🕒 最終更新: 2026-09-04
大成建設 Taisei Corporation・1801
東証プライムJGAAP3月決算
スーパーゼネコン27年3月期第1四半期まで反映
スーパーゼネコン4位。自らはほとんど施工せず、何百もの専門工事業者を束ねる「現場のオーケストラ指揮者」。2026年3月期は売上高2兆890.9億円・営業利益1,879.7億円(前期比+56.4%・過去最高益)を記録した。受注残高(次期繰越高)は4兆692.0億円と過去最高・前期比+18.2%に積み上がり、数年先まで仕事が見えている。ただし株価は52週高値20,680円から安値12,085円まで41.6%下落しており、金利上昇・資材高騰への警戒が同時に出ている。
💡 はじめての方へ:「大成建設がビルを建てる」と聞くと、社員が現場でコンクリートを流し鉄骨を組んでいるイメージを持つかもしれません。しかし実際に手を動かすのは、型枠・鉄筋・電気・配管など何百もの専門工事会社(下請け)です。大成建設が持つのは、発注者との契約・設計・工程管理・品質管理という「現場を統括する力」と「最後までやり切る信用」——電車を運転する会社ではなく、オーケストラの指揮者のような存在です。
※2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月期)決算=2026年8月6日発表を反映済み(→④ 直近四半期)。通期ベースの財務3表・収益性・会計基準ビューは2026年3月期通期(2025年4月〜2026年3月)の確定実績、株価・同業比較は2026年9月3日終値にもとづく。
01企業カルテ
2026年3月期通期実績(2026年5月14日発表)と直近の市場評価。
売上高(26年3月期)
20,890.9億円
前期比▲3.0%・建築事業の完成工事高減少が主因
営業利益
1,879.7億円
営業利益率9.0%・前期比+56.4%で過去最高
純利益
1,700.0億円
前期比+37.3%・EPS 1,025.53円
受注残高(次期繰越高)
40,692.0億円
前期比+18.2%・売上高の1.9年分
自己資本比率
34.9%
東洋建設の連結子会社化で総資産が拡大し前期35.7%から低下
PER(会社予想)
13.79倍
PBR2.23倍・株価12,775円(26/9/3終値)
ROIC(筆者試算)
11.7%
推定WACC約5%を上回る
○
成長性
売上高は前期比▲3.0%だが、受注残高は+18.2%で過去最高。27年3月期第1四半期は売上+18.4%・営業利益+15.3%と加速
◎
収益性
営業利益率9.0%は24年3月期の1.5%から急回復。ただし同業の鹿島7.8%・大林組7.5%と比べればなお改善余地
△
財務健全性
自己資本比率34.9%は同業4社で最も低い(大林組40.0%・鹿島39.0%・清水建設36.8%)
◎
株主還元
27年3月期予想配当は年380円(配当性向41.0%)へ増配。中期経営計画で下限付き配当性向を30%→40%へ引き上げ
○
バリュエーション
PER13.79倍・PBR2.23倍は同業では清水建設に次いで妥当感があるが、株価は52週高値から41.6%下落した後の水準
※5軸評価は本レポート筆者の見解であり、投資勧誘ではありません。株価12,775円・時価総額20,847.0億円・PER13.79倍・PBR2.23倍・配当利回り2.97%はいずれも2026年9月3日終値ベース(Yahoo!ファイナンス)。
💡 読み方:営業利益率9.0%という数字だけ見ると地味に見えますが、この会社は3年前(2024年3月期)に営業利益率がわずか1.5%まで落ち込んでいました。資材価格や人件費の高騰を工事価格に転嫁しきれず、利益がほとんど残らない状態だったのです。そこから2年でここまで回復したのが2026年3月期の実像です。
02ビジネスモデル図解
モノ(緑)・カネ(黄)・情報(青)の流れで見る、大成建設の稼ぎ方。矢印にカーソルを合わせると実額が出ます。
カネの流れ
モノ・サービスの流れ
情報の流れ
