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🕒 最終更新: 2026-09-02

INPEX 1605

東証プライムIFRS12月決算 石油・天然ガス開発(E&P)データ基準日 2026/9/1

日本最大の石油・天然ガス開発企業。豪州イクシスLNGとアブダビ原油を二本柱に、次の成長エンジン=インドネシア・アバディLNGのFID(最終投資決定)に向け前進中。中東紛争でアブダビの原油出荷が制約を受ける一方、累進配当を守り抜く財務規律が問われる決算が続く。

💡 はじめての方へ:INPEXは中東・アブダビの油田や、豪州の大型LNGプロジェクト「イクシス」から原油・天然ガスを掘り出して売る、日本最大の資源開発会社です。ガソリンスタンドを展開する出光興産やENEOSとは違い、「掘って売る」上流専業に近い会社。2025年度は原油価格が下がっても、配当は6期連続で増やし続けています。

01企業カルテ

2025年12月期実績(2026/2/12開示)・2026年12月期第2四半期実績&通期予想(2026/8/7開示・修正後)と現在の市場評価。

売上収益(25/12期)
2.01兆円
−11.2%・油価下落が主因
営業利益
1.14兆円
−10.7%(利益率56.5%)
親会社帰属当期利益
3,938億円
−7.8%・6期連続増配は継続
ROE
8.2%
前期9.5%から低下
ネット生産量
63.8万BOED
+1.1%(26年予想は中東情勢で632に下方修正)
時価総額
5.18兆円
株価4,112円(26/9/1)
PER(26/12期予想)
9.37
PBR 0.94倍・利回り2.72%
年間配当(26/12期予想)
112
6期連続増配('20年24円→)
成長性
売上収益は油価下落で減収(△11.2%)。ネット生産量も26年予想は中東情勢で下方修正
収益性
営業利益率56.5%は資源メジャー並みの高水準。ただし油価連動で振れやすい
財務健全性
自己資本比率60.8%(26/12期中間期末)。実質有利子負債は僅少
株主還元
「90円起点の累進配当」を明言し6期連続増配。総還元性向は50%超を継続
バリュエーション
PBR0.94倍・PER9.37倍。会社自身も「株価は成長性を反映しきれていない」と認識

※5軸評価は本レポート筆者の見解であり、投資勧誘ではありません。

💡 読み方:「利益は減っているのに配当は増える」という一見不思議な決算です。原油価格が前期比12.9%下がって利益は減りましたが、会社は「90円を起点に配当を下げない」という約束(累進配当)を掲げていて、実際に守り続けています。だから見るべきは利益の水準そのものより「配当を守れる財務体質かどうか」です。

02ビジネスモデル図解

モノ()・カネ()・情報()の流れで見る、INPEXの稼ぎ方。

カネの流れ モノ・サービスの流れ 情報の流れ
起点1966年設立の帝国石油・国際石油開発(旧・石油公団の「オールジャパン」資源開発体制下で発足)。2006年の経営統合でINPEXが誕生
定説資源開発会社の業績・株主還元は、油価が下がれば連動して悪化する
逆説2025年度、ブレント原油が前期比12.9%下落しても、円安・数量増・持分法JVの厚みでカバーし減益は7.8%に圧縮。しかも「90円を起点とする累進配当」で6期連続増配を実現

売上収益2兆113億円の内訳は原油売上が76%(1兆5,302億円)、天然ガス売上が22%(4,480億円)。セグメントでは、売上の74%を稼ぐ「海外O&Gその他プロジェクト」(アブダビ等)と、売上は16%ながら利益率が最も高い「海外O&Gイクシスプロジェクト」(豪州LNG)が二本柱。持分法で取り込むJV各社の投資損益(720億円)も収益の柱のひとつ。次の成長エンジンは2027年央のFID(最終投資決定)を目指すインドネシア・アバディLNGで、開発準備資金を積み立て中。

💡 やさしく:INPEXは「地面から原油・天然ガスを掘り出して、電力会社やガス会社、海外のLNG需要家に売る」会社。ガソリンスタンドは持たず、掘るところに専念しています。稼いだお金の一部は次の大きな油田・ガス田(アバディLNG)を掘る準備資金として積み立てています。

