CompanyPocketβ 📈 マーケット 🗺 指標マップ 用語集
🕒 最終更新: 2026-09-02

石油資源開発(JAPEX) 1662

東証プライム日本基準(JGAAP)3月決算 E&P×天然ガス・LNG×電力データ基準日 2026/9/1

国内最大の石油・天然ガス開発会社。国内E&Pを祖業に、天然ガス・LNGパイプライン網、火力・バイオマス発電まで一気通貫で展開する。2026年3月期は原油・ガス価格下落で減収減益となったが、2027年3月期は中東情勢の緊迫化による原油価格急騰と北米の大型買収(Verdad Resources Intermediate Holdings LLCの全持分取得)で業績予想を上方修正した。

💡 はじめての方へ:JAPEXは「石油を掘る会社」だけでなく、掘ったガスを家庭に届けるパイプライン・LNG基地・発電所まで持つ「エネルギーの上流から下流まで」を担う会社です。原油価格や為替、中東情勢によって業績が大きく動く点が最大の特徴です。

01企業カルテ

2026年3月期(2025年4月〜2026年3月)通期実績と、2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月)・現在の市場評価。

売上高(FY26)
3,403.4億円
△12.5%・原油ガス価格下落
営業利益(FY26)
389.2億円
△37.2%(利益率11.4%)
親会社株主純利益(FY26)
534.3億円
△34.2%・EPS208.74円
経常利益(FY26)
615.6億円
△4.1%
ROE(自己資本当期純利益率)
9.2%
前期15.7%から低下
ROIC(筆者推定)
5.6%
推定WACC2.0〜2.5%を上回る
自己資本比率
72.8%
前期77.4%から低下(北米大型買収)
時価総額
5,068.8億円
2026/9/1終値ベース
PER(実績)
12.38
PBR0.81倍・配当利回り2.45%
×
成長性
FY26は原油・天然ガス価格下落で売上△12.5%・営業利益△37.2%の減収減益。ただしFY27予想は原油価格上昇と北米買収で増益に転じる見通し
収益性
営業利益率11.4%は資源開発業として高水準。北米セグメントの利益率32.6%が全社を牽引
財務健全性
自己資本比率72.8%は北米大型買収で前期77.4%から低下したが、資源セクターとして依然極めて高い水準
株主還元
FY26年間配当65円・配当性向31.1%は実績目安30%と整合的だが、FY27予想配当45円は増益予想(純利益+21.7%)に対し据え置きで、配当政策の反映は今後の見直し次第
バリュエーション
PER12.38倍・PBR0.81倍はENEOS・出光興産よりPERは高いが、資源国リスクを考えるとINPEXと近い水準

※5軸評価は本レポート筆者の見解であり、投資勧誘ではありません。

💡 読み方:FY26は「原油・ガス価格が下がったので減益」という素直な結果ですが、自己資本比率が下がっているのは北米で大型買収(Verdad Resources Intermediate Holdings LLCの全持分取得)を実行したため。「稼ぐ力」を将来に向けて積み増す投資局面にあります。

02ビジネスモデル図解

モノ()・カネ()の流れで見る、JAPEXの稼ぎ方。

カネの流れ モノの流れ
起点1955年、石油資源開発法に基づく国策会社として設立。国内油田・ガス田開発を祖業に、北米・中東・欧州へ探鉱開発を拡大
定説石油開発会社は掘った原油・天然ガスを売るだけ
逆説JAPEXは掘る(E&P事業)だけでなく、国内生産ガスとLNG輸入を組み合わせてパイプライン・LNG基地で供給するインフラ・ユーティリティ事業、天然ガス火力・バイオマス発電、CO2地下貯留(CCS)まで持つ。2026年3月期はインフラ・ユーティリティ事業(50.7%)がE&P事業(32.1%)を上回る稼ぎ頭になっている

売上の中心はインフラ・ユーティリティ事業(天然ガス・LNG・電力・バイオマス、1,723.49億円・売上の50.7%、FY26実績)で、E&P事業(原油・天然ガス、1,092.57億円・32.1%)が次ぐ。請負・石油製品販売等その他事業は587.30億円(17.3%)。2026年には北米で大型買収(Verdad Resources Intermediate Holdings LLC・Peoria Resources, LLCの持分取得)を実行し、北米の資産規模が一気に拡大した。

💡 やさしく:JAPEXは「掘って売る」だけでなく、「掘ったガスを家まで届けるパイプライン」と「発電所」まで持っています。ガソリンスタンドの元売りとは違い、地面の下から食卓の元まで一気通貫でつながっているのが特徴です。

