益ではなく税引前利益(6,914億円)まで見る必要がある
  • セグメント利益は「当社株主に帰属する税引前利益相当額」で管理——グループCEOが実際に資源配分に使う数字がそのまま開示される
  • のれん(営業権)は非償却・減損テストのみ。26.3期はORIX USAで52,738百万円(527億円)の営業権・無形資産の減損を計上した(全社では574億円)
  • JGAAPならGreenko売却益831億円などは「特別利益」として経常利益の外に区分され、「経常利益(実力)」と「特別利益(一時的)」の線引きが見えやすくなる。US-GAAPではこの区分がないため、読み手が自分で一回性の利益を切り分ける必要がある
  • JGAAPならのれんは20年以内の規則償却が必要。オリックスの営業権・企業結合で取得した無形資産は1兆3,014億円(26.3期末)あり、仮に20年償却なら年約650億円の償却費が利益を圧迫する計算になる(筆者概算)——非償却のUS-GAAPはこの点で利益が出やすい
  • リース会社としての祖業部分(貸手側のリース会計)は、日本基準もIFRS16も貸手側の扱いは大きく変わらず、基準差の影響は借手側ほど大きくない
  • IFRSでものれんは非償却・減損テストのみで、US-GAAPと近い。三菱HCキャピタルなど国内リース同業はIFRSではなく日本基準採用が主流のため、同業比較では「のれん償却の有無」が利益率の比較を歪める点に注意
  • 生命保険子会社(オリックス生命)はIFRSならIFRS17(保険契約)の適用対象で、保険収益の認識がCSM(契約サービスマージン)方式に変わり、営業収益の見え方が大きく変わる
  • US-GAAPの「償還可能非支配持分」(507億円)のような資本と負債の中間区分(メザニン表示)はIFRSでは原則なく、負債か資本かに割り切って分類される
💡 やさしく:オリックスが米国基準を使う理由は「過年度からの継続性・比較可能性」と説明されていますが、読み手にとっての注意点はシンプルです。①「営業収益」は日本流の「売上高」より広い、②「経常利益」がないので一時的な売却益が実力と混ざって見える——この2点さえ押さえれば、決算記事の「増収増益」の中身を自分で確かめられます。

08同業比較 — リース系大手の中で、独りだけ違う生き物

国内リース系の上場大手、三菱HCキャピタル(8593)・東京センチュリー(8439)・みずほリース(8425)と比較する(2026/7/29終値時点)。ただし比較して見えてくるのは、オリックスがもはや「リース会社」の枠に収まっていないことである。

当期純利益・ROEの比較

26.3期通期実績(各社決算短信)。ROEは各社開示値

純利益はオリックス4,473億円に対し、三菱HCキャピタル1,622億円・東京センチュリー1,113億円・みずほリース476億円と規模で3〜9倍の差。ROEはみずほリース11.7%が最も高く、オリックス10.4%・東京センチュリー10.4%が並び、三菱HCキャピタル8.6%がやや低い。ただし中身は異なり、3社が「貸して稼ぐ」リース深化型(東京センチュリーはNTT提携・航空機、みずほリースはみずほ/丸紅との提携)なのに対し、オリックスは売却益・持分法利益を含む「入れ替え」型——同水準のROEでも再現性の源泉が違う。

バリュエーションの比較

2026/7/29終値。PERは予想ベース(IRBank)

予想PERはオリックス13.5倍・三菱HCキャピタル13.62倍がほぼ並び、東京センチュリー10.83倍、みずほリース7.37倍の順に低くなる。PBRはオリックス1.6倍>東京センチュリー1.19倍>三菱HCキャピタル1.1倍>みずほリース0.9倍で、オリックスだけ頭ひとつ抜けている——ROEの水準と「毎年売却益を作り出す」実績への評価がPBRのプレミアムに表れている。逆に、ROE11.7%と4社で最も高いみずほリースのPBRが0.9倍と最も低いのは、規模・流動性と利益の質(提携先依存)に市場が割引を効かせている例で、ROEだけでPBRは決まらないことも同時に示している。オリックスも入れ替えの手が止まり売却益が細れば、このプレミアムは剥落し得る。