03成長の歩み — 油価下落を数量・為替・累進配当でしのぐ

売上・営業利益は油価下落で2期連続減少するが、2026年12月期は油価上昇・イクシス増産で過去最高益を見込む。配当は6期連続増配。

売上収益の推移(24/12期〜26/12期予想)

単位:兆円。26/12期は8月修正後の予想

親会社帰属当期利益の推移

26/12期予想5,100億円は過去最高

1株当たり年間配当金の推移('20年〜'26年予想)

単位:円。「90円を起点とする累進配当」方針のもと、油価が下がった年も減配せず6期連続増配

2026年12月期の配当は当初108円予想から、8月の業績予想上方修正にあわせて112円へ再増額。総還元性向は約53%を見込む。

04今期の焦点 — 中東紛争の影響と「PBR再評価」の行方

2026年は中東紛争でアブダビの原油出荷が一時制約を受けた一方、油価上昇とイクシスの好調な生産で通期利益予想は過去最高の5,100億円に上方修正された。株価はこの二つのニュースの綱引きで動いている。

期末PBR・株価・BPSの推移('22年末〜'25年末、および2026年の3時点)

PBRは0.48倍→0.77倍まで改善したが、依然として1倍割れが続く

2026年に入ってからは中東紛争の激化でPBRが0.9倍(2月末)→0.7倍(6月末)まで一時低下したが、油価上昇を受けて0.8倍(7月末)まで戻している。会社自身も決算説明会で「現在の株価は当社の成長性を反映しきれていない」と明言している。

💡 やさしく:PBRが1倍を割れているのは「会社を今すぐ解散して財産を分けたほうが、株を持ち続けるより得」と市場がみなしている状態。会社は配当を増やし自己株買いを強化することで、この「安すぎる」評価の解消を狙っています。

セグメント別ROIC(26/12期予想・8月修正後)

投下資本利益率。イクシスが最も資本効率が高い

国内O&Gは3.5%まで改善したが依然として低水準。「その他」(再エネ・CCS等)は先行投資段階で△7.1%。連結ROIC8.2%は会社が想定するWACC6%程度を上回る。

2026年上期 地域別原油販売量の変化

中東紛争の影響はアブダビに集中。他地域は増加

アブダビ及びその他(中東・NIS諸国等)の原油販売量は前年同期比26.4%減の4,409万バレル。一方、豪州・東南アジアや欧州は堅調。連結全体の原油販売量は前年同期比22.8%減の5,517万バレルとなった。

05セグメント — アブダビで稼ぎ、イクシスが最も効率よく稼ぐ

売上の74%を「海外O&Gその他プロジェクト」(アブダビ中心)が占めるが、親会社帰属利益で見ると4区分の構図がはっきり変わる。

売上構成(25/12期)

連結売上収益2兆113億円の内訳

セグメント別 親会社帰属当期利益(25/12期)

単位:億円

読みどころ

  • 海外O&Gその他(アブダビ中心):売上1兆4,869億円・利益1,318億円。売上の74%を占めるが、利益の33%にとどまる
  • イクシス:売上3,151億円・利益2,708億円。売上に対する利益率が突出して高い「稼ぎ頭」
  • 国内O&Gは売上1,922億円・利益224億円と小粒だが黒字は堅持。「その他」(再エネ・CCS等)は288億円の赤字で先行投資段階
💡 やさしく:「量で稼ぐアブダビ」と「効率で稼ぐイクシス」の2本柱です。売上の大きさだけを見るとアブダビが目立ちますが、1円の売上あたりの儲けが大きいのはイクシス。液化天然ガス(LNG)という付加価値の高い商品を売っているためです。

06財務3表ビジュアル

2兆円企業のPL・BS・CFを図で読む(25/12期)。

PL滝グラフ — 売上収益2兆113億円はどこへ消えるか(25/12期)

単位:兆円。IFRSのため「経常利益」はなく税引前利益で表示
💡 やさしく:2兆113億円売って、原価・探鉱費・販管費などで9,590億円弱が引かれ、他社の儲けの取り分(持分法)や雑収益を加えると本業の儲け(営業利益)は1兆1,354億円。利益率56.5%はトヨタ(7.4%)等の製造業と比べて極めて高く、資源開発業特有の「掘るコストは重いが売値の粗利率は高い」構造を表す。

BS比例図 — 総資産7兆7,352億円の中身(25/12末)