03成長の歩み — 資源価格に連動する業績、直近は減収減益

2023年3月期から2026年3月期にかけて、売上高・営業利益とも資源価格(原油・天然ガス)と為替に連動して上下している。FY26は価格下落で4期ぶりの大幅減益となった。

売上高の推移(FY2023〜FY2026)

単位:億円 ■濃い棒=直近期

営業利益の推移(FY2023〜FY2026)

単位:億円

自己資本比率の推移

決算短信開示ベース

04今期の焦点 — 原油急騰と北米大型買収で業績予想を上方修正

2026年8月6日、JAPEXは2027年3月期の連結業績予想を上方修正した。背景は①中東情勢の緊迫化による原油CIF価格の急騰(期初想定74.91ドル/バレル→2026年4〜6月実績94.86ドル/バレル)、②北米での大型買収(Verdad Resources Intermediate Holdings LLCの全持分取得)による北米資産の急拡大。一方でイラク・ガラフ油田は現地政府の不可抗力宣言により生産・出荷を停止しており、FY27予想には売上を織り込んでいない。

2027年3月期通期業績予想の修正(億円)

2026年5月13日公表の当初予想→2026年8月6日公表の修正後予想

修正後予想は前期(2026年3月期実績)比で売上高△7.7%・営業利益+18.2%・経常利益△25.3%・純利益+21.7%(決算短信本文の記載値)。売上高・営業利益の上方修正は原油販売価格の上昇と販売量増加、純利益の上方修正は投資有価証券売却益8,723百万円の計上見込みが主因。経常利益は前期に計上した為替差益の反動剥落で減益予想が続く。

💡 やさしく:「原油価格が上がったので稼げそうだ」と会社自身が上方修正を出した形です。ただし経常利益だけは前期の「為替差益というラッキー」がなくなる分、逆に落ち込む予想になっています。

地域別有形固定資産(FY2025末→FY2026末・億円)

北米が2.4倍に拡大し、英国は資産譲渡でゼロに

北米の有形固定資産は1,270.3億円(FY25末)から2,987.5億円(FY26末)へ+135.2%拡大した。これはVerdad Resources Intermediate Holdings LLCの全持分取得(連結範囲の変更)により、鉱物資源(proved reserves)が新たに1,733.7億円計上されたことが主因。投資活動によるキャッシュ・フローでは「連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出」として1,577.06億円を投じた。一方、英国の有形固定資産はJAPEX UK E&P LIMITEDの株式全譲渡(2025年7月)によりゼロになった。

💡 やさしく:「英国の資産を売って、北米の資産を大きく買った」——ポートフォリオの主戦場を北海(英国)から北米に一気にシフトさせた1年でした。

05セグメント — E&Pとインフラ・ユーティリティの二本柱

事業カテゴリ別ではインフラ・ユーティリティ事業が売上の過半(50.7%)を占める。地域別セグメントでは北米が最も高い利益率(32.6%)を稼ぐ。

事業カテゴリ別 売上構成(FY26・億円)

インフラ・ユーティリティ50.7%・E&P32.1%で全体の82.8%を占める

地域別セグメント営業利益率(FY26)

北米32.6%が最も高収益、日本は12.4%

読みどころ

  • インフラ・ユーティリティ事業(売上50.7%)が主力。天然ガス・LNG・電力の安定供給で稼ぐ、資源価格変動への耐性が相対的に高い事業
  • 地域別では北米セグメントの利益率32.6%が突出。原油・天然ガスの探鉱・開発・生産に特化した高収益な上流事業
  • 欧州セグメントは売上8,072百万円(全体の2.4%)に縮小。JAPEX UK E&P LIMITEDの株式譲渡(2025年7月)で北海事業から撤退したため
  • 中東セグメント(利益率9.4%)はイラク・ガラフ油田の不可抗力宣言により、FY27は売上ゼロを見込む地政学リスクの震源地
💡 やさしく:「量」で稼ぐのはインフラ・ユーティリティ、「率」で稼ぐのは北米という役割分担です。中東は稼ぎ頭になる可能性もリスクの震源にもなる、振れ幅の大きい地域です。

06財務3表ビジュアル

FY26は北米大型買収を反映し、資産・負債とも大きく拡大した一方、営業CFは前期比で減少した。

PL滝グラフ — 売上高3,403.4億円はどこへ消えるか(FY26)

単位:億円
💡 やさしく:3,403.4億円売って、原価・探鉱費・販管費で3,014.2億円が消え、本業のもうけは389.2億円(11.4%)。資源価格が下がった分そのまま原価に跳ね返るのがこの業種の宿命です。

BS比例図 — 総資産8,624.7億円の中身(FY26末)