起点1873年(明治6年)創業の大倉組が源流。1946年に大成建設として発足し、以来一貫して「元請けゼネコン」として国内外の建築・土木・開発事業を手がける
定説ゼネコンは自社の職人・重機で建物を建てる会社
逆説大成建設は自らほとんど施工しない。実際に鉄骨を組み、コンクリートを打つのは何百もの専門工事業者(下請け)で、大成建設が持つのは発注者との契約・設計・工程管理・品質管理という「現場を統括するマネジメント能力」と「最後までやり切る信用」だけ。2026年3月期の完成工事総利益率(粗利率)はわずか15.4%——大部分は下請けへの外注費として出ていく。それでも受注残高(次期繰越高)は4兆692.0億円と売上高の1.9年分に達し、数年先まで仕事が積み上がっているという「見えている収益」の強さがこの業態の本質
大成建設の売上は3つのセグメントで構成される。建築事業は外部売上高1,248.6億円ではなく1兆2,485.9億円(連結売上高の59.8%)で最大の柱、土木事業6,797.4億円(32.5%)、開発事業1,441.7億円(6.9%、自社保有ビルの賃貸・分譲)。開発事業はセグメント利益率が高く(26年3月期16.6%)、施工の薄利を補う役割を持つ。
💡 やさしく:大成建設を「建物を作る工場」だと考えると誤解します。実際には発注者(施主)とお金を受け取る契約を結び、その代金の大部分を専門工事業者への外注費として払い出す「中継点」です。手元に残るのは工事代金の15%程度の粗利、そこからさらに人件費や本社経費を引いた9.0%が営業利益として残ります。薄い利幅を、4兆円超の受注残高という「量」でカバーするビジネスです。
03成長の歩み — 資材高騰による「利益消失」から2年でのV字回復
2024年3月期に営業利益率が1.5%まで落ち込んだ後、2026年3月期に9.0%まで回復。5期の推移を見ると、売上の量的拡大と利益率の急変動が同時進行してきたことがわかる。
売上高の推移(22年3月期〜26年3月期)
単位:億円 ■濃い棒=直近期。3月決算
営業利益率の推移
24年3月期の落ち込みは資材高騰・工事損失引当金の積み増しによるもの
22年3月期6.2%→23年3月期3.3%→24年3月期1.5%と3期連続で低下した後、25年3月期5.6%・26年3月期9.0%と2期連続で急回復。24年3月期は資材価格・労務費の高騰を請負金額に転嫁しきれず、工事損失引当金を積み増した年。26年3月期は逆に、建築事業の完成工事総利益が改善し(引当金の取り崩しを含む)、セグメント利益が前期比+590.6%となったことが牽引した。
ROE・自己資本比率の推移
単位:%
ROEは22年3月期8.4%→24年3月期4.6%まで低下した後、26年3月期18.7%へ急回復。一方で自己資本比率は22年3月期44.4%から26年3月期34.9%まで一貫して低下しており、純利益の急回復と総資産の拡大(東洋建設の連結子会社化を含む)が同時に進んだ結果である。
04直近四半期(2026年4〜6月期・27年3月期第1四半期)— 増収増益は継続、ただし土木事業の利益率が悪化
2026年8月6日発表。売上高5,212.2億円(前年同期比+18.4%)・営業利益453.2億円(+15.3%)と通期予想に対して順調な進捗(それぞれ進捗率21.5%・24.1%)を見せた一方、土木事業の営業利益は前年同期比▲37.9%と悪化しており、セグメント間で明暗が分かれた。
売上高
5,212.2億円
前年同期比 +18.4%・全セグメントで増収
営業利益
453.2億円
+15.3%・通期予想比進捗率24.1%
純利益
309.1億円
+4.8%・EPS 189.62円
売上高進捗率
21.5%
通期予想2兆4,200億円に対して
自己資本比率
36.8%
前期末34.9%から1.9pt改善(資産圧縮)
土木事業営業利益
15.3億円
前年同期比▲37.9%・利益率低下
建築事業営業利益
25.0億円
前年同期比+199.1%
通期業績予想
修正なし
2026年5月14日公表の予想を据え置き