箱の高さ=金額。自己資本比率61.4%

最大の資産は「石油・ガス資産3兆8,890億円」(油田・ガス田の権益や設備)。持分法投資も1兆249億円と大きく、JV各社への出資が資産構成の柱になっている。有利子負債は1兆2,447億円にとどまり、自己資本比率61.4%は財務健全性の高さを示す。

CFウォーターフォール — 現金の増減(25/12期)

単位:億円。営業CF6,939億円

アバディLNG開発準備資金の積み立て等で投資CFが△6,687億円と膨らみ、現金は前期末2,417億円から1,684億円へ減少。設備投資(探鉱・評価資産+開発・生産資産+その他有形固定資産の合計2,940億円・筆者算定)を差し引いたFCF+3,999億円

FCF算定の内訳(25/12期)

単位:百万円。FCF=営業CF−設備投資(探鉱・評価資産+開発・生産資産+その他有形固定資産の取得支出、筆者算定)

主要数値サマリー(決算短信ベース・単位:百万円)

本文中の図表の元になった精緻値。25/12期=2026年2月12日開示、26/12期中間期=2026年8月7日開示
項目24/12期25/12期26/12期予想(8月修正)26/12期中間期
売上収益2,265,8372,011,3511,973,0001,000,495
営業利益1,271,7891,135,4401,223,000618,713
税引前利益1,298,8111,173,4731,278,000644,346
親会社帰属当期(中間)利益427,344393,836510,000263,147(前期中間期223,527)
基本的1株当たり利益(円)345.31330.82438.82226.33
資産合計(期末)7,380,8637,735,1988,386,904

セグメント別 親会社帰属当期利益(25/12期・百万円):国内O&G 22,452/海外O&Gイクシス 270,801/海外O&Gその他 131,790/その他 △28,795。25/12期の総還元性向は55.4%(配当総額118,241百万円+自己株式取得決定額100,000百万円)。時価総額(26/9/1)は51,776億円。中期経営計画('25-'27)の3年間累計成長投資は19,000億円、INPEX Vision 2035の営業CF目標は15,000億円。

07収益性 — ROEを分解する

ROE8.2%(25/12期)の中身をデュポン分解で見る。トヨタ(薄い利益率×高い回転率)とは対照的な「超高利益率×超低回転率」型。

ROE(25/12期・会社開示)
8.2%
19.6%
純利益率
資源メジャー並みの高収益率
× 0.27回
総資産回転率
石油・ガス資産3.9兆円が分母を重くする
× 1.58倍
財務レバレッジ
自己資本比率61%と保守的

期首期末平均残高ベースの筆者算定(19.6%×0.27回×1.58倍≒8.23%)。会社開示のROE8.2%とほぼ一致。前期(24/12期)のROEは9.5%で、低下の主因は利益率(油価下落)。

ROEの推移(%)

会社開示ベース。26/12期予想は油価上昇・イクシス増産で10.5%まで回復見込み

ROIC vs WACC — 資本コストを上回っているか(会社開示)

単位:%。会社が決算説明会で開示した実績・想定値

連結ROICは25/12期7.3%→26/12期予想8.2%(8月修正後)。会社が想定するWACCは6%程度、株主資本コストは8%程度で、ROICはこれを上回る水準まで改善する見込み。セグメント別ではイクシスのROIC(10.3%)が突出して高く、国内O&G(3.5%)や「その他」(△7.1%)が全体を押し下げている。

💡 やさしく:ROICは「集めたお金全体でどれだけ効率よく稼いだか」の成績です。INPEXは掘削設備や油田権益という「重い資産」を大量に抱えているため回転率は低いですが、1回の取引あたりの儲け(利益率)が極めて高いので、資本コストはきちんと上回れています。

08会計基準ビュー — IFRS / JGAAP / US-GAAP

INPEXはIFRS採用。石油・ガス開発業ならではの「減損の戻し入れ」と「セグメント利益の定義」が最大の論点。

どの「利益」で見るかで印象が変わる(25/12期)

