LNG・原料炭・銅などの資源権益から、ローソン・食品・自動車まで擁する日本最大級の総合事業投資会社。26/3期は一時益の反動で減益も、27/3期は純利益1.1兆円へのV字回復を予想。バフェット(バークシャー)が「永遠の投資」と公言し買い続ける銘柄。
2026年3月期実績(2026/5/1開示)と現在の市場評価。総合商社は「純利益」が最重要指標。
※5軸評価は本レポート筆者の見解であり、投資勧誘ではありません。
モノ(緑)・カネ(黄)・情報(青)の流れで見る、三菱商事の稼ぎ方。
世界中の情報網で有望な資源・事業を発掘し、資本を投じてオーナーになるのが現代の商社モデル。LNG・原料炭・銅などの資源権益が市況の波で大きく稼ぎ、ローソン・食品・自動車などの非資源事業が安定収益で下支えする。事業別の純利益(26/3期・約10グループの合計8,005億円)で見ると、金属資源が2,045億円(26%)で最大、地球環境エネルギー1,609億円(20%)が続き、食品産業833億円(10%)・モビリティ576億円(7%)は相対的に小粒。資源2グループだけで純利益の45%を占める、依然「資源に強い商社」という実態が数字に表れている。稼いだ現金は次の投資と株主還元(26/3期は1.41兆円)に振り分けられ、この資本配分の巧拙こそが商社の実力となる。
2016年の資源安では創業以来初の連結赤字。そこから資源市況と経営改革で過去最高益1.18兆円(23/3期)まで駆け上がった。
26/3期の減益は前期のローソン持分法適用化に伴う再評価益・豪州原料炭事業売却益など一時益の反動が主因(資源安・円高も逆風)。27/3期予想1.1兆円はカナダLNGの通年稼働・米国シェールガス連結化などが牽引し、市場コンセンサス(約8,784億円)を大きく上回る強気計画。
世界一の投資家が「今後50年売らない」と言う理由と、日本株史上最大級の株主還元を分解する。
自社株買いは2025年4月〜2026年3月に約3.18億株・約1兆円を取得完了し、発行済株式の約7.9%を消却予定。配当は「累進配当」(減配せず、利益成長に応じ増配)を掲げ、110円→125円(予想)へ増配が続く。
21/3期末0.87倍・22/3期末1.02倍と1倍前後で低迷していたPBRは、24/3期末に1.64倍まで急伸し、26/3期末は2.24倍まで再評価が進んだ(IRBank・各期末終値ベース)。バフェット氏の取得時期(2020年8月〜)は21/3期の期中にあたり、「解散価値(PBR1倍)を下回る株を世界一の投資家が買い増した」という構図が、その後の市場評価の転換点になったと読める。なお現在(2026/7/17)のPBR1.72倍は期末(3月末)時点の2.24倍からやや低下しており、株価は一本調子の上昇ではない点に注意。
約10の事業グループの純利益を並べる。セグメントごとの浮き沈みの激しさが商社の特徴。
最大の稼ぎ頭は金属資源2,045億円(豪州原料炭・銅等。▲10%)。社会インフラは前期の洋上風力減損(522億円)の反動で+114%と急回復。一方、ローソン等を含むS.L.C.は▲51%、モビリティも▲49%と、非資源側にも波があった年。資源/非資源の利益構成比は会社が金額開示しておらず、本ページでも按分推計は行わない。
収益18.9兆円と純利益8,005億円の間で何が起きているか。事業投資会社のBS・CFの読み方。
自己資本比率39.1%(前期43.6%)。低下の主因は1兆円の自社株買いと総資産の拡大で、ネットDER0.38倍は経営目標の上限目処0.6倍を下回る健全水準を維持。
FCF(営業CF−投資CF・筆者算定)は+約1兆414億円。これがほぼそのまま株主還元1.41兆円の原資となっており、「稼ぐ→還元する」の循環が明確。
ROE8.5%をデュポン分解し、資本コストとの関係を確かめる。
平均残高ベースの筆者概算。「経営戦略2027」はROE12%以上(2027年度)を掲げており、27/3期予想純利益1.1兆円が達成されればROEは11%前後まで回復する計算(筆者試算)。
簡便ROIC=純利益8,005億円÷投下資本(株主資本9.44兆+ネット有利子負債3.89兆≒13.3兆円)≒6.0%。推定WACC(6〜7%)とほぼ拮抗しており、26/3期は「資本コスト並み」の年だった。27/3期予想(1.1兆円)なら約8.3%となり明確に上回る——市況の波の平均でWACCを超え続けられるかが商社評価の核心。
三菱商事はIFRS採用(かつてはUS-GAAP)。商社決算は「どの利益を見るか」で印象が最も変わる業種のひとつ。
大手総合商社4社と比較(2026/7/17時点)。時価総額は首位級だが、資本効率では出遅れている。
26/3期純利益は伊藤忠9,003億円>三井物産8,340億円>三菱商事8,005億円と、かつての「商社の盟主」が3番手に。ROEも8.51%と4社中最低で、伊藤忠(14.59%)との差は大きい。PBR1.72倍は伊藤忠(2.02倍)に次ぐ2番手で、市場は「還元と来期回復」を先に評価している構図。
旗印は「経営戦略2027」——ROE12%以上・営業収益CF成長10%以上。壁は資源依存と新規事業の目利き。
8.5%→12%のギャップは大きい。純利益1.1兆円の達成と自社株買い継続の両輪が必要で、どちらが欠けても未達になる。
コンセンサスを上回る強気計画。カナダLNG・米シェールの立ち上がりが計画どおり進むかが今期最大のチェックポイント。
S.L.C.(ローソン等)・モビリティの利益半減を反転させ、「市況に依存しない1兆円」の土台を作れるか。
洋上風力の教訓(採算前提の甘さ)を、次のエネルギー転換投資でどう活かすか。撤退判断の速さは評価できる。
「還元は超一流、資本効率は発展途上。V字予想の達成確度をどう見るか」が本レポートの総括。