※進捗率はいずれも決算短信の記載値と一致(売上21.5%・営業利益24.1%・経常利益24.5%・純利益20.5%)。セグメント別数値は決算短信の億円単位表記(会社公表)。2027年3月期通期業績予想(2026年5月14日公表から修正なし):売上高24,200.0億円・営業利益1,880.0億円・経常利益1,870億円・純利益1,510.0億円・年間配当380.00円。
四半期業績の前年同期比較 — 増収増益だが利益の伸びは売上の伸びより緩やか
単位:億円
売上高は4,403.4億円→5,212.2億円へ+18.4%伸びた一方、営業利益は392.9億円→453.2億円で+15.3%にとどまり、増収率が増益率を上回る「増収率>増益率」の局面に入っている。前年同期(26年3月期第1四半期)は逆に営業利益が+109.1%という急回復の年だったため、伸び率そのものは鈍化して見えるが、絶対額としては過去最高水準の四半期利益を更新した。
セグメント別営業利益(27年3月期第1四半期・前年同期比)
単位:億円。会社発表の億円単位ベース
土木事業は売上高が連結子会社の増加(東洋建設)で+19.5%伸びたにもかかわらず、当社・連結子会社の利益率低下により営業利益は▲37.9%(24.7億円→15.3億円)。会社は「当社及び連結子会社の利益率低下により完成工事総利益が減少した」と説明しており、通期の焦点はこの土木事業の採算改善が第1四半期の一時的な振れで終わるか、通年のトレンドになるかにある。対照的に建築事業は前年同期比+199.1%(8.4億円→25.0億円)と大きく伸び、26年3月期通期に続き建築の利益率好転が続いている。
💡 やさしく:同じ「増収増益」でも中身は一様ではありません。今回は建築(ビル)は絶好調、土木(トンネル・橋など)はやや苦戦という構図でした。工事は受注してから完成まで数年かかるため、今の採算は数年前に受注した契約の値付けが跳ね返ってきた結果です。土木事業の悪化が一時的な工事の巡り合わせなのか、価格転嫁が追いついていない構造問題なのかは、次の四半期以降を見て判断する必要があります。
05財務3表ビジュアル
薄利多売のP/L、東洋建設の連結子会社化でのれんが急増したB/S、そして資材高騰の反動でキャッシュが急回復したC/F——ゼネコンの財務的な特徴が3枚に表れる。
PL滝グラフ — 売上高2兆890.9億円はどこへ消えるか(26年3月期)
単位:億円
💡 やさしく:2兆890.9億円の売上に対し、下請けへの外注費や材料費を含む売上原価が1兆7,590.4億円と約84%を占めます。残った売上総利益3,300.6億円から、人件費・本社経費などの販管費1,420.8億円を引いた1,879.7億円が営業利益です。製造業と違って在庫をほとんど持たない代わりに、工事1件ごとの見積り精度がそのまま利益率を左右する——それがゼネコンの構造です。
BS比例図 — 総資産2兆7,145.5億円の中身(26年3月期末)
箱の高さ=金額。自己資本比率34.9%
前期末比+2,857億円(+11.8%)の資産拡大は、主に東洋建設株式会社の連結子会社化によるもの。のれんは759.5億円と前期末80.5億円から約9.4倍に急増しており、買収由来の資産が総資産の重みを増した。有利子負債は4,634.0億円。
キャッシュフロー(26年3月期)
単位:億円。営業CF1,472.9億円
営業CFは前期の▲138.4億円(支出超)から1,472.9億円の収入超へ急回復。工事損失引当金の取り崩し等が響いた前期から一転、利益回復がそのままキャッシュに表れた。投資CFは東洋建設の株式取得(▲1,504.8億円)を含み▲1,958.9億円と大きな支出超。財務CFは有利子負債の増加により243.9億円の収入超。営業CF1,472.9億円から設備投資775.8億円を引いたFCFは697.1億円(26年3月期)で、前期のマイナスから黒字転換した。
06収益性 — ROE18.7%をデュポン分解する
大成建設のROE回復は、レバレッジの拡大ではなく、ほぼ純粋に「利益率の回復」によって作られている。