単位:億円
  • IFRSに「経常利益」区分はなく、持分法投資損益720億円や金融収支の差額は営業利益のに並ぶ。税引前利益1兆1,735億円がJGAAPの経常利益に最も近い
  • 減損は戻し入れが可能。25/12期はイクシスプロジェクトで減損損失214億円に対し減損損失戻入益412億円を計上し、ネットではプラスに寄与した
  • セグメント利益の定義が独自で、他社と比較する際に「営業利益ベース」ではなく「親会社所有者に帰属する当期利益ベース」である点に注意が必要(法人税・持分法・金融収支まで含んだ最終利益ベース)
  • JGAAPなら持分法投資損益・金融収支は「営業外収益」に区分され、経常利益 ≒ 税引前利益1兆1,735億円に集約される
  • JGAAPでは減損の戻し入れが原則認められない(一度減損したら回復しても戻せない)。INPEXの減損戻入益412億円のような「利益の押し上げ」はJGAAPでは発生しない
  • セグメント利益の開示単位(営業利益 vs 親会社帰属利益)が違うため、JGAAP企業(JAPEX等)と単純比較する際はどちらの利益段階かを必ず確認する必要がある
  • US-GAAPも減損の戻し入れを原則認めないため、IFRSのような減損戻入益はUS-GAAP企業(ExxonMobil等)の決算には出てこない
  • 米国の資源会社の多くは「Successful Efforts法」または「Full Cost法」を採用し探鉱費の資産計上ルールが厳格に規定されている。INPEXの探鉱費167億円(25/12期)の会計処理方針は開示資料からは詳細不明のため、単純な数値比較は避けるべき
  • のれんは46億円(25/12期末)と僅少で、買収より自社開発中心の成長を反映。米メジャーとのM&A巧拙比較の論点にはなりにくい
💡 やさしく:資源開発業ならではのクセが2つあります。①IFRSは「一度減った資産価値が戻れば利益に計上できる」ルールなので、油価が回復すると過去の減損が"利益"として跳ね返ってくることがあります。②INPEXの「セグメント利益」は他社の「営業利益」とは中身が違う(税金まで引いた後の数字)ので、他社と比べるときは要注意です。

09同業比較 — 国内資源・エネルギー3社との比較

石油資源開発(中堅E&P)・ENEOSホールディングス/出光興産(精製・元売の川下大手)と比較(2026/9/1時点)。

ROEはINPEXが唯一2桁(10.5%)で最も高い。PBRは4社とも1倍前後で、資源・エネルギー業界全体が市場から「割安」評価を受けやすい構造にある。出光興産のPER23.93倍は特殊要因(一時的な減益等)の影響が大きい可能性があり、単純比較には注意が必要。

💡 やさしく:石油資源開発は国内ガス田中心の「小さいINPEX」のような会社(時価総額はINPEXの約1割)。ENEOSと出光興産は油田を掘るより「原油を精製してガソリンを売る」商売が主体で、INPEXとは川上・川下の違いがあります。

10戦略・課題と改善ポイント

経営の旗印は「INPEX Vision 2035」。足元は中東紛争への対応とアバディLNGのFID実現が最優先。

強み Strengths

  • アブダビ原油とイクシスLNGという実績豊富な2大収益源、持分法JVも含めた分厚いポートフォリオ
  • 自己資本比率60.8%(26/12期中間期末)・実質有利子負債は僅少で財務は極めて健全
  • 累進配当(90円起点)を明言し6期連続増配。総還元性向は50%超を継続
  • アバディLNGが2027年FID目標で最終段階へ。次の成長エンジンが具体化しつつある

弱み Weaknesses

  • セグメント利益の73%超が海外O&Gその他(アブダビ中心)に集中し地政学リスクへの依存度が高い
  • 国内O&Gセグメントは縮小基調でROICもマイナス圏の年がある(26年予想3.5%は改善したが不安定)
  • 業績が油価・為替に強く連動する構造は変わらず、原油1ドル変動で年間利益に数十億円規模の影響
  • PBRは0.94倍と1倍割れが常態化。会社自身も「株価は成長性を反映しきれていない」と認識

機会 Opportunities

  • 天然ガス・LNGは「現実的な移行期の燃料」として中長期的に重要性が拡大
  • アジア太平洋のLNG需給は2035年に向けて供給不足が予想され、アバディの立地優位性が生きる
  • CCS・水素等の低炭素事業(首都圏CCS・柏崎水素パーク等)が将来の新規収益源になり得る
  • 自己株取得の積極活用でEPSは着実に上昇基調('21年345円→'26年予想439円)

