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🕒 最終更新: 2026-09-06

ワークマン 7564

東証プライム日本基準(非連結)3月決算 フランチャイズ小売データ基準日 2026/9/4

作業服専門店から出発し、広告費をほぼかけずに愛好家の発信を後押しする「アンバサダー」戦略でアウトドア・カジュアル市場を切り開いた小売企業。2026年3月期は営業総収入・各段階利益とも過去最高を更新し、2027年3月期第1四半期も増収増益が加速している。

💡 はじめての方へ:「ワークマン」は工事現場で働く人向けの作業服屋というイメージが強いですが、防水・防寒・軽量といったプロ向けの高機能素材を安い価格でアウトドア・カジュアル市場に持ち込み、山や川で製品を使う愛好家がSNSで発信する形で認知度を広げました。広告費をほぼかけずに市場を作ったのが最大の特徴です。

01企業カルテ

2026年3月期(2025年4月〜2026年3月)通期実績と、2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月)・現在の市場評価。

営業総収入(FY26)
1,608.5億円
+17.5%・過去最高
営業利益(FY26)
296.8億円
+21.7%(利益率18.4%)
当期純利益(FY26)
206.2億円
+22.1%・EPS252.64円
経常利益(FY26)
305.7億円
+22.7%
ROE(自己資本当期純利益率)
14.3%
総資産経常利益率は17.6%
自己資本比率
82.8%
小売業として突出して高い健全性
時価総額
4,953.9億円
2026/9/4終値ベース
PER(実績)
21.93
PBR3.21倍・配当利回り1.50%
成長性
営業総収入+17.5%・営業利益+21.7%と各段階利益とも過去最高を更新。Q1FY27は営業利益+33.3%とさらに加速
収益性
営業利益率18.4%は小売業として高水準。自己資本ROE14.3%・総資産経常利益率17.6%
財務健全性
自己資本比率82.8%・有利子負債はほぼゼロ(16.9億円)で無借金経営に近い
株主還元
配当性向35.2%・配当利回り1.50%は同業のしまむら(2.47%)より低い。FCFは102.3億円確保も営業CFは前期比▲24.0%減少
バリュエーション
PER21.93倍・PBR3.21倍はしまむら(PER15.12倍)より高いが、良品計画(PER34.20倍)・ファーストリテイリング(PER40.83倍)よりは割安

※5軸評価は本レポート筆者の見解であり、投資勧誘ではありません。

💡 読み方:売上・利益とも過去最高を更新し、自己資本比率82.8%・有利子負債ほぼゼロという財務健全性は小売業の中でも際立っています。一方で営業CFが前期比で減少しているのは、好調な販売を支えるための在庫積み増しが主因です。

02ビジネスモデル図解

モノ()・カネ()の流れで見る、ワークマンの稼ぎ方。

カネの流れ モノの流れ
起点1980年、群馬県伊勢崎市に作業服のフランチャイズ1号店が誕生。プロ向け作業服専門店として全国展開してきた
定説作業服専門店は工事現場で働くプロ向けの店で、一般客には縁がない
逆説高機能・低価格の防水・防寒ウエアが登山・キャンプ愛好家にSNSで「発見」されたのを契機に、広告費をかけず愛好家(アンバサダー)に発信してもらう形で市場を開拓。フランチャイズは1店舗=夫婦経営中心・ノルマなしで、粗利益を本部と一定比率で分配する仕組み

本部の収益は大きく3つ。加盟店向け商品供給売上高(フランチャイズ店に商品を卸す売上、Q1FY27実績で全体の57.5%)が最大で、次いでロイヤリティ収入(加盟店の売上に応じた対価、26.1%)、直営店売上高(本部直営・SC等の店舗、15.5%)と続く。加盟店は在庫を仕入れて販売する一方、売上に完全比例した収入を得る仕組みでノルマは無い。

💡 やさしく:ワークマンは「フランチャイズ店に商品を卸して稼ぐ」+「その店の売上の一部をロイヤリティでもらう」の二重取りで儲けています。広告費をかけない代わりに、実際の使用者(アンバサダー)に発信してもらうのがマーケティングの中心です。

03成長の歩み — 4年で売上+38.3%、直近は増益ペースが加速

2022年3月期に一時減益となったものの、2023年3月期以降は一貫して増収増益。2026年3月期は営業総収入・営業利益とも過去最高を更新した。

営業総収入の推移(FY2022〜FY2026)