=
8.1%
売上高純利益率
24年3月期は2%台前半まで低下していた
× 0.81回
総資産回転率
東洋建設連結で総資産が拡大し回転はやや低下
× 2.84倍
財務レバレッジ
自己資本比率34.9%はゼネコン4社で最も低い
計算すると8.14%×0.8125回×2.835倍=18.8%(会社発表のROE18.7%とほぼ一致、丸め差は平均残高の取り方による)。ビザ(V)(ROE52.1%=純利益率50.1%というほぼ1要素でつくる「利益率型」)やトヨタ(厚利低回転型)と比べると、大成建設は低回転・中レバレッジ型——工事1件の規模が大きく資産回転が遅い一方、自己資本比率の低さ(レバレッジの高さ)が同業内での相対的な弱みになっている。
ROIC vs WACC — 資本コストを上回っているか(筆者試算)
単位:%。26年3月期末時点
ROIC=NOPAT(営業利益1,879.7億円×(1−実効税率29.05%)=1,333.6億円)÷投下資本(自己資本9,480.8億円+有利子負債4,634.0億円−現金及び現金同等物2,729.7億円=1兆1,385.0億円)=11.7%。推定WACC約5%(株主資本コスト6.5%・有利子負債の税引後コスト0.69%を時価総額ベースの資本構成で加重)を上回る。ただしROIC11.7%はROE18.7%より大きく低い——自己資本比率の低さ(レバレッジ)がROEを押し上げている構造がここでも見える。
💡 やさしく:ROIC11.7%は「事業に投じたお金1に対して毎年0.117稼ぐ」という意味です。同じ建設業のオイシックスやトヨタと比べれば地味な数字ですが、資本コスト(お金を集めるコスト)の5%を上回っているので、事業を続けるほど価値が積み上がる状態にはあります。
07会計基準ビュー — JGAAP / IFRS / US-GAAP
大成建設は日本基準(JGAAP)採用。工事進行基準にもとづく収益認識と、のれんの規則償却が読み方の鍵になる。
どの「利益」で見るかで印象が変わる(26年3月期)
単位:億円
詳しく見る:会計基準の技術的差異(JGAAP/IFRS/US-GAAP)
- 売上高は工事進行基準(履行義務の充足に応じた収益認識)で計上。工事契約の見積り原価が変わるたびに、過年度の利益が遡って修正されうる——24年3月期の利益率急落はこの「工事損失引当金の積み増し」が主因
- のれん759.5億円(東洋建設の連結子会社化により前期末80.5億円から急増)は20年以内の規則償却が必要。JGAAPでは毎期数十億円規模の償却費が発生し続ける
- 「経常利益」という段階損益があり、営業利益に持分法投資損益・受取配当金等の営業外損益を加減する。26年3月期の経常利益1,957.8億円は営業利益1,879.7億円を77.8億円上回る
- 特別利益に投資有価証券売却益552.3億円を含む——政策保有株式の縮減方針にもとづく売却で、本業の実力とは別枠として見る必要がある
- IFRSではのれんは非償却・年1回の減損テストのみ。759.5億円ののれんを規則償却しない場合、営業利益はJGAAPより数十億円押し上げられる
- 「経常利益」の区分がなく、営業利益の下に金融損益がそのまま並ぶ。持分法投資損益の扱いも表示区分が異なりうる
- 政策保有株式(投資有価証券)の売却益はIFRSでは基本的にその他の包括利益(OCI)に区分され、純損益(P/L)に計上されない場合がある——JGAAPで特別利益552.3億円が当期純利益を押し上げている構造は、IFRSでは表れにくい
- US-GAAPものれんは非償却・減損テストのみで、IFRSと同様に規則償却の費用は発生しない
- 「経常利益」に相当する段階がなく、日本株の経常利益ベースの比較指標(例:経常利益率)をそのまま使えない
- 建設業の収益認識(Percentage-of-Completion)はASC606のもとでも近い考え方だが、工事損失引当金の計上基準の細部が異なりうる