脅威 Threats

  • 中東紛争の激化・長期化によるアブダビ原油出荷の追加制約(26年上期は前年比約3割減の実績)
  • ホルムズ海峡など海上輸送路の地政学リスク(セキュリティ重視へのシフトはコスト増要因にもなる)
  • 世界的な脱炭素シフトが再加速した場合の化石燃料需要見通しの下振れ・座礁資産化懸念
  • アバディLNGはFID前の大型プロジェクトであり、コスト超過・スケジュール遅延・インドネシア政府協議の不確実性が残る

改善ポイント(優先度つき)

最優先

中東地政学リスクへの耐性強化

アブダビ依存度が高い中、2026年上期は原油販売量が前年同期比約3割減少。調達・出荷ルートの多様化やセキュリティ投資とコストのバランスが問われる。

最優先

アバディLNGのFID実現とコスト管理

2027年央のFID目標に向け、EPC入札結果とインドネシア政府とのIRR協議(10%台半ば目標)の着地が最大の論点。開発準備資金は前倒しで7,700億円強に積み上がっており規律ある投資判断が必要。

中期

国内O&Gセグメントの位置づけ再定義

南長岡ガス田等は生産量が漸減しROICも不安定。CCS・水素等の低炭素事業への転換投資として位置づけを明確化する必要がある。

中期

PBR1倍回復に向けた対話継続

累進配当・機動的自己株取得・開示強化を進めているが、PBRは0.7〜0.9倍のレンジで推移。成長ストーリー(アバディ)の市場への浸透が課題。

11投資メリット・デメリット

「実力は着実に積み上がっているが、中東リスクの分だけ市場から値引きされている」——PBR0.94倍にそれがどこまで織り込まれたかが本レポートの総括。

▲ 強気材料(メリット)

  • 自己資本比率60.8%・実質無借金に近い財務体質で、油価下落局面でも配当を減らさない累進配当を実践中
  • PBR0.94倍は解散価値近辺。会社自身が「株価は成長性を反映しきれていない」と認識し株主還元を強化
  • イクシスLNGは安定操業を継続し、2026年通期の利益貢献額は約3,800億円(前期比+40%)を見込む
  • アバディLNGが2027年FIDへ前進。買主候補5社とHoA締結済みでアジア向け新規大型LNGへの需要は強い
  • 自己株取得の継続でEPSは着実に上昇(自己株除く発行済株式数は2021年13.9億株→2026年以降11.7億株)

▼ 弱気材料(デメリット)

  • セグメント利益の7割超がアブダビ中心の海外O&Gその他に集中し、中東紛争の帰趨に業績が左右される
  • 2026年上期はアブダビの原油販売量が前年同期比約3割減少。中東情勢の悪化は下期以降も続くリスク
  • 業績の絶対水準は油価次第。ブレント原油1ドルの変動で年間利益に数十億円規模の影響(会社開示の感応度)
  • アバディLNGはFID前の大型プロジェクトで、コスト超過・スケジュール遅延・インドネシア政府協議が長引くリスク
  • 国内O&G事業は構造的な縮小基調。次の成長の柱が明確になるまで時間を要する

3つのシナリオ(筆者試算)

強気シナリオ中東情勢が沈静化し油価$85前後・イクシス増産が続く → 親会社帰属当期利益6,000億円規模、EPS520円×PER10倍=5,200円水準
中立シナリオ会社の2026年12月期予想(5,100億円、EPS438.82円)が達成 → EPS439円×PER9〜10倍=3,950〜4,390円(現在の株価4,112円に近い水準)
弱気シナリオ中東紛争の激化・油価$60割れ → 親会社帰属当期利益3,000億円規模、EPS約260円×PER8倍=2,080円前後
💡 はじめての方への総括:チェックポイントは3つ。①ブレント原油価格(会社の前提は26年通期平均81.4ドル。これより下がると利益は下振れ)、②アブダビの原油出荷量(中東紛争の影響を最も受ける指標。26年上期は前年比約3割減)、③配当(「90円起点の累進配当」を守れるか=26年予想は112円で6期連続増配)。PBR0.94倍という「1倍割れ」は市場が成長性を十分に評価していないサインで、そこに同意するかどうかが投資判断の分かれ目になる。