単位:億円 ■濃い棒=直近期

営業利益の推移(FY2022〜FY2026)

単位:億円

自己資本ROEの推移

決算短信開示の自己資本当期純利益率

04今期の焦点 — 「作業服」を超えたカジュアル化と、フランチャイズ経済学

単一セグメントの会社だが、商品カテゴリ別の売上を見ると「ワーキングウエア専業」から一般客向けカテゴリへの構造転換が進んでいる。あわせて、加盟店を中心にした独自のフランチャイズ経済学を数字で見る。

商品カテゴリ別売上高(FY2025→FY2026・チェーン全店・億円)

ファミリー衣料・カジュアルウエアが急伸、主力のワーキングウエアは緩やかな伸び

ファミリー衣料は前期比+41.1%(198.4→280.1億円)、カジュアルウエアは+35.8%(273.2→371.1億円)と、一般客向けカテゴリが牽引した。主力のワーキングウエアは+8.3%(509.8→552.0億円)、作業用品は+1.3%(403.3→408.5億円)と緩やかな伸びにとどまり、チェーン全体に占めるワーキングウエア+作業用品の比率は前期の49.9%から45.9%へ低下した。チェーン全店売上高2,092.3億円のうち、PB(プライベート・ブランド)比率は71.9%(前期は68.5%)まで上昇し、2027年3月期第1四半期はさらに74.9%まで伸びている。

💡 やさしく:「作業服屋の売上の伸びしろは、もう作業服ではなく普段着(ファミリー衣料・カジュアル)にある」ことが数字にはっきり表れています。

収益モデルの内訳(Q1FY2027・億円)

加盟店向け商品供給(卸売)が最大、次いでロイヤリティ収入

Q1FY2027(2026年4〜6月)の営業総収入518.1億円の内訳は、加盟店向け商品供給売上高297.7億円(57.5%)、ロイヤリティ収入135.4億円(26.1%)、直営店売上高80.3億円(15.5%)等。ロイヤリティ収入は前年同期の108.6億円から135.4億円へ大きく伸びており、加盟店の既存店売上増加がそのまま本部の実入りに直結する構造がうかがえる。この結果、Q1FY2027の営業利益は120.3億円、純利益は77.9億円となった。

💡 やさしく:本部は「商品を卸して儲ける」だけでなく「加盟店の売上が伸びるほどロイヤリティも増える」仕組み。加盟店と本部の利害が一致しやすい設計です。

フランチャイズ経済学 — 初期費用と店舗網の拡大

1店舗=夫婦経営中心・ノルマなし。店舗数はフランチャイズが9割超

加盟には保証金等を含め約223.75万円+その他諸費用約75万円が必要(自己資金は保証金100万円のみで、39歳以下は残りを本部融資可)。出店場所は本部が100%決定し、加盟店は個人契約(55歳未満の夫婦、または独身で3親等内の専従者がいる方)のみで副業は不可。粗利益は加盟店と本部が一定比率(会社非開示)で分配され、加盟店の取り分は売上に完全比例するためノルマは無い。2026年2〜5月は全店月次売上が前年比123〜127%と好調で、加盟店収入は月平均+24.8%増加。店舗網は2026年3月末で1,094店舗(フランチャイズ1,006店・比率92.0%)、2027年3月期第1四半期末は1,107店舗まで拡大した。

💡 やさしく:「1店舗=夫婦2人・ノルマなし・売上に完全比例」という設計だからこそ、本部は少ない直接投資で店舗網を拡大できます。加盟店側も好調な業績がそのまま収入増に直結する、win-winの仕組みです。

05財務3表ビジュアル

売上・利益の伸びに対し、財務基盤はきわめて健全(自己資本比率82.8%)。一方で営業CFは在庫積み増し等により前期比で減少した。

PL滝グラフ — 営業総収入1,608.5億円はどこへ消えるか(FY26)

単位:億円
💡 やさしく:1,608.5億円売って、商品原価・販管費で1,311.8億円が消え、本業のもうけは296.8億円(18.4%)。小売業としては高い利益率です。

BS比例図 — 総資産1,852.6億円の中身(FY26末)

自己資本比率82.8%

キャッシュフロー(FY26)

単位:億円。営業CF188.4億円(前期比▲24.0%)

