キヤノン 7751
東証プライム 米国基準(US-GAAP) 12月決算
精密機器(複合機・カメラ・医療機器・半導体製造装置) データ基準日 2026/7/24
複合機・プリンターの「本体」を配ってインク・トナーという替え刃を売り続ける ことで稼ぐビジネスモデルを核に、医療機器(CT・超音波)や半導体露光装置へ多角化した精密機器大手。2025年12月期は5期連続の増収増益・売上高4兆6,247億円で2期連続の過去最高 を記録し、営業利益は前期比+62.8%の4,554億円(前期は医療事業でののれん減損1,651億円が重石になっていた反動)。
💡 はじめての方へ: キヤノンは「カメラの会社」というイメージが強いですが、実は売上の半分以上(54%)はオフィスの複合機・プリンター です。カミソリの本体を安く売って替え刃で稼ぐのと同じように、プリンター本体を配ってインクやトナーを売り続けることで儲けています。その安定収益を元手に、病院のCTスキャナーや、スマホの半導体チップを作る特殊な機械(半導体露光装置)にも進出しました。
① 企業カルテ ② ビジネスモデル図解 ③ 成長の歩み ④ 今期の焦点 ⑤ 財務3表 ⑥ 収益性 ⑦ 会計基準ビュー ⑧ 同業比較 ⑨ 課題と改善点 ⑩ 投資判断
01 企業カルテ
2025年12月期実績(2026年1月29日開示)と現在の市場評価。
売上高 (25/12期)
4.62兆円
+2.5%・5期連続増収、2期連続で過去最高
営業利益
4,554億円
+62.8%(利益率 9.8%)
株主資本比率
56.9%
前期58.6%からやや低下も健全水準
時価総額
3.98兆円
株価4,526円(26/7/24・自己株式控除後)
PER
11.5倍
予想ベース・PBR 1.14倍・利回り 3.54%
○
成長性
5期連続増収増益だが伸び率は+2.5%と緩やか。稼ぎ頭のプリンティングは減収基調
○
収益性
営業利益率9.8%は過去最高だが、事業別では5.6%(メディカル)〜17.3%(インダストリアル)とバラつきが大きい
○
財務健全性
株主資本比率56.9%は健全水準。ただし有利子負債8,161億円があり実質無借金ではない
◎
株主還元
配当性向42.9%(実績)に加え、2026年に新たに2,000億円の自社株買い枠を設定し還元姿勢を積極化
◎
バリュエーション
PER11.5倍・PBR1.14倍は過去最高益更新後でも市場平均並み〜割安圏
※5軸評価は本レポート筆者の見解であり、投資勧誘ではありません。
💡 読み方: 「稼ぐ力」も「還元姿勢」も過去最高レベルに来ている一方、株価はそこまで評価されていません(PER11.5倍は同サイト掲載のグローバルテック企業の3〜4分の1)。「地味だが手堅い精密機器の優等生」を安く買えるかどうか が、この銘柄の一番のポイントです。
02 ビジネスモデル図解
モノ(緑 )・カネ(黄 )・情報(青 )の流れで見る、キヤノンの稼ぎ方。
カネの流れ
モノ・サービスの流れ
情報の流れ
起点 オフィス・家庭に複合機やプリンターの「本体」を大量に配ること
定説 プリンターメーカーは本体を売った代金そのもので儲ける
逆説 本体はほぼ薄利で配る「入口」に過ぎない。インク・トナーという替え刃 を数年〜十年単位で売り続けて稼ぐ「ジレットモデル」。この安定収益が、プリンティングより利益率の高い医療機器・半導体露光装置への多角化を支えている
キヤノンのプリンティング事業だけで売上高の53.9%(2兆4,944億円) を占める。本体は家電量販店やOA機器販売店を通じて売られ、その後は顧客が使い続ける限りインク・トナーという消耗品が繰り返し購入される。キヤノン自身は本体と消耗品の売上・利益率を分離開示していない が、同じ「替え刃モデル」を採る同業HP Inc.の実績(FY2025)では、Printing部門売上の65.4%を消耗品(Supplies)が占め、その営業利益率18.7%は全社平均7.4%の約2.5倍 に達する。キヤノンのプリンティング事業全体の営業利益率10.3%(25/12期)も、この「消耗品の高い利益率が本体の薄利を上回ってカバーする」構造から生まれていると推定される。
