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🕒 最終更新: 2026-08-31

ショーボンドホールディングス 1414

東証プライム日本基準(JGAAP)6月決算 建設業(インフラメンテナンス)データ基準日 2026/8/28

橋梁など社会インフラの補修・補強だけを手がける、自称「造らない建設会社」。2026年6月期は売上高89,204百万円(前期比△1.7%)ながら、売上総利益率29.9%の高水準維持で営業利益20,831百万円(同+0.2%)・純利益15,439百万円(同+2.5%)と14期連続の増益を達成。自己資本比率82.3%・実質無借金の財務体質で、ROE14.6%・ROIC(自己資本ベース)13.4%を稼ぐ。

💡 はじめての方へ:橋やトンネルは、放っておくと錆びたりひび割れたりして危険になります。ショーボンドは、そうした「古くなったインフラを直す」ことだけを専門にする会社です。新しい橋を「造る」会社ではなく、既にある橋を「長持ちさせる」会社——だから自分たちを「造らない建設会社」と呼んでいます。直すための材料(補修用の樹脂など)まで自社で開発・製造しているのが最大の強みです。

01企業カルテ

2026年6月期実績(2026年8月10日開示)と現在の市場評価。

売上高(26/6期)
892億円
△1.7%・国内建設の減収を材料販売増で一部吸収
営業利益
208億円
+0.2%(利益率23.4%)
親会社株主に帰属する純利益
154億円
+2.5%・14期連続増益
ROE
14.6%
前期14.5%からさらに改善
自己資本比率
82.3%
有利子負債はほぼゼロの実質無借金経営
受注残高
725億円
△11.3%・高速道路会社の発注低迷が響く
時価総額
2,785億円
株価1,272円(26/8/28)
PER(会社予想)
16.46
PBR 2.39倍・利回り3.66%(予想)
成長性
売上高△1.7%・受注残高△11.3%と縮小基調。国のインフラ長寿命化計画で中長期の底堅さはあるが、単年の伸びは小さい
収益性
営業利益率23.4%・ROIC(自己資本ベース)13.4%は建設業として異例の高さ。14期連続増益を継続中
財務健全性
自己資本比率82.3%・有利子負債はほぼゼロ。現金及び有価証券だけで488億円を保有
株主還元
配当性向60.1%を継続方針化。自己株式取得も実施中で、総還元性向は純利益の約92%に達する
バリュエーション
PER16.46倍・PBR2.39倍は無借金・高収益企業として割安とは言えない水準。受注残高の減少トレンドが評価の重荷

※5軸評価は本レポート筆者の見解であり、投資勧誘ではありません。参考:26/6期実績(単位:百万円)は売上高89,204・営業利益20,831・経常利益21,485・純利益15,439、EPS76.08円・BPS533.19円。受注高80,004百万円・受注残高72,498百万円。営業CF19,330百万円・FCF18,159百万円・現金期末残高37,247百万円。27/6期会社予想は売上高90,000百万円・営業利益21,000百万円・純利益15,500百万円・年間配当46.50円。

💡 読み方:売上高そのものは前期より減っていますが、それでも利益は過去最高を更新しました。理由は「無駄な安売り工事を追わない」規律です。裏を返せば、受注残高(先々の仕事の在庫)が減っているのは要注意ポイント——今の高収益がいつまで続くかは、今後の受注動向にかかっています。

02ビジネスモデル図解

モノ()・カネ()・情報()の流れで見る、ショーボンドの稼ぎ方。

カネの流れ モノ・サービスの流れ 情報の流れ
起点創業者・上田昭氏が、エポキシ樹脂を土木工事に応用するという発想からコンクリート構造物の補修事業を始めた(社名の由来である「昭和ボンド」から)
定説建設会社は、道路・橋・ビルなど新しいインフラを「造る」ことで売上を立てるのが本業
逆説ショーボンドは新設工事をほとんど行わず、「既にあるインフラを直す」ことだけに特化。しかも調査・診断→設計→施工→補修材料の開発・製造・販売までを自社グループで一気通貫化し、直すたびに自社製の材料も売れる構造を作った。国内建設の受注環境が高速道路会社の発注減で軟化する中でも、材料販売(その他事業)は前期比+10.7%と伸びている

売上高89,204百万円の95.1%(84,847百万円)を国内建設セグメントが稼ぐ。主要発注者は東日本高速道路(19,887百万円)・西日本高速道路(10,016百万円)・国土交通省(8,920百万円)の3者で、合計38,823百万円と売上の43.5%を占める。残る4.9%(4,356百万円)はその他事業(補修材料の製造販売・海外建設)で、このうち2,425百万円はグループ内(国内建設への材料供給)向けの内部振替であり、外部顧客向けはその差額にとどまる。