FCF(営業CF188.4億円−設備投資86.1億円)は+102.3億円とプラス確保。営業CFの減少は好調な販売を支える棚卸資産の増加(+58.0億円)と法人税等の支払い増加が主因で、稼ぐ力自体(営業利益+21.7%)は拡大している。

06収益性 — ROE14.3%を分解する

ROE14.3%(FY26・決算短信開示の自己資本当期純利益率)をデュポン分解で見る。

ROE(FY26)
14.3%
12.82%
売上高純利益率
小売業として高水準
× 0.93回
総資産回転率
在庫・現金厚めで回転はやや緩やか
× 1.20倍
財務レバレッジ
自己資本比率82.8%と極めて低い

期中平均残高ベースの筆者概算。ニッスイ(1332・低回転×薄利×高レバレッジ)とは対照的に、ワークマンは「高利益率×低レバレッジ」でROEを積み上げる構造。財務レバレッジがほぼ効いていない分、ROEの絶対水準は自己資本の厚さに抑えられている。

ROIC vs WACC — 資本コストを上回っているか

単位:%。筆者推定

ROIC17.0%(FY26・筆者算定)は推定WACC(6.1%)を10.9ポイント上回り、明確な価値創造の状態。有利子負債が総資産の1%未満とごく小さいため、資本コストはほぼ株主資本コスト(β0.83)に一致する。stockanalysis.comの独自算定ROIC(30.91%)とは方法論の違いで水準が異なるが、いずれの算定でもWACCを大きく上回っている点は共通する。

💡 やさしく:「集めたお金を使って、資本コストを大きく上回るリターンを出せている」優等生的な状態です。借金にほぼ頼らず、これだけの利益率を出せているのがワークマンの強みです。

07会計基準ビュー — JGAAP / IFRS / US-GAAP

ワークマンは日本基準(JGAAP)採用、かつ子会社を持たない非連結決算という点が同業他社との大きな違い。

会計基準による見え方の違い

  • 子会社が無いため連結決算を作成せず、非連結(単体)の決算短信のみを開示。持分法・のれん・非支配株主持分といった連結特有の論点がそもそも存在しない
  • 営業利益と経常利益(営業外損益を加味した段階利益)を区分する日本独自の表示。FY26の営業外収益924百万円(受取利息645百万円等)は経常利益に算入される
  • フランチャイズ店への商品供給(売上高)とロイヤリティ収入(営業収入)を区分表示する独自の収益認識区分を採用
  • IFRSでは「経常利益」区分が無くなり、営業利益の下に金融損益が並ぶ形になる
  • フランチャイズ契約に基づくロイヤリティ収入の認識時期(履行義務の充足時点)がIFRS15号でより詳細な開示を求められる可能性がある
  • 店舗物件の賃貸借(リース資産0.4億円規模)はIFRS16号でも使用権資産・リース負債としてほぼ同様に計上されるとみられ、この点の差異は小さい
  • US-GAAPでも経常利益の概念を持たないため、営業外損益は営業利益の下に一括表示される
  • フランチャイズ収益の認識(ASC606)はIFRS15号と実質的に近い枠組みで、ロイヤリティ収入・商品供給売上の区分表示は大きくは変わらないとみられる
💡 やさしく:ワークマン最大の会計上の特徴は「子会社が無く連結決算を作らない」こと。大手小売としては珍しく、決算がとてもシンプルです。

08同業比較 — 衣料品SPA3社の中でのポジション

しまむら・良品計画・ファーストリテイリングと比較すると、ワークマンはPER・PBRで中位、ROEでは最も低い評価に位置する。

PERはワークマン21.93倍で、しまむら(15.12倍)より高いが、良品計画(34.20倍)・ファーストリテイリング(40.83倍)よりは低い。PBRも同様の序列(しまむら1.37倍・ワークマン3.21倍・良品計画5.56倍・ファーストリテイリング7.55倍)。ROEはワークマン14.3%(自己資本ベース)が4社中最も低く、しまむらの推定9.06%(PBR÷PERで筆者算出)は上回るものの、良品計画(18.36%)・ファーストリテイリング(22.48%)には及ばない。配当利回りはしまむら(2.47%)が最も高く、ワークマン(1.50%)は成長投資を優先する姿勢がうかがえる。