💡 やさしく: キヤノンのプリンターは、極端に言えば「本体は安く売ってもいい、その後インクをずっと買ってもらえれば儲かる」という発想で作られています。カミソリの本体を安く売って、替え刃で儲けるビジネスと同じ仕組みです。プリンターを1台買うと、その後何年もインクカートリッジという「継続課金」が発生する——これがキヤノンの屋台骨です。
03 成長の歩み — コロナ禍の落ち込みから5期連続増収増益へ
2020年12月期に営業利益率3.5%まで落ち込んだが、その後は一貫して回復。2025年12月期は過去最高の売上・利益を更新した。
売上高の推移(15/12期〜25/12期) 単位:億円 ■濃い棒=直近期
営業利益の推移(20/12期〜25/12期) 単位:億円
営業利益率の推移 2024年12月期は医療事業でののれん減損 1,651億円が重石に
2024年12月期の営業利益2,798億円(利益率6.2%)には東芝メディカルシステムズ買収由来ののれんの減損損失1,651億円が含まれる。この一時要因を除いた調整後の実力値は4,449億円(利益率9.9%)相当で、2025年12月期の伸び+62.8%はこの反動増を含む数字である点に注意。
04 今期の焦点 — プリンティングは減収でも、稼ぎ頭は代替わりしている
キヤノンは4つの事業(プリンティング/メディカル/イメージング/インダストリアル)を持つ。売上の過半を占めるプリンティングが伸び悩む一方、利益率で見ると別の事業が主役になりつつある。
事業別売上構成(25/12期) 売上高4兆6,247億円の内訳(決算短信セグメント情報)
事業別営業利益率の比較(25/12期) ■青=全社平均9.8%。プリンティングは平均並み、稼ぎ頭はイメージングとインダストリアル
売上の53.9%を占めるプリンティングの利益率は10.3%と全社平均並み。一方、カメラ・ネットワークカメラのイメージング(16.4%) と半導体露光装置のインダストリアル(17.3%) は売上構成比こそ22.8%・7.8%と小さいが、利益率は突出している。医療機器のメディカル(5.6%) は2024年の大型減損の記憶が新しく、事業革新委員会による構造改革が進行中。
プリンティング事業内の「本体 vs 非ハードウェア」の伸び率(25/12期・前期比) 単位:現地通貨ベース成長率。プロダクション・オフィス複合機・レーザープリンター・インクジェットプリンターの4区分
レーザープリンター(LP)は本体販売が▲12%と大きく落ち込む一方、非ハードウェア(保守・消耗品を含む関連売上)は+1%を維持。プロダクションプリンティングも同様に本体▲5%に対し非ハードウェアは0%(横ばい)。市場が縮小する局面ほど「継続収益」の下支え力が可視化される ——替え刃モデルの本領はむしろ不況期に発揮される。
💡 やさしく: 「プリンターの会社」としては足元やや苦戦していますが、「カメラとレンズ技術を応用した会社」としては絶好調です。半導体露光装置は元々カメラのレンズ技術の応用、CTスキャナーもX線とレンズ技術の応用。複合機で稼いだお金と技術が、まったく違う成長分野に化けている のが今のキヤノンです。
05 財務3表ビジュアル
「利益率9.8%の堅実なPL」と「株主資本比率56.9%の健全なBS」。過去最高益と積極的な株主還元の両立が見える決算。
PL滝グラフ — 売上4兆6,247億円はどこへ消えるか(25/12期) 単位:億円
💡 やさしく: 4兆6,247億円売って、原価に2兆4,627億円、販管費と研究開発費に合わせて1兆7,066億円を使い、本業のもうけとして4,554億円が残ります。そこからさらに税金等を払って、最終的に手元に残るのが3,321億円。キーエンス(利益率51%)と比べると地味に見えますが、精密機器・電気機器の大型製造業としては手堅い水準です。
BS比例図 — 総資産6兆1,350億円の中身(25/12末) 箱の高さ=金額。株主資本比率 56.9%
資産側は「のれん・無形固定資産」1兆2,455億円(総資産の20.3%)が目立つ。これは2016年の東芝メディカルシステムズ(現キヤノンメディカルシステムズ)買収由来ののれんが中心で、2024年12月期にはこの一部(1,651億円)を減損した実績がある。負債側の有利子負債は8,161億円で、株主資本3兆4,918億円に対しては小さく、財務健全性は保たれている。
