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オイシックス・ラ・大地 3182

東証プライム日本基準(JGAAP)3月決算 小売(食品宅配・給食)データ基準日 2026/7/17

「作った人が見える」安心食材のサブスク宅配EC(B2C)と、給食・フードサービス(B2B)を両輪で運営する食のプラットフォーム企業。2026年に原点回帰して「オイシックス株式会社」へ商号変更。

💡 はじめての方へ:ネットで頼むと農家さんの顔が見える野菜や、20分で2品作れる「ミールキット」が毎週届く会社です。2024年に給食大手シダックスを買収して学校・病院の給食にも参入。2025年10月には給食と関係の薄い「車両運行事業」を売却して、「食」に集中する体制に生まれ変わりました。

01企業カルテ

2026年3月期実績と現在の市場評価のスナップショット。

売上高(26/3期)
2,514億円
前年比 −1.8%(車両売却除くと +3%
EBITDA
129億円
+0.9%
営業利益
73億円
+6.9%(利益率2.9%)
純利益
45億円
+24.4%
ROE
16.4%
+3.6pt
時価総額
575億円
株価1,556円(26/7/17)
PER(会社予想)
11.8
PBR 1.98倍・利回り1.67%
Oisix会員数
35.1万人
ARPU 月1.2万円
成長性
全社売上は横ばいだがB2B給食は+9%成長。会員数は伸び悩み
収益性
営業利益率2.9%と薄利。ただしB2B改善で上昇トレンド
財務健全性
事業売却で借入返済。Net Debt/EBITDA 0.28倍と身軽
株主還元
上場来初配当を実施、配当性向15%→20%へ引き上げ
バリュエーション
PER11.8倍。中計EPS175円が実現すれば割安な水準

※5軸評価は本レポート筆者の見解であり、投資勧誘ではありません。

💡 読み方:「売上2,514億円あるのに本業のもうけ(営業利益)は73億円だけ?」と驚くかもしれません。食品を扱う会社は仕入と配送にお金がかかるので、もともと利益率が低い業界です。大事なのは方向:利益率が改善中で、借金も減り、初めて配当も出せるようになった=会社の体質が良くなってきている、と読みます。

02ビジネスモデル図解

モノ()・カネ()・情報()の流れで見る、オイシックスの稼ぎ方。

カネの流れ モノの流れ 情報の流れ
起点有機・安心食材の宅配EC
定説生鮮食品は、目で見て選ばないと不安
逆説作った人と作り方が見えれば、目で見なくても安心して買える

核は「生産者の情報ごと売る」こと。実物を見られない宅配ECの弱点を、生産者の顔・栽培情報・レシピという「情報」で補い、サブスクで安定収益化する。さらに家庭向けで築いた調達・製造・物流網を、シダックス買収で得た給食事業(B2B)と共通化し、「家の食卓」と「施設の食堂」の両方で稼ぐモデルへ進化している。

💡 やさしく:ふつうの八百屋さんは「野菜」を売りますが、この会社は「誰がどう作ったかという安心」もセットで売っています。だからスーパーより高くても選ばれる。そして一度会員になると毎週自動的に届く(サブスク)ので、売上が安定するのが強みです。

03成長の歩み — M&Aで14年で17倍

大地を守る会(2017)・らでぃっしゅぼーや(2018)・シダックス(2024)の統合で規模を拡大。2025年10月に車両事業を売却し「食」へ集中。

売上高の推移(13/3期〜26/3期)

単位:億円 ■青の濃い棒=直近期
💡 見方:棒がジャンプしている年は会社を買収した年です。2025年の大ジャンプはシダックス(給食大手)の買収。2026年に少し下がったのは「車両運行事業を売ったから」で、悪い縮小ではなく、狙った整理です。

Oisix会員数の推移(半期ごと・千人)

ピーク39.9万人 → 直近35.1万人。中期目標は60万人(30/3期)

会員数×ARPU(月1.2万円)がB2C売上の源泉。直近2年は35〜36万人台で横ばいが続く。

04セグメント — どの事業で稼いでいるか

売上の柱は「宅配(B2C)」と「給食(B2B)」。稼ぐ力(EBITDAマージン)はOisixが圧倒的に高い。

売上構成(26/3期・億円)

連結売上高 2,514億円(連結調整▲29億円を除く内訳)

セグメント別 EBITDAマージン(26/3期)

セグメントEBITDA ÷ セグメント売上

読みどころ

  • Oisix(13.9%)が利益の心臓部。ミールキット中心で粗利が厚い
  • B2B給食はEBITDA +62%と急改善。運営標準化と価格適正化が進み、マージン3.3%→4.9%→6.2%(27/3期計画)へ
  • 大地・らでぃっしゅ・Purple Carrotは売上−9%と縮小。てこ入れ対象
  • 車両運行(12.8%)は高マージンだったが「食」に非中核のため売却
💡 やさしく:会社の中に「もうけ頭のOisix」「伸び盛りの給食」「元気のない老舗ブランド」が同居しています。投資家が見ているのは、伸び盛りの給食がどこまで利益体質になれるかです。

