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メルカリ 4385

東証プライムIFRS6月決算 C2Cフリマ×フィンテックデータ基準日 2026/7/17

日本最大のフリマアプリを軸に、あと払い・スマートマネー(与信)・メルコイン(暗号資産)を展開する「フリマ×フィンテック」企業。10年間赤字を垂れ流した米国事業がFY2025についに黒字化し、フィンテック事業が急成長中。直近12カ月の営業利益率は19.5%まで改善。

💡 はじめての方へ:「いらないものを売って、お小遣いにする」アプリの会社です。ここ数年は、貯まったメルカリの売上金をそのまま買い物に使える「メルペイ」や、後払いで買える「あと払い」など、お金まわりのサービス(フィンテック)に力を入れています。長年苦戦していたアメリカ事業も、ようやく黒字になりました。

01企業カルテ

直近12カ月(TTM・2025年4月〜2026年3月)実績と現在の市場評価。決算期は6月。

売上収益(TTM)
2,159億円
+13.3%(前期比)
営業利益(TTM)
420億円
利益率19.5%・急改善)
純利益(TTM)
338億円
EPS 200.06円
ROE(TTM)
33.0%
FY2025期は30.5%
米国事業
黒字化
FY2025期に初の通期黒字転換
フィンテック売上(9カ月累計)
363億円
+27.0%(FY2026期Q1〜Q3)
時価総額
7,625億円
株価4,616円(26/7/17)
PER(TTM)
23.1
PBR 6.34倍
成長性
売上+13.3%(TTM)。フィンテック+27%が牽引役に浮上
収益性
営業利益率が9.3%(FY24)→19.5%(TTM)へ倍増。米国黒字化が寄与
財務健全性
自己資本比率17.8%と低め。フィンテックの貸付債権増で負債も拡大
株主還元
成長投資優先で無配。還元より事業拡大フェーズ
バリュエーション
PBR6.34倍は同業内で最高水準。黒字化定着を織り込み済み

※5軸評価は本レポート筆者の見解であり、投資勧誘ではありません。

💡 読み方:このページで一番驚くべきポイントは「純利益は黒字なのに、営業キャッシュフローはマイナス」という点(詳細は⑥財務3表)。倒産の兆候ではなく、あと払い・スマートマネーの貸付が急拡大している証拠です。銀行が「お金を貸すほど手元の現金が減る」のと同じ理屈です。

02ビジネスモデル図解

モノ()・カネ()・情報()の流れで見る、メルカリの稼ぎ方。

カネの流れ モノ・サービスの流れ 情報の流れ
起点「いらないものを売る」CtoCフリマアプリ
定説フリマアプリは出品・売却の手数料で稼ぐもの
逆説売却で得た「売上金」を財布代わりに使わせ(メルペイ)、あと払い・与信・暗号資産へと横展開。フリマは「金融サービスへの入口」に進化

出品・購入の取引手数料(10%)が土台収益で、GMV(流通取引総額)1.12兆円から算出すると推定1,121億円・売上の約52%を占める。そこに、売上金をそのままコンビニ等で使えるメルペイ、後払いの「メルペイあと払い」、貸付の「スマートマネー」、暗号資産の「メルコイン」を積み上げ、フィンテック事業だけで9カ月累計363億円(+27%・売上の約17%)まで成長させた。米国では同じフリマモデルを展開し、10年越しでようやく黒字化を達成(売上の約17%)。

💡 やさしく:メルカリは「モノを売って得たお金を、そのまま使わせる」仕組みが得意です。売ったお金が銀行口座を経由せずアプリ内に貯まるので、そのままコンビニで買い物したり、後払いで別の商品を買ったりできる。この「お財布化」がメルペイ・あと払い・スマートマネーという新しい収入源を生みました。

03成長の歩み — 10年で売上15倍、赤字体質からの脱却

2018年上場後も米国事業の先行投資で長く赤字が続いたが、FY2025(2024年7月〜2025年6月)についに営業黒字が定着した。

売上収益の推移(FY2016〜FY2025)