自己資本比率72.8%

キャッシュフロー(FY26)

単位:億円。営業CF1,029.8億円(前期比△21.2%)

FCF(営業CF1,029.8億円−設備投資286.3億円)は+743.5億円とプラス確保。ただし投資活動によるキャッシュ・フローは北米買収(子会社株式取得1,577.1億円)で△2,004.9億円と大幅なキャッシュアウトとなった。

07収益性 — ROE9.2%を分解する

ROE9.2%(FY26・決算短信開示の自己資本当期純利益率)をデュポン分解で見る。

ROE(FY26)
9.2%
15.70%
売上高純利益率
資源開発業として高い利益率
× 0.44回
総資産回転率
巨額の坑井・鉱物資源を抱え低回転
× 1.34倍
財務レバレッジ
自己資本比率72.8%と極めて保守的

平均残高ベースの筆者概算(純利益率15.70%×総資産回転率0.44回×財務レバレッジ1.34倍=9.25%、決算短信記載の9.2%とほぼ一致)。ニッスイ(1332・低回転×薄利×高レバレッジ)とは対照的に、JAPEXは「高利益率×低回転×低レバレッジ」で自己資本比率の高さゆえにROEが伸びにくい構造。同じ資源セクターのINPEX(1605・ROE9.27%)とは近い水準にある。

ROIC vs WACC — 資本コストを上回っているか

単位:%。筆者推定

ROIC5.6%(FY26・筆者算定、NOPAT34,082百万円÷投下資本608,943百万円)は推定WACC(2.0〜2.5%程度)を明確に上回り、価値創造の状態。β0.16という極めて低いボラティリティ銘柄のため資本コスト自体が低く、有利子負債もほぼ無い(インタレスト・カバレッジ・レシオ151.0倍)保守的な財務構造がスプレッドを支えている。

💡 やさしく:「ほぼ無借金で、集めたお金の何倍もの利益を生んでいる」状態です。資源価格が下がってもROICが資本コストを大きく上回っているのは、財務の余裕がそれだけ大きいということです。

08会計基準ビュー — JGAAP / IFRS / US-GAAP

JAPEXは日本基準(JGAAP)採用。資源開発企業特有の会計論点(探鉱費・減損・生産物回収勘定)を見る。

会計基準による見え方の違い

  • 探鉱費(FY26は1,965百万円)は発生時に全額費用計上する「発生時費用化法」に近い保守的な処理。減損損失(FY26は2,185百万円、うち欧州が大半)も個別に計上
  • 営業利益と経常利益(営業外損益を加味した段階利益)を区分する日本独自の表示。為替差損益・持分法投資損益(FY26は+4,114百万円)は経常利益に算入される
  • 資産除去債務の見積り変更(FY26は坑井廃坑費用等で+6,172百万円)を計上すると、その期の営業利益が直接押し下げられる
  • IFRSでは「経常利益」区分が無くなり、営業利益の下に為替差損益・持分法損益が並ぶ形になる
  • 探鉱費の会計処理は「成功法(Successful Efforts)」と「完全所有権法(Full Cost)」の選択制で、資産化できる範囲がJGAAPと異なりうる(会社の実際の適用方針詳細は非開示)
  • 資産除去債務の見積り変更の扱いは概ね同様だが、開示の粒度・注記要求がより詳細になる
  • US-GAAPも探鉱費は「成功法」または「完全所有権法」の選択制で、IFRSと同様の論点が生じる
  • 米国基準は経常利益の概念を持たないため、営業外損益・持分法損益は営業利益の下に一括表示される
💡 やさしく:JAPEX最大の会計論点は「掘っても出なかった探鉱費用をどこまで費用にするか」。国内基準は保守的に即費用化する傾向が強く、当たり外れが利益にダイレクトに響きます。

09同業比較 — 資源・エネルギー3社の中でのポジション

同業のINPEX(上流E&P)、ENEOSホールディングス・出光興産(元売り)と比較すると、JAPEXはPERで見て中間、ROEでは最も低い水準にある。

PERはJAPEX12.38倍で、元売り2社(ENEOS5.44倍・出光興産5.00倍)より明確に高く、同業E&PのINPEX(11.14倍)に近い。PBRは4社とも1倍前後(JAPEX0.81倍・INPEX0.89倍・ENEOS0.90倍・出光興産1.06倍)で資源セクター全体が市場から割安評価されている。ROEはJAPEX7.47%(ttm)が4社中最も低く、精製・販売を主体とするENEOS(19.53%)との差が大きい。配当利回りはJAPEX2.45%が4社の中でやや低めで、INPEX2.89%・出光興産2.63%・ENEOS2.55%が上回る。