05財務3表ビジュアル

PL(損益計算書)・BS(貸借対照表)・CF(キャッシュフロー)を図で読む。

PL滝グラフ — 売上2,514億円はどこへ消えるか(26/3期)

単位:億円。原価・販管費は四半期開示の合算による概算
💡 やさしく:2,514億円売っても、食材の仕入(原価)で7割、物流や人件費・広告(販管費)で残りのほとんどが消え、本業のもうけは73億円(2.9%)。食品業はこういう「薄利多売」の構造です。だからこそ後述の「利益率改善」が株価のカギになります。

BS比例図 — 財産と借金のバランス(26/3末)

総資産1,081億円。箱の高さ=金額

自己資本比率25.3%(前年22.6%)。車両事業売却でのれんは148億→77億円へ半減し、借入も334億→249億円に圧縮。

CFウォーターフォール — 現金の増減(26/3期)

単位:億円。営業CF+93億、FCF+113億円(5期ぶり黒字)

投資CFがプラスなのは車両その他事業の売却代金によるもの。売却資金で借入返済(財務CF−92億円)。

💡 やさしく:「本業で93億円の現金を稼ぎ、事業を売って得たお金で借金を返した」年。家計でいえば、副業をやめて退職金をもらい、住宅ローンを繰上返済したイメージです。

売上高と営業利益の推移(22/3期〜27/3期予)

単位:億円。薄い色=会社予想

営業利益率の推移

低利益率だが27/3期は3.5%へ改善計画

車両事業売却の影響を除くと、26/3期は売上+3%・営業利益+21%、27/3期計画は売上+6%・営業利益+46%と、実態は増収増益の加速局面。

06収益性 — ROEを分解する

ROE16.4%の中身をデュポン分解で見ると、「薄利×高回転×高レバレッジ」型だとわかる。

ROE(26/3期)
16.4%
1.8%
売上高純利益率
薄利(食品業の宿命)
× 2.07回
総資産回転率
資産効率は高い
× 4.41倍
財務レバレッジ
借入を活用(縮小中)

平均残高ベースの概算。ROICは9.0%で、一般的な資本コスト(5〜7%程度と推定)を上回り、価値創造の状態にある。

💡 やさしく:ROE16.4%は「株主のお金100万円で年16.4万円稼いだ」という意味で、日本企業の平均(9%前後)より高い水準。ただし中身は「うすいもうけを、たくさん回して、借金のテコで増やす」タイプなので、もうけの薄さが改善するかが今後の注目点です。

ROE・ROICの推移(%)

24/3期 → 26/3期
ROEROIC

07会計基準ビュー — JGAAP / IFRS / US-GAAP

同じ会社でも会計ルールで利益は変わる。オイシックスは日本基準(JGAAP)採用。最大の差はのれんの扱い。

「のれん償却」で営業利益はこう変わって見える(26/3期)

単位:億円
  • のれん(買収の上乗せ代金)を20年以内で規則償却。当社は26/3期に約12億円を費用計上済み
  • つまり開示されている営業利益73億円は「のれん代を払い続けた後」の保守的な数字
  • オペレーティングリース(賃借の物流センター等)は資産計上されず、賃借料として費用処理
  • IFRSではのれんを償却しない。営業利益は約85億円相当に見え、PERも実質1割ほど割安に映る
  • 代わりに毎年減損テストを行い、悪化時は一括で大きな損失が出る(じわじわ vs 一気にの違い)
  • IFRS16でリースが資産計上され、EBITDAはさらに大きく見える
  • 実は会社自身も中長期目標で「調整後EPS」(のれん・無形償却の足し戻し)を採用しており、IFRS的な実態収益力での評価を投資家に促している
  • US-GAAPもIFRS同様、のれんは非償却+減損テスト方式(営業利益は約85億円相当に見える)
  • リースはASC842で資産計上(IFRSとほぼ同様だが費用の見え方が微妙に異なる)
  • 米国の同業(HelloFresh等は独IFRS、Sysco等はUSGAAP)と比較する際は、この差を揃えてEBITDAやEV/EBITDAで見るのが実務的
💡 やさしく:「のれん」は会社を買収したときの上乗せ代金。日本ルールでは毎年少しずつ費用として引く(=利益が小さく見える)、海外ルールでは引かない(=利益が大きく見える)。同じ会社でもルールで利益が1割以上違って見えるので、海外企業と比べるときは要注意です。

08同業比較 — 市場はどう値付けしているか

完全な同業が存在しないため、「宅食・外食のワタミ」「食品サブスクD2Cのベースフード」と比較(2026/7/17時点)。

オイシックスワタミベースフード

オイシックスのPER11.8倍は、成熟企業のワタミ(9.2倍)と高成長期待のベースフード(53.1倍)の間。市場は「安定はしているが高成長はまだ確信していない」という値付け。中計EPS175円(CAGR11%)を市場が信じればPERの切り上がり余地があり、逆に会員数減が続けばワタミ型の評価に近づく。