総資産の規模比較

26.3期末。単位:兆円

総資産はオリックス18.0兆円・三菱HCキャピタル13.1兆円・東京センチュリー7.2兆円・みずほリース4.2兆円。配当利回りはみずほリース3.8%・三菱HCキャピタル3.36%・東京センチュリー3.3%に対しオリックス2.4%と最も低いが、これは株価(PBR1.6倍)が買われている裏返しでもある。なお3社とも27.3期は増配予想(三菱HC51円・東京センチュリー90円・みずほリース52円)で、株主還元姿勢は4社とも強い。

💡 やさしく:4社は「リース業」という同じ棚に並んでいますが、他の3社が「貸して稼ぐ」の深掘りで成長してきたのに対し、オリックスは「買って売る」へ軸足を移したのが決定的な違い。株式市場はその違いをPBR(純資産の何倍まで買われているか)の差として値付けしています。

09戦略・課題と改善ポイント

「入れ替えで稼ぐ」動きは絶好調。課題は、その利益の再現性をどう投資家に信じさせるか——そして複雑さゆえの評価のされにくさ(コングロマリット・ディスカウント)をどう解消するかに集約される。

強み Strengths

  • 「金融・事業・投資」をまたぐキャピタルリサイクリングの実績——弥生(22.3期)、オリックス・クレジット(24.3期)、Greenko(26.3期)、オリックス銀行(27.3期予定)と毎年のように大型Exitを実現
  • 純利益4,473億円は3年連続過去最高。国内リース系同業(三菱HC1,622億円・東セン1,113億円)を大きく引き離す規模
  • 買った会社を自ら経営して価値を上げるハンズオン能力(ホテル・旅館、空港、環境エネルギー、Robeco等の資産運用)。AUMは81兆円まで拡大
  • 「配当性向39%か前期額の高い方」という実質減配なしの配当設計+自社株買い枠2,500億円(27.3期)

弱み Weaknesses

  • 利益の3〜4割が売却益・評価益・持分法利益で構成され、「来期も同じ利益を出せるか」が外部から予測しにくい。予想PER13.5倍とROE10.4%のわりに評価が伸びない一因
  • ORIX USAはのれん・無形資産の減損527億円でセグメント利益がほぼ消滅(399億円→10億円)。Hilco Global買収などで拡大してきた米国事業の目利きに疑問符
  • ROE10.4%は28.3期目標11.0%に未達。「金融」分類(配賦資本1.7兆円)のROEが8.2%と足を引っ張る
  • 10セグメント・3分類・新セグメント(27.3期から再編)と開示体系が複雑で、外部からの分析コストが高い

機会 Opportunities

  • 大阪IR(統合型リゾート)が2030年秋開業予定・2025年4月着工——コンセッション(関西エアポート)で培った大型施設運営の集大成
  • 35.3期長期ビジョン「AUM100兆円」(現在81兆円)——Robeco・ORIX USAを核に、売り切りではないフィー収益のストックを積み増す
  • オリックス銀行売却で浮く配賦資本0.25兆円の再配分(カタール投資庁との共同ファンド、AM Green転換社債、バリューアップファンドORIVA I など仕込みは進行中)
  • インバウンド需要を取り込むホテル・旅館・空港運営(26.3期「事業」分類は+18%増益)

脅威 Threats

  • 金利上昇——支払利息は1,691→1,939億円(+14.7%)と既に増加中。レバレッジ4.07倍の金融業型BSは調達コスト上昇が直撃する
  • 資産価格の下落・PE市況の悪化。「投資」分類の利益(3,063億円)は市況が良いときほど出やすく、悪化局面では売却の手が止まる
  • 米国の信用リスク(26.3期は信用損失費用が187→340億円へ増加、うちORIX USAが中心)
  • 東芝・キオクシア関連損益(TB投資事業有限責任組合経由)が四半期遅れで連結に反映される構造で、業績予想に織り込めない変動が残る

改善ポイント(優先度つき)

最優先

「投資」利益の再現性の証明

Greenko(950億円)が剥落する27.3期に、杉孝・米国PEのExitと東芝関連でどこまで埋められるか。「投資」セグメント利益2,900億円(△5%)の予想を達成できれば、売却益は一回性ではなく「回転」だという主張に説得力が出る。

最優先

ORIX USAの立て直し

減損一巡後の27.3期は「収益改善を見込む」と会社は説明するが、信用損失費用の増加傾向が続くなら米州戦略(Hilco Globalプラットフォーム構想)自体の再検証が必要になる。

中期

ROE11.0%(28.3期目標)への着地

銀行売却で「金融」の低ROE資本を圧縮した後、残る保険(配賦資本の大半)の資本効率をどう上げるか。27.3期予想ROE11.7%は銀行売却益込みの数字で、一過性要因を除いた実力ベースで11%を維持できるかが試金石。