キャッシュフロー(25/12期) 単位:億円。営業CF 4,759億円
営業CF4,759億円に対し設備投資は2,622億円(宇都宮の半導体製造装置新工場建設等)。FCF (営業CF−設備投資・筆者算定)は+2,137億円 。この資金を使って配当1,476億円に加え、自己株式取得3,000億円(2007年以来の高水準)を実施し、株主還元を積極化した一年だった。
06 収益性 — ROEを分解する
ROE 9.7%は前期4.8%から急改善したが、まだ「並」の水準。デュポン分解 で強み・弱みを切り分ける。
=
7.2%
売上高純利益率
精密機器大手として標準的な水準
× 0.78回
総資産回転率
のれん1兆円弱が分母を重くする
× 1.73倍
財務レバレッジ
有利子負債8,161億円分のテコ
期中平均ベースの筆者概算。純利益率7.2%はキーエンス(38.1%)やApple(26.9%)の同サイト掲載企業と比べると見劣りするが、これは事業モデルの違い(精密機器製造業 vs ファブレス型高付加価値ビジネス)によるところが大きい。回転率0.78回はのれん・無形固定資産1兆2,455億円が総資産の2割を占める買収先行型の資産構成を反映している。
ROIC vs WACC — 資本コストを上回っているか(筆者試算)単位:%。概算値
ROIC=NOPAT(営業利益4,554億円×(1−実効税率25.7%)≒3,384億円)÷投下資本(株主資本3兆4,918億円+有利子負債8,161億円=4兆3,079億円)≒7.9% で、会社自身が開示するWACC(5〜6%)を上回る。キーエンス(事業ベースROIC21.7%)やApple(ROIC60%超)のような圧倒的な資本効率ではなく、「資本コストを一定の余裕を持って超える、標準的な製造業」の水準 という位置づけが実態に近い。
💡 やさしく: 「集めたお金でどれだけ稼いだか」を示すROICが7.9%で、キヤノン自身が開示する資本コスト(5〜6%)を上回っています。キーエンスのように「合格ラインの3倍」稼ぐわけではありませんが、赤字転落したニコンのような同業他社と比べれば、堅実に価値を生み続けている会社と言えます。
07 会計基準ビュー — US-GAAP / JGAAP / IFRS
キヤノンは日本の会社ながら米国会計基準(US-GAAP) を採用。しかも2027年度第1四半期からIFRS(国際財務報告基準)へ任意適用を予定 している、会計基準の過渡期にある珍しい会社。
どの「利益」で見るかで印象が変わる(25/12期) 単位:億円
US-GAAP(採用中) JGAAPならこう見える IFRSならこう見える(2027年〜適用予定)
US-GAAPには「経常利益」区分がなく、営業利益の下は税引前当期純利益に直結するシンプルな構造。のれん は非償却で毎期の減損テストのみ(2024年の1,651億円減損はこの結果として発生)。
技術的な差異を詳しく見る(プロ向け)
のれん非償却・年次減損テストのため、買収由来ののれん9,858億円は毎期の利益を直接圧迫しないが、いったん減損すると1,651億円(2024年実績)のような大きな一括損失になりやすい
非GAAP指標として「調整後税引前当期純利益」(のれん減損等の一時要因を除いた指標)を自主開示しており、投資家向けに実力ベースの業績を補足する運用を行っている
研究開発費3,393億円は発生時に全額費用処理(資産化しない)。保守的な利益計上
日本基準に慣れた投資家がまず驚くのは「経常利益」が存在しないこと。日本株と比較する際は営業利益か税引前当期純利益で揃える必要がある。
技術的な差異を詳しく見る(プロ向け)
JGAAPならのれん9,858億円を最長20年以内で規則償却するため、2024年の1,651億円のような一括減損ではなく、複数年に分散した償却費として毎期の利益をじわじわ圧迫する形になっていたはずである
年金債務調整額(25/12期+845億円)はUS-GAAPではその他の包括利益 として損益計算書を通さず純資産に直接計上されるが、JGAAPの退職給付会計では数理計算上の差異を一定期間で費用化する運用が一般的で、利益の出方が異なる
