エアコン・エレベーターなど「くらしの電機メーカー」のイメージが強いが、26/3期の増益を牽引したのはFA(ファクトリーオートメーション)とパワー半導体。売上収益5兆8,947億円(+6.8%)・純利益4,078億円(+25.8%)と4期連続の最高益を更新し、なかでもFA事業は営業利益+64%と急回復した。
2026年3月期実績(2026/4/28開示)と現在の市場評価。4期連続の最高益更新。
※5軸評価は本レポート筆者の見解であり、投資勧誘ではありません。
モノ(緑)・カネ(黄)・情報(青)の流れで見る、三菱電機の稼ぎ方。
製造業・インフラ事業者にはFA機器(工場の生産ラインを制御するPLC・産業用ロボット等)や電力・鉄道インフラ機器を、一般消費者・法人にはエアコン・エレベーター・ビル設備を販売する「二階建て」構造。稼いだ現金は配当・自社株買いで株主に還元しつつ、株主資本比率60.95%という手厚い自己資本を維持している。
2021年3月期を底に、売上・利益率とも右肩上がりで26/3期は4期連続の最高益。
2021年3月期(4兆1,900億円)を底に、以降5期連続で増収。23/3期に5兆円の大台を突破し、26/3期は5兆8,947億円まで拡大した。
21/3期(1,931億円)を底に回復し、26/3期は過去最高の4,078億円(EPS198.31円)。この10年で純利益はほぼ倍増した。
FA(ファクトリーオートメーション)事業は25/3期に落ち込んだが、中国のスマートフォン・工作機械投資回復とAI関連設備投資需要で26/3期は急回復。27/3期はさらなる増益を見込む。
売上高は7,256億円→7,982億円(+726億円)、営業利益は467億円→766億円(+298億円、+63.8%)。営業利益率も6.4%→9.6%へ改善した。会社は要因として「中国のスマートフォン、工作機械関連の需要や、日本と中国でのAI関連半導体・サーバ向け設備投資需要の増加」を挙げている。
27/3期のFA事業営業利益は1,020億円(+36%)を会社は見込んでおり、中国需要の回復が一時的な反動ではなく持続的なトレンドだと会社側は見ていることがうかがえる。FA事業単体の利益は全社営業利益4,330億円の約17.7%を占め、26/3期の伸び(+298億円)だけで全社営業利益の増加分(+412億円)の7割超を稼いだ、三菱電機の「隠れた稼ぎ頭」になっている。
6つの事業セグメントの売上高と営業利益(26/3期)。売上規模と利益率の順位が逆転している点に注目。
最大は『ライフ』2兆3,182億円(家電・ビル空調・エレベーター)。次いで『インダストリー・モビリティ』1兆6,738億円(FA・自動車機器)、『インフラ』1兆4,634億円(電力・鉄道インフラ)と続く。
利益率で見ると『その他』33.7%・『セミコンダクター・デバイス』18.4%・『デジタルイノベーション』14.1%が、売上最大の『ライフ』7.4%を大きく上回る。会社の顔である『ライフ』は実は利益率の低い事業で、規模は小さくても高収益な半導体・その他事業が全社利益率を押し上げる構図になっている。
売上収益5兆8,947億円から純利益4,078億円へ。株主資本比率60.95%という手厚い財務基盤。
株主資本比率60.95%は電機大手の中でも高水準。有利子負債3,633億円に対し現金及び現金同等物は7,316億円あり、有利子負債を現金が上回る。
FCF(営業CF−投資CF)は2,316億円。財務CFの流出(▲3,048億円)は配当・自社株買い・借入返済の合計。
ROE10.59%(予想)をデュポン分解し、資本コストとの関係を確かめる。
期末残高ベースの筆者概算のため、会社発表ROE予想(10.59%)と若干の差(分解結果は約9.08%)がある。同じ電機大手でも日立(6501)はROE12.9%・レバレッジ2.29倍(ネットキャッシュなのに二桁ROE)と対照的に、三菱電機はより保守的な財務レバレッジ(1.64倍)で手堅くROE10%台を確保している構図。
売上高営業利益率は5.63%→7.35%、売上高純利益率は4.55%→6.92%と、いずれも5期連続で改善。FA・半導体事業の伸びが利益率改善のミックス効果として効いている。
簡便ROIC=純利益4,078億円÷投下資本(株主資本4兆4,842億円+有利子負債3,633億円=4兆8,475億円)≒8.41%。推定WACC(6〜7%、電機業界の目安として日立(6501)ページと同前提)を上回っており、資本効率の面では合格ライン。
三菱電機はIFRS採用企業。「調整後」ではなく素の営業利益をヘッドライン指標に使う点が日立(6501)との違い。
日立・パナソニックHD・NECと比較(2026/7/17時点)。
ROEは三菱電機10.59%で、日立12.9%・NEC12.3%に次ぐ3位。PBRも2.45倍と日立3.23倍には及ばないが、パナソニックHD1.79倍は上回る。PER23.14倍は日立24.97倍に次いで4社中2番目に高く、NEC21.37倍・パナソニックHD22.20倍よりは高い評価を市場から受けている。収益性は改善傾向にあり、割安放置されているわけではないが、日立ほど強気には振れていないという位置づけ。26/3期純利益4,078億円は日立8,023億円の約半分だが、NEC2,702億円・パナソニックHD1,895億円は上回る。
FA・半導体の需要回復を27/3期も維持できるか、そして『ライフ』事業の低収益体質をどう改善するかが焦点。
27/3期の営業利益+36%見通しが中国需要の一時的な反動ではなく構造的なトレンドかどうか、四半期ごとの受注動向で確認する必要がある。
売上最大セグメントの利益率7.4%を、他セグメント並みの水準に引き上げられるかが全社利益率のさらなる改善の鍵。
配当利回り1.02%は同業でも見劣りする水準。財務健全性の高さ(株主資本比率60.95%)を生かした増配・自社株買いの余地がある。
共通費用・消去(1,359億円)の内訳開示が進めば、投資家が事業別の実力をより正確に評価できるようになる。
「地味だが手堅い」電機大手。FA・半導体の回復力を信じられるかどうかが判断の分かれ目。