単位:億円 ■濃い棒=直近期。決算期は6月

営業利益の推移(FY2021〜TTM)

単位:億円。TTM=直近12カ月(2025年4月〜2026年3月)

営業利益率の推移

米国事業の重荷が消え、利益率が急改善中

FY2026期(2025年7月〜2026年6月)通期の発表は2026年8月上旬の見込み。会社予想は売上2,200億円超(+14.2%)とアナリスト予想ベースで報じられている(未確定・要確認)。

04今期の焦点 — 米国黒字化とフィンテックの急成長

10年連続赤字だった米国事業がついに黒字化。同時にフィンテック事業が新たな成長エンジンとして台頭している。

米国事業の売上・営業損益(FY2022〜FY2025)

単位:億円。棒=売上高、線相当の損益は下の表で確認

米国事業の売上は4年連続で400億円前後の横ばいだが、営業損益は▲121億円→ほぼ収支均衡へ着実に改善し、FY2025期についに黒字転換(数億円規模、報道により900百万円等の記載あり)。10年越しの投資回収がようやく実を結んだ形。

💡 やさしく:アメリカでは「メルカリ」というブランドがまだ根付かず、長年赤字を掘り続けていました。売上を大きく伸ばせなくても、経費を絞り込むことで収支を合わせる方向に転換し、ようやく黒字化。「攻めの赤字」から「守りの黒字」へ舵を切った形です。

フィンテック事業の急成長

単位:億円。四半期・累計とも決算短信の一次データ

フィンテック(メルペイ・あと払い・スマートマネー・メルコイン)の売上収益は9カ月累計363億円(前年同期286億円・+27.0%)、コア営業利益は9カ月累計73億円(前年同期比+39億円)。あと払い・スマートマネーの与信残高は2026年3月末3,281億円(前年同期比+45.0%、回収率99.4%)と、貸付事業として急拡大している。

💡 やさしく:フィンテックは「メルカリで稼いだ人に、メルカリがお金を貸す」ビジネス。これが会社の新しい柱に育っています。回収率99.4%というのは「貸したお金がほぼ返ってきている」という意味で、今のところ貸し倒れの心配は小さいようです。

05セグメント — 国内フリマが土台、米国とフィンテックが伸びしろ

売上の大半は国内マーケットプレイス。国内GMV(流通取引総額)はFY2025期1兆1,209億円(+4%)と成長は緩やか。

国内GMVと成長率(四半期)

単位:億円。直近は前年比+16%まで加速

FY2025期通期の国内GMVは1兆1,209億円(+4%、会社目標の10%成長には未達)だったが、FY2026期に入り四半期成長率は+16%まで加速。国内フリマ市場の底堅さを示す。

読みどころ①:国内マーケットプレイス

  • 売上の過半を占める安定収益源。取引手数料10%が土台
  • MAU(月間利用者数)は約2,300万人規模(FY2025期末時点)
  • GMV成長率の再加速が、全社成長率の鍵を握る

読みどころ②:米国とフィンテック

  • 米国:黒字化したが売上は横ばい(約400億円規模で足踏み)
  • フィンテック:売上+27%・コア営業利益+39億円と最も勢いがある事業
  • 全社の営業利益率改善(9.3%→19.5%)の主因はこの2事業の好転
💡 やさしく:「本体(国内フリマ)は安定、米国はやっと黒字、フィンテックが急成長」という3層構造。投資家が一番注目しているのは、伸びしろの大きいフィンテックがこのペースで拡大を続けられるかです。

06財務3表ビジュアル

「黒字なのに営業CFはマイナス」——フィンテック企業特有の財務の読み方を押さえる。

PL滝グラフ — 売上2,159億円(TTM)はどこへ消えるか

単位:億円。直近12カ月(2025年4月〜2026年3月)ベース
💡 やさしく:2,159億円売って、費用は1,739億円。本業のもうけは420億円(19.5%)まで改善しました。数年前まで赤字だったことを考えると、劇的な変化です。