💡 やさしく:「同じ資源セクターでも、掘る専業(JAPEX・INPEX)は元売り(ENEOS・出光興産)よりPERが高く評価されがち」——ただし収益性(ROE)では精製・販売を持つ元売りの方が資本効率は高い、というねじれた関係にあります。

10戦略・課題と改善ポイント

中期経営計画「JAPEX経営計画2026-2035」の柱は、強靭なポートフォリオ構築と資本コストを意識した経営の実行力強化。

強み Strengths

  • 自己資本比率72.8%・インタレスト・カバレッジ・レシオ151.0倍という極めて保守的な財務基盤
  • E&Pだけでなく天然ガス・LNGパイプライン・発電まで持つ垂直統合型のインフラ事業
  • 北米での大型買収(Verdad Resources Intermediate Holdings LLC)により資源基盤を積極拡大
  • ROIC5.6%が推定WACC(2.0〜2.5%)を明確に上回る価値創造状態

弱み Weaknesses

  • ROE9.2%は同業比較でも低水準で、高い自己資本比率が資本効率の重石になっている
  • イラク・ガラフ油田は不可抗力宣言により生産停止中で、FY27予想には売上ゼロ織り込み
  • 配当予想45円(FY27)は純利益+21.7%の増益予想に対し据え置きで、株主還元の反映は今後の見直し待ち
  • 業績が原油・天然ガス価格や為替の変動に強く連動し、自社でコントロールできない外部要因の影響が大きい

機会 Opportunities

  • 北米新規連結子会社の生産量拡大による原油・天然ガス販売量の増加
  • 原油価格上昇局面(2026年4〜6月実績94.86ドル/バレル)が続けば業績の一段の上振れ余地
  • CO2地下貯留(CCS)事業の商業化が進めば新たな収益源に

脅威 Threats

  • 中東情勢の緊迫化(イラク・ガラフ油田の不可抗力宣言が示す地政学リスクの現実化)
  • 原油価格・為替の反転(下落)による減益リスク(FY27予想は10月以降原油70ドル/バレル・150円/ドルを想定)
  • 脱炭素化の進展による中長期的な化石燃料需要の減少圧力

改善ポイント(優先度つき)

短期

ガラフ油田の操業再開見通しの明確化

不可抗力宣言により生産・出荷停止中で再開の見込みが立っておらず、投資家への情報開示の透明性が問われる局面。

中期

資本効率(ROE・ROIC)の改善

財務健全性は業界随一だが、その分ROEは伸びにくい。北米買収の資産効率化がROE押し上げの鍵。

中期

株主還元の増益反映

FY27配当予想(45円)は純利益+21.7%の増益予想に対し据え置き。第2四半期決算での見直しが焦点。

11投資メリット・デメリット

「業界随一の財務健全性を武器に、北米買収で資源基盤を積極拡大する一方、中東地政学リスクと資本効率の低さが論点」が本レポートの総括。

▲ 強気材料(メリット)

  • 原油価格急騰と北米大型買収を受け、2027年3月期業績予想を上方修正(純利益+21.7%予想)
  • 自己資本比率72.8%・インタレスト・カバレッジ・レシオ151.0倍という業界屈指の財務健全性
  • ROIC5.6%が推定WACC(2.0〜2.5%)を明確に上回り価値創造の状態
  • PBR0.81倍は解散価値割れの水準で、資源セクターとして下値余地が限られる

▼ 弱気材料(デメリット)

  • ROE9.2%は同業比較でも低水準で、高い財務健全性が資本効率の重石になっている
  • イラク・ガラフ油田は不可抗力宣言により生産停止中で、再開の見込みが立っていない
  • 原油価格・為替次第で業績が大きく振れる構造で、FY27予想も下期の価格前提(原油70ドル・150円)次第で変動しうる
  • 配当予想は増益予想に対し据え置きで、株主還元の増額は未確定

3つのシナリオ(筆者試算・2027年3月期想定EPS)

強気シナリオ原油高・北米増産が続きEPS280円×PER13倍=3,640円
中立シナリオ会社予想どおり着地しEPS253.91円×PER12倍=3,047円
弱気シナリオ原油下落・ガラフ再開遅延でEPS210円×PER10倍=2,100円
💡 はじめての方への総括:チェックポイントは3つ。①原油価格・為替が下期想定(70ドル・150円)から崩れないか②ガラフ油田の操業再開見通し③北米新規連結子会社の損益貢献の実現ペース。「石油を掘る会社」というイメージだけで見ると、パイプライン・発電まで持つインフラ企業としての安定収益源を見落としてしまいます。