💡 やさしく:PERは「人気投票の倍率」のようなもの。ベースフードの53倍は「将来に超期待」、ワタミの9倍は「安定だけど成長は控えめ」という市場の見方。オイシックスの11.8倍は中間で、「これから成長を証明したら見直される」ポジションです。

09戦略・課題と改善ポイント

中長期目標(30/3期):EPS175円(CAGR11%)・売上3,250億円・EBITDA190億円。B2B給食のロールアップ型M&Aが成長エンジン。

強み Strengths

  • サブスクの安定収益(B2C約45万世帯×月1.2万円、B2B約2,500施設)
  • 生産者直結ネットワークと「顔が見える」ブランド信頼
  • Kit Oisix・超ラクKit=時短ミールキットの先行ブランド(マージン13.9%)
  • B2C×B2Bで製造・物流・調達を共通化できる独自ポジション

弱み Weaknesses

  • 全社営業利益率2.9%の薄利構造
  • Oisix会員数が2年間35万人前後で伸び悩み(ピーク39.9万)
  • のれん・無形資産の償却負担(のれん償却 年約12億円)
  • 大地・らでぃっしゅ・Purple Carrotが売上−9%と縮小

機会 Opportunities

  • 給食市場は寡占化が進んでおらず再編余地大(M&A主導権)
  • 高齢者施設向け完全調理品「元気ごはん」等、人手不足の追い風
  • 共働き・時短ニーズ拡大(超ラクKit 250メニュー、デリOisix累計300万食)
  • B2C×B2B統合シナジー(共同調達・共同物流)の本格顕在化はこれから

脅威 Threats

  • 食材費・人件費の高騰継続(改善効果を相殺するリスク)
  • ネットスーパー・フードデリバリーとの競争(価格では劣位)
  • ヤマト運輸への配送依存(値上げ要請リスクを会社も明記)
  • 節約志向による解約・ARPU低下リスク

改善ポイント(優先度つき)

最優先

Oisix会員数の再成長

2年間35万人前後で横ばい(中期目標60万人)。「子育て前半〜食べ盛り」世代への価格・量・時短提案(超ラクKit・たすだけシリーズ)で再加速できるかが最大の論点。

最優先

B2B統合シナジーの完遂

給食子会社の統合は26〜27年に進行中。運営標準化でB2B EBITDAマージンを4.9%→6.2%(27/3期計画)→中期的にさらに引き上げる実行力が問われる。

中期

B2Cその他ブランドの立て直し

大地を守る会・らでぃっしゅぼーや・Purple Carrotは売上−9%。ブランド整理・統合の判断も選択肢に入る。

中期

配送依存リスクの管理

ラストワンマイルの大半をヤマト運輸に委託。値上げ耐性の確保と、B2C×B2B共同物流による効率化が課題。

10投資メリット・デメリット

「事業を整理して財務はきれいになった。次は本業の成長を証明する局面」というのが本レポートの総括。

▲ 強気材料(メリット)

  • 車両事業売却で「食」に集中。ROE16.4%・ROIC9.0%・Net Debt/EBITDA 0.28倍・FCF113億円と財務が激変
  • 上場来初配当→配当性向20%へ引き上げ。EPS175円目標(CAGR11%)への強いコミット
  • B2B給食は寡占化未了の再編市場。ロールアップM&Aの主導権を握れる位置
  • 車両除きベースでは売上+6%・営業利益+46%(27/3期計画)と実は高成長局面
  • のれん償却(年約12億円)を足し戻した実態収益力で見ればPER11.8倍はさらに割安

▼ 弱気材料(デメリット)

  • 本業B2Cの会員数が伸びていない。成長ストーリーの核が痩せると中計の説得力が低下
  • 営業利益率2.9%と薄く、食材費・人件費・配送費の高騰を転嫁しきれないリスクが常在
  • 26/3期純利益には事業売却益・税務最適化の一時要因が含まれ、実力純益はやや低め
  • 給食M&Aで高値掴み・統合失敗となれば、のれんリスクが再び積み上がる

3つのシナリオ(筆者試算)

強気シナリオB2B M&Aと会員再成長が両立、EPS175円を前倒し達成 → PER15倍なら株価2,600円水準
中立シナリオB2B改善は進むがB2C横ばい → EPS150円前後×PER11〜12倍=1,700〜1,800円
弱気シナリオ食材高騰の転嫁失敗・会員減少 → EPS100円割れ×PER10倍=1,000円前後
💡 はじめての方への総括:この会社を見るときのチェックポイントは3つだけ。①Oisix会員数(35.1万人が増え始めるか)、②給食事業の利益率(4.9%→6.2%への改善が計画どおり進むか)、③EPS(1株あたり利益。2030年に175円の会社目標)。四半期決算のたびにこの3つを見れば、プロと同じ目線でこの会社を追いかけられます。