BS比例図 — 総資産6,738億円の中身(2026年3月末)

箱の高さ=金額。自己資本比率17.8%

自己資本比率17.8%は一般的な事業会社と比べ低いが、フィンテック企業(銀行業に近い性質)としては相応の水準。負債の多くは「あと払い」利用者への未収債権に対応する調達(負債)であり、単純な借金体質とは意味合いが異なる。

キャッシュフロー(TTM・億円)

意外にも営業CFはマイナス

純利益が338億円のプラスなのに、営業CFは▲394億円。原因はあと払い・スマートマネーの貸付債権(与信残高3,281億円)が急拡大し、会計上「営業活動での資金の使用」として計上されるため。FCFもマイナス(stockanalysis.com算定)。貸出が伸びている限りこの傾向は続くとみられる。

07収益性 — ROE33%の中身

ROE33.0%(TTM)をデュポン分解で見る。自己資本比率の低さがレバレッジとして効いている。

ROE(TTM)
33.0%
15.7%
売上高純利益率
黒字化・フィンテック寄与で急改善
× 0.32回
総資産回転率
貸付債権の増加で資産が重くなる
× 6.63倍
財務レバレッジ
自己資本比率17.8%の裏返し

平均残高ベースの筆者概算。フィンテック(与信)事業は自己資本比率が下がりやすく、その分レバレッジがROEを押し上げる構造——銀行業に近い会計上の特徴。

ROIC vs WACC — 資本コストを上回っているか

単位:%。stockanalysis.com算定値

ROIC16.9%(TTM)は推定WACC(8〜9%)を上回り価値創造の状態。FY2025期のROIC23.5%からは低下しており、資産(貸付債権)の拡大速度に収益成長が追いついていない可能性は要観察。

💡 やさしく:「集めたお金でどれだけ稼いだか」は合格ラインを超えていますが、貸付事業が急拡大する局面ではこの数字が下がりやすい点は覚えておきましょう。

08会計基準ビュー — IFRS / JGAAP / US-GAAP

メルカリはIFRS採用。フィンテック企業特有の「与信費用」の扱いに注目。

どの「利益」で見るかで印象が変わる(TTM)

単位:億円
  • 「経常利益」区分はなく、営業利益の下は金融損益等のみのシンプルな構造
  • あと払い・スマートマネーの貸倒引当金(与信費用)は営業費用に含まれる。回収率99.4%は良好だが、景気悪化時はこの費用が急増しうる
  • のれんは小規模。大型買収を伴わない自前成長型
  • JGAAPでも損益の骨格は大きくは変わらないが、「経常利益」区分が復活し、営業外の金融損益が明示的に分離される
  • 貸付債権の評価・引当金の計上ルールは日本の消費者金融業の会計慣行と比較する視点が有効
  • US-GAAPでも大差はないが、米国投資家がメルカリを評価する際は米国事業単体の採算性(今回黒字化)が最重要指標になる
  • 米国のBNPL(Buy Now Pay Later)大手Affirm等と比較する際は、貸倒引当金の計上方法の違いに注意
💡 やさしく:メルカリは「フリマアプリ」と「消費者金融」の会計が混ざった珍しい会社。特に貸付関連の費用(与信費用)は、景気が悪くなると急に膨らむ可能性がある点を覚えておくと、決算の見方が変わります。

09同業比較 — 高PBRが示す期待値

楽天グループ・LINEヤフー・米eBayと比較(2026/7/17時点)。

メルカリ楽天GLINEヤフーeBay

PBR6.34倍はLINEヤフー(1.02倍)・楽天G(1.93倍)を大きく上回り、eBay(11.3倍)に次ぐ高評価。楽天Gは営業利益率0.58%と低収益、メルカリは黒字化後の成長期待が評価に反映されている構図。

💡 やさしく:同じ「ネットの取引プラットフォーム」でも、赤字続きだった楽天や落ち着いたLINEヤフーと違い、メルカリは「これから伸びる」期待で高い株価がついています。期待が本物かどうかは、フィンテックの成長が続くかにかかっています。