キヤノンは持分法投資損益がごく僅少(25/12期1億円)であり、この論点では基準間の差異はほぼ生じない
キヤノンは「中長期的な財務・管理報告体制の品質維持、資本市場における国際的な財務情報の比較可能性向上」を理由に、2027年度第1四半期からIFRSへ任意適用する方針を決算短信で公表済み。
技術的な差異を詳しく見る(プロ向け)
のれんの取り扱い(非償却・減損テスト)はUS-GAAPとIFRSでほぼ同じ考え方のため、IFRS移行によるのれん9,858億円の会計処理へのインパクトは限定的とみられる
年金債務の数理計算上の差異(年金債務調整額)は、IFRS(IAS19)では発生時に純資産直入し、その後の損益への振り戻し(リサイクリング)を行わない点がUS-GAAPと異なる。年金資産・負債規模が大きいキヤノンにとっては注視点の一つ
IFRSでは「経常利益」区分がない点はUS-GAAPと同様のため、この移行で日本の投資家が感じる違和感(経常利益が消える)はすでにUS-GAAP採用時点で発生済みであり、IFRS移行による追加的な変化は小さいと見込まれる
💡 やさしく: 日本の会社なのに米国式の会計を使い、しかも2027年からさらに国際式(IFRS)に切り替える——キヤノンは会計基準の「引っ越し」を2段階で行っている珍しい会社です。日本基準に慣れた人がキヤノンの決算書を読むときは、「経常利益」という項目を探さないこと、そして「のれん」という買収の後始末が一気に大きな損失になり得ることを覚えておくと迷いません。
08 同業比較 — 国内OA機器大手・カメラ大手・海外プリンター大手と比べる
複合機で競合するリコー(7752)、カメラ・半導体露光装置で重なるニコン(7731)、海外の「替え刃モデル」代表格HP Inc.(HPQ)と比較(2026年7月時点)。
キヤノン リコー ニコン HP Inc.
営業利益率はキヤノン9.8%・リコー3.5%と、複合機同業の中では明確にキヤノンが上。ニコンは金属3Dプリンター事業(SLM Solutions)の減損906億円を含み営業利益率▲16.6%の赤字に転落(26/3期)。海外の同業HP Inc.は全社ベースで7.4%(非GAAP)だが、Printingセグメント単独では18.7%と高く、「替え刃モデルの本場」である海外プリンター事業の利益率の高さ が際立つ。PERはキヤノン11.5倍・HP9.51倍と近い水準にある一方、ニコンは業績悪化で73.19倍まで跳ね上がっている(分母である利益が急減したための見かけ上の高PER)。PBRはキヤノン1.14倍に対し、リコー0.77倍・ニコン1.25倍(ともに実績ベース)。HP Inc.は自己資本が▲3.46億ドルの債務超過のためPBRは算出不能。
💡 やさしく: 同じ「複合機・カメラ」仲間でも明暗が分かれています。キヤノンは手堅く黒字を伸ばし、ニコンは半導体・3Dプリンターの投資が裏目に出て赤字転落。海外のHPと比べると、キヤノンのプリンティング事業(利益率10.3%)はHPのPrinting部門(18.7%)にまだ差をつけられており、「替え刃モデルの完成度」ではHPに軍配 が上がる、という見方もできます。
09 戦略・課題と改善ポイント
稼ぎ頭の代替わりが進む一方、本業の複合機・レーザープリンター市場の構造的な縮小という長期の逆風にどう対処するかが最大の論点。
強み Strengths
複合機・プリンター世界最大級のインストールベースと、替え刃モデルによる安定収益
光学技術を核にした医療機器(CT・超音波)・半導体露光装置への多角化。インダストリアルの営業利益率17.3%・イメージング16.4%
株主資本比率56.9%の健全財務。配当性向42.9%+2,000億円の新規自社株買い枠
ネットワークカメラの高成長(25/12期売上+20%超)とセキュリティ需要の追い風
弱み Weaknesses
売上の53.9%を占めるプリンティング事業が前期比▲1.1%と減収基調
メディカル事業の利益率は5.6%と他事業より低く、2024年には大型のれん減損(1,651億円)を計上した実績がある