💡 やさしく:ふつうの建設会社を「新築住宅を建てる工務店」に例えると、ショーボンドは「古い家のリフォームだけを請け負う専門業者」です。しかも、リフォームに使う建材(補修樹脂)まで自社工場で作っているので、工事を受注するたびに自社製の材料も一緒に売れる——これが利益率23.4%という高収益の裏側にある仕組みです。

03成長の歩み — 11年で売上1.7倍、14期連続の営業増益

2015年6月期から2026年6月期までの11年間で、受注環境の波はありながらも増収増益基調を維持。特に売上総利益率は2015年の24.3%から2026年は29.9%へ一貫して改善してきた。

売上高の推移(15/6期〜26/6期)

単位:億円 ■濃い棒=直近期

営業利益と営業利益率の推移

単位:億円(棒)/%(折れ線相当・表で確認可)

ROEの推移

2015年6月期10.1%→2026年6月期14.6%へ一貫して改善

2027年6月期会社計画:売上高900億円(+0.9%)、営業利益210億円(+0.8%)、純利益155億円(+0.4%)。中期経営計画「中期経営計画2027」のもとで、株主還元は配当性向60%・自己株式取得年50億円(3年累計150億円)の方針を掲げる。

💡 やさしく:11年前と比べて売上高は1.7倍(521億円→892億円)になりましたが、営業利益は2.3倍(91億円→208億円)と、売上以上に利益が伸びています。これは「値引き合戦をしない」「利益率の高い仕事を選ぶ」という規律が効いている証拠です。

04今期の焦点 — 顧客集中構造と、受注残高の逆風

ショーボンドの売上は、高速道路会社と国という「官」の発注に大きく依存する構造。2026年6月期はこの官需の発注量が落ち込み、受注高・受注残高がともに2桁減となった。一方で材料販売中心のその他事業は伸びており、国内建設一本足からの分散も進みつつある。

主要顧客別売上高(26/6期実績)

単位:百万円。上位3者で売上の43.5%を占める

東日本高速道路19,887百万円(前期比△3.5%)・西日本高速道路10,016百万円(同△19.3%)・国土交通省8,920百万円(同△8.9%)。地方自治体等その他の発注者からの売上は、合計との差分で50,381百万円(売上の56.5%)と推計される。

受注高・受注残高の推移(22/6期〜26/6期)

単位:億円。受注残高は2024年6月期をピークに2年連続で減少
💡 やさしく:「受注残高」は、まだ工事が終わっていない“仕事の在庫”のことです。これが減っているのは、来期以降の売上の種が細っていることを意味します。ただし国は「国土強靭化実施中期計画」で2026年度から5年間に約20兆円強の予算を見込んでおり、会社側は中長期的には受注環境の底堅さが続くと説明している——短期の谷と長期の追い風、両方を見る必要がある局面だ。

05財務3表ビジュアル

売上892億円・実質無借金企業のPL・BS・CFを図で読む。

PL滝グラフ — 売上892億円はどこへ消えるか(26/6期)

単位:億円
💡 やさしく:892億円売って、工事原価と販管費で684億円が消え、本業のもうけとして208億円(23.4%)が残ります。ここに投資有価証券売却益などの特別利益を加え、法人税を払った後、最終的に154億円(17.3%)が株主のものとして残ります。

BS比例図 — 総資産1,299億円の中身(26/6末)

箱の高さ=金額。自己資本比率82.3%

現金預金・有価証券・投資有価証券の合計487億円(総資産の37.5%)を保有する一方、有利子負債はゼロに近い。受取手形・完成工事未収入金等578億円が運転資本の中心。

キャッシュフロー(26/6期)

単位:百万円。営業CF193億円

FCF(営業CF−設備投資・筆者算定)は+181億円。財務CFは自己株式取得50億円・配当支払98億円により大きく流出したが、無借金経営のため財務基盤への影響はない。

06収益性 — なぜ建設業なのに利益率23%を稼げるのか

ROE14.6%は前期14.5%からさらに改善。自己資本比率82.3%という手厚い自己資本の下でこの水準を維持している点が、一般的な建設業との最大の違いだ。

ROE(26/6期・決算短信公表値)
14.6%
17.3%
売上高純利益率
建設業として極めて高い。オイシックス(薄利多売型)と正反対の「厚利少売」構造
× 0.69回
総資産回転率
現金・有価証券を厚く持つため回転率は低め
× 1.22倍
財務レバレッジ
自己資本比率82.3%=レバレッジはほぼ使わない

17.3%×0.69回×1.22倍≒14.6%(決算短信公表値と一致。回転率・レバレッジは期中平均残高ベースの筆者概算)。ダイキン工業(純利益率5.49%×回転率0.92回×レバレッジ1.81倍)と比べると、ショーボンドは「高い利益率を、レバレッジをほぼ使わずに実現している」対照的な構造。