10戦略・課題と改善ポイント

旗印は「フリマ×フィンテック」の両輪成長。焦点は国内GMVの再加速とフィンテックの持続的拡大。

強み Strengths

  • 国内フリマ市場でのブランド・利用者基盤の圧倒的な強さ(MAU約2,300万人)
  • 米国事業がついに黒字化し、全社利益率を押し上げ
  • フィンテックが売上+27%・利益+39億円と最大の成長エンジンに
  • 与信の回収率99.4%と、貸付事業としての足元の健全性

弱み Weaknesses

  • 純利益は黒字でも営業CFがマイナス(貸付急拡大の裏返し)
  • 自己資本比率17.8%と財務基盤は薄め
  • 国内GMV成長率が会社目標(10%)に届かない年もある(FY25は+4%)
  • 米国事業は黒字化したが売上自体は伸び悩み(4年横ばい)

機会 Opportunities

  • フィンテックの継続拡大(あと払い・スマートマネー・メルコイン)
  • 国内GMV成長率の再加速(直近四半期+16%)
  • 米国事業の黒字化定着後、再成長投資に転じる余地
  • AIを活用した出品・検索・価格提案の高度化

脅威 Threats

  • 景気悪化時の与信費用(貸倒れ)急増リスク
  • フリマ市場の成熟・競合(楽天ラクマ等)の存在
  • 暗号資産(メルコイン)規制の変化
  • 米国再成長への投資再開で再び赤字化するリスク

改善ポイント(優先度つき)

最優先

与信リスク管理の高度化

与信残高が前年比+45%と急拡大中。回収率99.4%を維持したまま規模を拡大できるかが、フィンテック事業の生命線。

最優先

国内GMV成長率の再加速

FY25の+4%から直近四半期+16%へ改善。この勢いが本物かどうかが全社成長率を左右する。

中期

米国事業の次の一手

黒字化は達成したが売上は横ばい。コスト管理から再成長へどう舵を切るかが問われる。

中期

キャッシュフロー構造の説明責任

営業CFマイナスは「悪い兆候」に見えやすい。投資家・一般株主への説明(与信拡大の裏返しである旨)の継続が信頼維持に必要。

11投資メリット・デメリット

「黒字化とフィンテック成長は本物。論点はPBR6倍が織り込む成長ペースをこの先も維持できるか」が本レポートの総括。

▲ 強気材料(メリット)

  • 営業利益率9.3%→19.5%(TTM)へ倍増。米国黒字化とフィンテックの相乗効果
  • フィンテック売上+27%・コア営業利益+39億円と最大の成長ドライバー
  • 国内GMV成長率が直近四半期+16%まで加速
  • ROIC16.9%とWACCを上回る資本効率
  • 与信回収率99.4%と貸付の質は現状良好

▼ 弱気材料(デメリット)

  • 営業CFがマイナスで、財務体力(自己資本比率17.8%)は薄め
  • 与信急拡大局面での貸倒リスクは景気次第で急変しうる
  • PBR6.34倍は同業内で最高水準。成長鈍化時の調整幅が大きい
  • 米国事業は黒字化したが、売上自体の拡大局面にはまだ入っていない
  • 無配のため、株価下落時のインカム面の下支えはない

3つのシナリオ(筆者試算)

強気シナリオフィンテック+30%成長継続・国内GMV+16%維持でEPS260円×PER28倍=7,300円水準
中立シナリオ現在のペースが概ね持続、EPS200円×PER23倍=4,600円前後(現値近辺)
弱気シナリオ与信費用悪化・GMV成長鈍化でEPS140円×PER18倍=2,500円前後
💡 はじめての方への総括:チェックポイントは3つ。①国内GMV成長率(+16%が続くか)、②フィンテックの与信の質(回収率99%台を維持できるか)、③米国事業の次の一手(黒字を保ちながら再成長できるか)。「黒字転換」という大きな山を越えた直後の会社であり、ここからの実行力が問われる局面です。