ROE9.7%・ROIC7.9%(筆者試算)は資本コストを上回るが、キーエンスやAppleのような圧倒的な資本効率ではない
半導体露光装置は先端(EUV)領域を持たず、ArF液浸以降の最先端市場ではASML等に対し後工程・レガシー領域中心の立ち位置
機会 Opportunities
AI関連データセンター投資が半導体後工程向け露光装置需要を押し上げ(25/12期インダストリアル+2.7%)
米国・新興国を中心とした医療機器需要の拡大
2027年のIFRS任意適用による国際的な財務情報の比較可能性向上→海外投資家からの評価改善余地
大容量インクタンクモデル・IT ソリューションなど非ハードウェア領域の相対的な底堅さ
脅威 Threats
米国追加関税の影響(2026年12月期は前期比約507億円規模のコスト増を織り込み)
レーザープリンター市場が欧州・中国を中心に構造的に縮小
FPD露光装置は米関税影響による投資延伸で市場縮小が想定される
ペーパーレス化の長期トレンドはオフィス複合機・プリンター市場全体への逆風であり続ける
改善ポイント(優先度つき)
最優先 プリンティング事業の収益防衛 関税コスト増(26/12期約507億円想定)を価格転嫁と数量減のトレードオフの中でどこまで吸収できるかが、全社利益率10%超えの持続性を左右する。
最優先 メディカル事業の収益力改善 事業革新委員会の活動で利益率は改善傾向(調整後税引前利益+33.1%)にあるが、依然として全社平均を下回る5.6%。東芝メディカル買収から約10年、投資回収フェーズの総仕上げが問われる。
中期 半導体露光装置の高付加価値シフト AI向け後工程需要は追い風だが、ArF液浸以降の最先端ロジック向け市場は事実上ASMLの独占。ニッチ領域での存在感をどう固めるかが中期の論点。
中期 IFRS移行に向けた開示品質の向上 2027年のIFRS任意適用を機に、セグメント別の消耗品・ハードウェア売上開示などを拡充できれば、替え刃モデルの実態がより伝わりやすくなる。
10 投資メリット・デメリット
「過去最高益と積極還元」対「本業プリンティングの構造的な逆風」——地味だが手堅い優等生を、市場平均並みの値段で買えるかが論点。
▲ 強気材料(メリット)
5期連続増収増益・2025年12月期は売上・各利益とも過去最高
ROIC7.9%(筆者試算)が資本コストを上回り、価値創造を継続
配当性向42.9%+新規2,000億円自社株買い枠と、株主還元は積極化トレンド
PER11.5倍・PBR1.14倍は過去最高益更新後としては割安感がある水準
半導体露光装置(AI需要)・ネットワークカメラ・医療機器の3本柱が高成長領域として育っている
▼ 弱気材料(デメリット)
売上の過半を占めるプリンティング事業が減収基調(25/12期▲1.1%)
米国追加関税の影響は2026年12月期も約507億円規模と継続見通し
メディカル事業は利益率5.6%と低く、2024年には大型のれん減損の実績あり
ROE9.7%・純利益率7.2%はキーエンス・Apple等の同サイト掲載の高収益企業とは別次元
ペーパーレス化という長期トレンドがプリンティング事業の構造的な逆風であり続ける
3つのシナリオ(筆者試算)
強気シナリオ 関税影響が想定より軽く、イメージング・メディカルの成長が加速しEPS 430円×PER14倍(グローバルテック企業並みに再評価)=6,020円水準
中立シナリオ 会社計画通りEPS 394円×PER11.5倍(現状程度)=4,531円前後(現値近辺)
弱気シナリオ プリンティングの減収が続き関税吸収が追いつかずEPS 340円×PER10倍=3,400円前後
💡 はじめての方への総括: チェックポイントは3つ。①プリンティング事業の減収に歯止めがかかるか (関税と価格転嫁のバランス)、②メディカル事業の利益率改善 (5.6%からどこまで伸ばせるか)、③半導体露光装置・ネットワークカメラの成長持続 。「地味な優等生」であることと「今の株価(PER11.5倍)が割安かどうか」は別の問いですが、少なくとも同サイトの高収益企業群と比べれば評価のハードルは低い、と覚えておいてください。