ROIC vs WACC — 資本コストを上回っているか(筆者試算)

単位:%。概算値

ROIC=NOPAT(営業利益208.31億円×(1−実効税率31.28%)≒143.15億円)÷投下資本(自己資本1,069.22億円。有利子負債はほぼゼロのため加算せず)≒13.39%。現金・有価証券(487.10億円)を除いた事業ベースの投下資本(582.12億円)で見るとROIC24.59%に跳ね上がる——ダイキン工業(連結ベース6.8%)を大きく上回り、キーエンス(事業ベース21%超)に匹敵する水準。推定WACC(6%程度)を大幅に上回っており、稼いだ利益が資本コストを十分に超えて価値創造できている。

💡 やさしく:ROICは「事業に投じたお金1円あたり、何円もうけたか」という商売の実力測定です。ショーボンドは分厚い現金を除いた「本業の実力」で見ると24.59%と、資本コスト(6%程度)の4倍以上を稼いでいます。現金を貯め込みすぎている分、見かけのROICは低めに出ますが、事業そのものの効率は極めて高いのです。

07会計基準ビュー — JGAAP採用

ショーボンドは日本基準(JGAAP)を採用。「連結財務諸表の期間比較可能性及び企業間の比較可能性を考慮し、当面は日本基準で作成する方針」と決算短信で明言しており、IFRS移行の具体的計画は開示されていない。

利益段階の比較(26/6期)

単位:億円
  • 経常利益214.85億円は営業利益(208.31億円)より6.54億円大きい。持分法適用のタイ・米国関連会社の投資利益(1.67億円)や受取利息・配当金がプラス要因
  • 特別利益に投資有価証券売却益11.38億円を計上。ROICの分子(NOPAT)計算では、この一時的な特別損益は含めず営業利益ベースで算定している
  • JGAAPではのれんを規則償却するが、前期(25/6期)に連結子会社キーナテック社に係るのれん全額(1.31億円)を減損損失として特別損失計上済みで、当期(26/6期)ののれん償却額はゼロ
💡 やさしく:もしIFRSを採用していたら、経常利益という区分自体が無くなり、営業外の損益は営業利益の下に別区分で並ぶ形になります。ただしショーボンドは有利子負債がほぼ無く、のれんの残高もゼロに近いため、会計基準を変えても数字全体への影響は他社と比べて小さいと考えられます。

08同業比較 — インフラ関連建設3社との差

法面工事のライト工業(1926)、道路舗装の世紀東急工業(1898)、橋梁PC構造物の富士ピー・エス(1848)という、いずれもインフラ関連の専門工事会社3社と比較(2026年8月28日時点の株価・valuation、各社直近の一次資料実績)。

ショーボンドライト工業世紀東急工業富士ピー・エス

売上規模ではライト工業(121,457百万円・2025年3月期実績)が最大でショーボンド(89,204百万円)を上回るが、営業利益率で見るとショーボンド23.4%は、ライト工業10.5%・世紀東急工業6.7%を大きく引き離す。富士ピー・エス(2027年3月期第1四半期実績、売上8,280百万円)は直近四半期で営業利益が前年同期比+134.9%と急回復中だが、通期予想の売上規模(33,128百万円)はショーボンドの4割にも満たない。自己資本比率もショーボンド82.3%に対し、ライト工業71.9%・世紀東急工業52.3%・富士ピー・エス36.9%(2026年3月期末)と、ショーボンドの財務健全性が際立つ。

💡 やさしく:同じ「インフラの工事会社」でも、法面(斜面)工事や道路舗装は、工事ごとの利益率が薄くなりがちな業界です。その中でショーボンドだけが「補修専業+自社製材料」という組み合わせで、利益率23%超という別次元の稼ぎ方をしています。

09戦略・課題と改善ポイント

高収益・高財務健全性という強みの裏側に、受注環境の官需依存と、積み上がった現金の使い道という2つの構造的な論点を抱える。

強み Strengths

  • 売上総利益率29.9%・営業利益率23.4%と、建設業として異例の高収益体質を14期連続増益で証明
  • 調査・診断→設計→施工→材料の製造販売までを一気通貫で持つ「総合メンテナンス体制」
  • 自己資本比率82.3%・有利子負債ほぼゼロの実質無借金経営
  • 配当性向60.1%・自己株式取得を組み合わせた総還元性向約92%の積極的な株主還元方針

弱み Weaknesses

  • 売上の43.5%を東西NEXCO・国交省という「官」3者に依存し、単年の発注量に業績が左右されやすい
  • 受注残高が2024年6月期をピークに2年連続で減少(△11.3%)し、将来の売上の先行指標が弱含み
  • 現金及び有価証券487億円(総資産の37.5%)を抱え、資本効率(総資産回転率0.69回)を押し下げている
  • 売上高そのものはほぼ横ばい〜微減が続き、利益成長は「率の改善」に依存する局面