💡 やさしく:大成建設の「利益」は、契約した工事の進み具合に応じて少しずつ計上されます。しかし工事の途中で材料費が想定より上がると、過去に計上した利益を後から取り消す(引当金を積む)必要が出てきます。2024年3月期の利益急落は、まさにこの「後出しの下方修正」が積み重なった結果。逆に言えば、2026年3月期の急回復は、その調整がひと段落し、新しい契約の値付けが適正化された表れでもあります。
08同業比較 — スーパーゼネコン4社の中での立ち位置
売上高首位の鹿島建設、自己資本比率首位の大林組、PER・PBRが最も低い清水建設と比較する(2026年9月3日時点)。
営業利益率の比較
単位:%。26年3月期実績
大成建設の営業利益率9.0%は4社で唯一9%台に到達し、鹿島建設7.8%・大林組7.5%・清水建設5.8%を上回る。ただし26年3月期の増益率で見ると大林組(+36.6%)・清水建設(+67.1%)が大成建設(+56.4%)に匹敵する伸びを見せており、4社そろって「利益率回復期」にあることが同業比較から読み取れる。売上高首位は鹿島建設(3兆672.8億円、初の3兆円超)で、大成建設(2兆890.9億円)の1.5倍の規模。
💡 やさしく:ゼネコン4社を並べると、「規模の鹿島、利益率の大成、財務健全性の大林組、割安感の清水建設」という色分けが見えてきます。どの会社が優れているというより、それぞれの強みが違う業界です。
バリュエーション・財務健全性の比較
2026年9月3日時点
自己資本比率は大林組40.0%・鹿島建設39.0%・清水建設36.8%・大成建設34.9%と4社で最も低い。ROEは大林組14.4%が最も高く、大成建設18.7%は実は4社中トップだが、これは自己資本の薄さ(レバレッジの高さ)も寄与している点に注意が必要(本ページ⑥参照)。バリュエーションは清水建設がPER9.79倍・PBR1.60倍と4社で最も割安、大成建設はPER13.79倍・PBR2.23倍で鹿島(13.45倍・1.66倍)・大林組(13.35倍・1.68倍)とほぼ並ぶ水準にある。配当利回りは清水建設3.23%・大林組3.08%・鹿島2.97%・大成建設2.97%といずれも3%前後。
09戦略・課題と改善ポイント
過去最高益の裏で、①財務健全性の相対的な弱さ、②土木事業の採算悪化、③株価の大幅下落という3つの論点が並走している。
強み Strengths
- 受注残高4兆692.0億円(過去最高・前期比+18.2%)で数年先までの収益が高い視認性を持つ
- 営業利益率9.0%は同業4社で最高水準(鹿島7.8%・大林組7.5%・清水建設5.8%)
- 27年3月期第1四半期も増収増益(売上+18.4%・営業利益+15.3%)が継続
- 配当性向を「下限付き30%」から「下限付き40%」へ引き上げ、株主還元を強化する方針を明示
弱み Weaknesses
- 自己資本比率34.9%は同業4社で最も低く、財務健全性の面で見劣りする
- 27年3月期第1四半期は土木事業の営業利益が前年同期比▲37.9%と悪化。会社は「利益率低下」とのみ説明しており、原因の詳細開示が乏しい
- 東洋建設の連結子会社化によりのれんが759.5億円まで急増(前期末80.5億円の約9.4倍)。JGAAPでは今後20年以内の規則償却負担が発生する
- 2023年に公表された札幌市内の超高層ビル施工不良問題(損失約240億円・竣工遅延、報道ベース)は、品質管理体制への信頼という点で長期的な論点として残る
機会 Opportunities
- 再開発・データセンター・半導体工場など、大型建築案件の受注機会が国内で拡大基調
- 開発事業(自社保有ビルの賃貸・分譲)はセグメント利益率が相対的に高く、施工の薄利を補う収益源として拡大余地
- 27年3月期の配当性向引き上げ(下限40%)は、株主還元による評価改善(PER・PBRの底上げ)につながりうる
脅威 Threats
- 中東情勢の混乱に伴う資材価格の高騰リスク(日本経済新聞など報道)。24年3月期と同じ利益率悪化の再燃リスク
- 金利上昇による住宅・不動産関連需要の減速懸念(2026年4月に変動型住宅ローン金利が1%超)