中期

複雑さの解消(新セグメント開示の定着)

27.3期からCxO制の新セグメント(APAC・インフラ・欧米・保険・銀行)へ移行する。区分変更は過去比較を難しくする一方、資本配賦と責任の対応を明確にする狙い。新旧の橋渡し開示が丁寧にできるかで、コングロマリット・ディスカウント解消の成否が決まる。

10投資メリット・デメリット

ROE10.4%・3年連続最高益・実質減配なしの還元設計に対し、予想PER13.5倍・PBR1.6倍。論点は「売却益ドリブンの利益をどこまで実力と見なすか」に尽きる。

▲ 強気材料(メリット)

  • 27.3期は銀行売却益1,242億円(税引前)が既に確保されており、純利益5,300億円(+18.5%)予想の確度が相対的に高い
  • 「配当性向39%か前期実績のいずれか高い方」=構造的に減配しない配当設計。27.3期予想配当187.36円(利回り2.9%相当※予想値)+自社株買い枠2,500億円
  • ROE改善が実際に進んでいる(8.8%→10.4%→27.3期予想11.7%)。28.3期目標11.0%、35.3期には純利益1兆円・ROE15.0%の長期ビジョン
  • AUM81兆円の資産運用ビジネスなど、売却益に依存しないストック収益も同時に育っている
  • 大阪IR(2030年秋開業予定)という、国内では他社が持たない大型成長オプション

▼ 弱気材料(デメリット)

  • 利益の質——26.3期の増益はGreenko売却・評価益950億円、27.3期予想は銀行売却益1,242億円と、毎年「大玉の売却」を前提に最高益が組み立てられている。市況悪化でExitが止まれば計画は崩れる
  • レバレッジ4.07倍の金融業型BSに金利上昇が直撃(支払利息+14.7%)。信用損失費用も増加傾向
  • ORIX USAの減損527億円が示す通り、拡大してきた海外投資の資産の質には不確実性が残る
  • 東芝・キオクシア関連の損益変動が会社予想に未反映のまま残る(上振れも下振れもあり得る)
  • PBR1.6倍は同業(1.1〜1.19倍)比で既にプレミアム評価。「入れ替え力」への期待が剥げる局面では下値余地がある

3つのシナリオ(筆者試算)

強気シナリオ27.3期の会社予想(純利益5,300億円)を達成し、東芝・キオクシア関連が上振れ。ROE11%台定着への評価でPERが切り上がると仮定。予想EPS約481円×PER15倍=約7,215円(現値比+11.1%)
中立シナリオ会社予想通りの着地で、評価は現状の予想PER13.5倍のまま。EPS約481円×PER13.5倍=約6,494円(現値比ほぼ横ばい)——現在の株価は27.3期予想をほぼ織り込み済みということでもある
弱気シナリオPE市況の悪化でExitが遅延し、銀行売却益以外の上積みを欠いて純利益4,600億円どまり。売却益依存への警戒でPERも低下すると仮定。EPS約418円×PER11倍=約4,598円(現値比▲29.2%)

1株当たり配当の推移 — 「性向39%か前期額の高い方」

単位:円。27.3期は会社予想(純利益5,300億円の場合187.36円)

※現値は2026年7月29日終値6,496円。27.3期の予想EPS約481円は、会社予想純利益5,300億円÷26.3期末の自己株式控除後発行済株式数(約11.0億株)で筆者が概算した値(会社はEPS予想を開示していない。自社株買い2,500億円の進捗で株数はさらに減り得る)。配当予想187.36円も「純利益5,300億円の場合」の会社試算値。シナリオの株価はいずれも筆者試算であり、会社予想でも市場コンセンサスでもない。

💡 はじめての方への総括:見るべきは3つ。①「投資」セグメントの利益(27.3期予想2,900億円。Greenko剥落を他のExitで埋められれば「売却益は毎年出せる」ことの証明になる)、②ROEの軌道(10.4%→目標11.0%。銀行売却という一手まで打って資本効率を上げに来ている)、③2026年8月6日発表の27.3期第1四半期決算(新セグメント区分での初開示。ORIX USAの回復と信用損失費用の動向を確認する最初の材料)。売却益を「一時的なもの」と見るか「仕組み化された収穫」と見るか——その判断がこの株の評価を分けます。