機会 Opportunities

  • 「第1次国土強靭化実施中期計画」で2026年度から5年間に約20兆円強の事業規模が想定され、中長期の受注環境は底堅い見通し
  • 高速道路各社の更新計画進捗率はまだ81%(国交省資料ベース)で、老朽化更新需要は今後も継続
  • その他事業(補修材料の製造販売)は前期比+10.7%と国内建設より高い伸びを示しており、事業分散の余地
  • 三井物産と共同出資したSHO-BOND & MITインフラメンテナンス社を通じた海外(タイ・米国等)展開

脅威 Threats

  • 高速道路会社・地方自治体の予算配分次第で、単年の受注高が大きく振れるリスク
  • 建設業界共通の技能労働者の高齢化・人手不足
  • 厚い現金を抱えたままでは、株主から資本効率改善(増配・自社株買いの拡大等)を求める圧力が強まりやすい
  • 資材・労務費の上昇が続いた場合、価格転嫁が追いつかず利益率を圧迫するリスク

改善ポイント(優先度つき)

最優先

官需依存からの受注源分散

東西NEXCO・国交省への依存度が高い現状に対し、地方自治体・民間・海外向け案件の比率を高め、単年の発注量変動に業績が振らされにくい構造への転換が必要。

最優先

受注残高の反転

2年連続で減少している受注残高をどこで下げ止められるかが、2027年6月期以降の増収基調を左右する最大の論点。

中期

厚い現金の使い道の明確化

自己株式取得(新規に上限50億円を追加決議)は資本効率改善に資するが、それでも現金及び有価証券487億円という水準は業容に対しなお厚い。M&Aや海外展開への再配分余地を検討する段階にある。

中期

その他事業(材料・海外)の拡大

前期比+10.7%と伸びているその他事業の外部売上比率をさらに高め、国内建設一本足からの分散を進める。

💡 やさしく:ショーボンドの弱点は「商品力」ではなく「注文の出どころ」です。お客さんの大半が国や高速道路会社という限られた相手なので、その予算配分ひとつで仕事の量が変わってしまいます。豊富な現金という"貯金"はありますが、それをどう次の成長に使うかが問われています。

10投資メリット・デメリット

「建設業として異例の高収益・無借金の財務体質」と「官需依存・受注残高の減少トレンド」がせめぎ合う局面。中長期のインフラ更新需要という追い風と、短期の受注減という逆風の両方を織り込んでどう評価するかが本レポートの総括。

▲ 強気材料(メリット)

  • 売上総利益率29.9%・営業利益率23.4%・ROIC(事業ベース)24.59%という、建設業としては異例の稼ぐ力
  • 自己資本比率82.3%・有利子負債ほぼゼロの財務健全性で、景気後退局面への耐性が高い
  • 14期連続の営業増益という実績と、配当性向60.1%・総還元性向約92%の積極的な株主還元姿勢
  • 「第1次国土強靭化実施中期計画」による2026年度から5年間で約20兆円強の中長期の受注環境の底堅さ
  • 調査・診断から材料製造まで一気通貫の「総合メンテナンス体制」という参入障壁の高いビジネスモデル

▼ 弱気材料(デメリット)

  • 受注残高が2年連続で減少(26/6期は△11.3%)しており、将来の売上の先行指標が弱含み
  • 売上の43.5%を東西NEXCO・国交省という「官」3者に依存し、発注量の変動リスクを抱える
  • PER16.46倍・PBR2.39倍は無借金・高収益企業として際立って割安とは言えない水準
  • 現金及び有価証券487億円という厚い手元資金が資本効率(総資産回転率0.69回)を押し下げている
  • 売上高そのものは前期比△1.7%と減収で、成長ドライバーは主に利益率改善に依存

3つのシナリオ(筆者試算)

強気シナリオ受注残高が底打ちし国土強靭化予算の執行が本格化 → EPS85円×PER20倍=1,700円水準
中立シナリオ会社計画(EPS77.36円)通りの横ばい成長が続く → EPS77.36円×PER16.5倍=1,277円前後(現値近辺)
弱気シナリオ受注残高の減少が続き官需発注がさらに落ち込む → EPS65円×PER14倍=910円前後
💡 はじめての方への総括:チェックポイントは3つ。①受注残高(725億円まで減った"仕事の在庫"が今後増えるか減るか)、②官需(NEXCO・国交省)の発注動向(予算次第で業績が振れやすい)、③厚い現金487億円の使い道(自社株買い拡大か、成長投資か)。「建設業として稀に見る高収益・高財務健全性企業」であることと「今の株価で買って報われるか」は別の問いである、と覚えておいてください。