- 建設業の時間外労働上限規制(いわゆる2024年問題)による人手不足の長期化
- 株価は52週高値20,680円から安値12,085円まで41.6%下落しており、市場のリスク再評価が続いている
改善ポイント(優先度つき)
最優先土木事業の採算改善
27年3月期第1四半期に営業利益が前年同期比▲37.9%となった原因(個別工事の一時的な巡り合わせか、価格転嫁の遅れという構造要因か)を、次の四半期決算で見極める必要がある。
最優先自己資本比率の改善
34.9%は同業4社で最も低い水準。東洋建設連結によるのれん・総資産の拡大が続く中、内部留保の積み上げと資産効率の両輪での改善が問われる。
中期資材高騰リスクへの再耐性確認
24年3月期の利益率急落と同じ構図(資材高騰の価格転嫁遅れ)が再燃しないよう、工事契約における価格スライド条項の活用状況を注視。
中期のれん償却負担の管理
東洋建設連結で759.5億円ののれんが発生。JGAAPの規則償却により今後20年間、毎期の営業利益を押し下げる要因になる。統合効果(シナジー)でこれを上回る収益貢献を出せるかが焦点。
10投資メリット・デメリット
過去最高益・受注残高最高という「攻め」の実績と、自己資本比率の低さ・株価の大幅下落という「守り」の弱さが同居している。
▲ 強気材料(メリット)
- 営業利益率9.0%は同業4社で最高水準。24年3月期1.5%からの2期連続回復トレンドが継続中
- 受注残高4兆692.0億円(過去最高・前期比+18.2%)で数年分の収益が可視化されている
- 27年3月期第1四半期も増収増益(売上+18.4%・営業利益+15.3%、通期予想据え置き)
- 配当性向を下限40%へ引き上げ、27年3月期予想配当は年380.00円(前期310.00円から+22.6%)
- PER13.79倍・PBR2.23倍は52週高値からの調整後の水準で、株価下落局面としては相対的に見やすい水準にある
▼ 弱気材料(デメリット)
- 自己資本比率34.9%は同業4社で最も低く、金利上昇局面での財務耐性に不安が残る
- 土木事業の営業利益が27年3月期第1四半期に前年同期比▲37.9%と悪化。通期化するかは未確定
- 株価は52週高値20,680円から安値12,085円まで41.6%下落。金利上昇・中東情勢に伴う資材高騰への警戒が続く(日本経済新聞、二次資料)
- 2024年3月期の利益率急落(資材高騰の価格転嫁遅れ)と同じリスクが再燃する可能性が構造的に残る
- 2023年公表の施工不良問題(報道ベース・損失約240億円)は品質管理体制への長期的な信頼問題として残る
3つのシナリオ(筆者試算)
強気シナリオ土木事業の採算が改善し、建築事業の好調が続く。27年3月期EPSが会社予想926.33円を上振れ1,050円、PER16倍=16,800円(現値比+31%)
中立シナリオ会社予想通り。27年3月期予想EPS 926.33円×PER14倍=12,969円(現値比ほぼ横ばい)
弱気シナリオ土木事業の採算悪化が通年化し、資材高騰も再燃。27年3月期EPSが会社予想を下振れ800円、PER11倍=8,800円(現値比▲31%)
※起点となる27年3月期(2027年3月期)の会社予想EPSは926.33円(純利益1,510億円ベース)。PERのレンジ11〜16倍は、同業4社の実績PER(9.79倍〜13.79倍)と大成建設自身の52週の値動きを踏まえた筆者の試算であり、会社予想でも市場コンセンサスそのものでもない。
💡 はじめての方への総括:見るべきは3つ。①土木事業の採算(27年3月期第1四半期の▲37.9%が一時的か構造的か、次の四半期決算で判明する)、②自己資本比率の推移(34.9%からさらに下がるようだと財務面の懸念が強まる)、③株価の下落理由(金利・資材高騰という業界共通の外部要因なのか、大成建設固有の要因なのか)。過去最高益と受注残高最高という実績は本物ですが、「利益は伸びているのに株価は下がっている」というねじれこそが、この銘柄を検討する上での最大の論点です。