💡 やさしく:「しまむらより高く評価され、良品計画・ユニクロほどではない」——ワークマンはアウトドア・カジュアル市場への拡張という成長ドライバーを持つぶん、専業の衣料品チェーン(しまむら)より市場から一段高い評価を受けています。

09戦略・課題と改善ポイント

中期成長ビジョン2030「すべての人に機能性ウエアを」の実現に向け、「マス化製品政策」で主力製品の量産・低価格化を推進している。

強み Strengths

  • 広告費をほぼかけないアンバサダー型マーケティングで低コストに認知度を拡大
  • 自己資本比率82.8%・有利子負債ほぼゼロという極めて高い財務健全性
  • 1店舗=夫婦経営中心・売上完全比例のフランチャイズモデルで少ない資本で店舗網を拡大
  • 営業総収入・各段階利益ともFY26で過去最高を更新した実績

弱み Weaknesses

  • 配当利回り1.50%は同業しまむら(2.47%)より低く、株主還元は相対的に控えめ
  • 営業CFが前期比▲24.0%減少(棚卸資産の増加が主因)
  • 主力のワーキングウエア・作業用品の伸びは+8.3%/+1.3%と緩やかで、成長は一般客向けカテゴリに依存
  • ROE14.3%は同業4社中最も低く、財務レバレッジをほぼ使わない分ROEの絶対水準は抑えられる

機会 Opportunities

  • ワークマンカラーズ・法人フランチャイズによるショッピングセンター出店の加速
  • ファミリー衣料・カジュアルウエアなど一般客向けカテゴリのさらなる拡大余地
  • PB比率71.9%(+3.4ポイント)まで上昇しており、粗利率改善が加盟店収入増にも波及

脅威 Threats

  • 天候不順(天候不順で夏物商品が低調だったQ1FY27の経営成績概況にも言及あり)による季節商品の売上変動
  • 円安・原材料費の高騰に伴う仕入価格上昇
  • 法人需要の減少懸念(原油高等の影響)

改善ポイント(優先度つき)

短期

営業CFの改善

棚卸資産の増加ペースが売上成長に対して過大になっていないか、在庫回転の管理が焦点。

中期

株主還元方針の明確化

配当利回り1.50%は同業比較でも見劣りする。潤沢な自己資本を踏まえた増配・自社株買いの余地がある。

中期

主力カテゴリのてこ入れ

ワーキングウエア・作業用品の伸び鈍化が続けば、成長を一般客向けカテゴリだけに頼る構造リスクが高まる。

10投資メリット・デメリット

「広告費をかけないアンバサダー戦略とフランチャイズ経済学で、高収益・高財務健全性を両立する会社。論点は株主還元姿勢と主力カテゴリの成長鈍化」が本レポートの総括。

▲ 強気材料(メリット)

  • FY26で営業総収入・各段階利益とも過去最高を更新、Q1FY27も増収増益が加速(営業利益+33.3%)
  • 自己資本比率82.8%・有利子負債ほぼゼロという極めて高い財務健全性
  • ROIC17.0%が推定WACC(6.1%)を10.9ポイント上回り明確な価値創造
  • ファミリー衣料・カジュアルウエアが前期比+41.1%/+35.8%と一般客向け市場の開拓が加速

▼ 弱気材料(デメリット)

  • 配当利回り1.50%は同業しまむら(2.47%)より低く、株主還元は相対的に控えめ
  • 営業CFが前期比▲24.0%減少しており、在庫管理が今後の焦点
  • 主力のワーキングウエア・作業用品の伸びは緩やか(+8.3%/+1.3%)
  • ROE14.3%は同業4社中最も低い水準

3つのシナリオ(筆者試算・2028年3月期想定EPS)

強気シナリオ「マス化製品政策」ヒットとワークマンカラーズ出店加速が続きEPS330円×PER25倍=8,250円
中立シナリオ現在の成長ペースが継続しEPS300円×PER22倍=6,600円
弱気シナリオ天候不順・原材料高で既存店が伸び悩みEPS260円×PER18倍=4,680円
💡 はじめての方への総括:チェックポイントは3つ。①一般客向けカテゴリ(ファミリー衣料・カジュアル)の成長持続性②営業CF減少の一時要因か構造要因かの見極め③潤沢な自己資本を踏まえた株主還元方針の変化。「作業服屋」というイメージだけで見ると、フランチャイズ経済学とアンバサダー戦略という独自の強みを見落としてしまいます。